3. 四神到来II。

文字数 4,385文字

Re: 代行者。Heigh-Ho の件。*詳細は割愛。概要のみ。

代行者が深淵に現れた。
打ち捨てられて転がっているだけの土工らに触れて回る。
委細に検証吟味をしてゆく。

また彼方より起動コードを受信する。
個々の額にそれを描き記し入力としていた。
すべての土工が再起動を果たす。

そして代行者は、彼らを率いて地の上へと登っていったのだ…。

の内で、
このことに気づいたもの、気にかけていたものは

…。


〈暗転〉


Re: 審判の天使(その後編)。

鉛色の霞が、まるで泥のようにして地表全土を覆っていた。
その帳が全部いっぺんに取り除かれたのだ。
現れてきた大地は鉱物結晶のテクスチャーが遍く広がる。
見渡す限りの広大な高原地帯のそのすべてがだ!。

直線と曲線が入り乱れ、縦横無尽に大地を走りまわっている。
溝に嵌め込まれている貴石が、これらを描いていた。
電気石(トルマリン)による被覆構成。
迷路の如きサーキット。

全体的にはモザイク画を連想させる。
緻密にそして複雑なブロックの組み合わせには、
知的なものと狂的なものとの(せめぎ)ぎ合いが覗いて見えた。

印象的なのがそこにある澄んだブルーの色合いだ。
緻密に延々と敷き詰められた貴石のブロックによるものだ。
清く、清々(すがすが)しく、また悲しみを、なぜかこの色には感じてしまう…。

広大なる台地のそのすべが緑や青のトルマリンで覆われていた。
異世界から取り出したかのようにその物量は圧倒的だ!。
これだけの石材は、どこからも切り出せる訳がない。
現実的に存在しているわけがない…。

所々、よく見ると生々しい赤色が

ような箇所があちこちに確認される。
その赤は、細かく分岐した無数のラインによるものだった。
真紅のジャングルジム…。
それは、まるで繊細さの極地たるの鋼鉄線で造り上げられたかのようだった。

これが多重に累積して集合し、固まって、まばらに点在しているのが分かる。
大地を覗き込めば、なぜなのか透けて見えてしまう…
この構造が地の中の、その奥深きところにまでも存在しているではないか!…。
かなり深い層にまで、それが同じくみっしりと、延々と、展開している…。
この地はまるで、毛細血管の堆積層、その巨大なるもの…。
そのビビッドな色合いが、この地が生命を宿したものであることを暗示していた…。



芸術的なまでに、ここの造形は際立った存在感がある。
一言でいえば、複雑にして怪奇の極みへと昇華されたもの。

歪にしてなるものが…魂からの祈念たるの激情の身を任せ、すべてを明け渡してしたってた。
そして、その極みにおいて、とうとう出現したもの。現実化がかなったもの。
然るべくの戦闘状況を想定して、思う存分に析出がなされ、出来上がっていたもの…。

ヒトには生み出し得ない類の、異界の美たるものがそこにはあった…。




黄緑色の『瑪瑙』の塊のような建造物が北方にあった。
ストゥーパを思わせる塔の貌(カタチ)をしている。
血溜まりを思わせる紅玉が嵌っている。
それらが目玉のように沢山周りに、辺りに付いていた。

これが急速にその色を変化させてゆく!。
その全体のすべてが、クリムゾン・レッドへ、血塗れの塔へと!
目玉がたくさんついていて、皆、急に、

と辺りを見回し始めてた…。


〈暗転〉

「ウラヌス」が大きく螺旋を描きながら上昇してゆき見えなくなった。
遥か上空にてAWACS(早期警戒管制機)としての任に就いたのであろう。

「サリー」は地面スレスレでの周回飛行を延々と続けている。
あくまで威嚇と、そして制圧が目的なのだろう。

杭打ち機のストロークにも似た衝撃音が遠くから近づいてきている。
じきに、高原大地のそのすべてに振動が伝わってくる。徐々に高まってくる。
「タイタン」の来訪である。

爆撃音の如き歩みをもって高原の縁にいたり、そしてピタリと止まった。
此度は余りに巨大な姿としてあった。頭は雲の上にまで届いている。
見晴らしうる空間の限りない領域が、これの体によって占められていた。
圧倒的なまでに巨大にして剛腕たる審判者が、そこに立っていた…。

さて、ウラヌスと入れ替わるようにして上空には「暗黒球」が浮いている。
無限角の、全方向への超回転が自身にて行われている。
一切の挙動なくに見え、静まりかえったままの、その存在は不気味な限りであった…。


〈暗転〉


Re: トランスフォーム

レンの大地そのものに変化が始まっていた。

縦横に走るサーキットが突如、鮮明に光り出した。
このことによって、その地に描かれているラインが極度に際立ち始める。
なんたる複雑怪奇な文様の数々であろうか!…。

電流なのかなんなのかは分からないないが、
なんらかのエネルギーがこの中を、”今”、激しく駆け巡りだしている。
火花のようなものがあちこちで引き起こっている。
まるで血の吹き出すような激しい反応があちらこちらに確認できた。

フォログラフィカルな蛍光文様が表面全体に浮かび上がり、
奔流の如くにして急速に流れている。
何らかのプログラムの作動命令なのではないだろか?…。

そして大地は、その丸ごとをもって、

を開始する…。

のたうつ大地。ねじれ(よじ)れしながら怒涛の如きの屹立を起こしてゆく。
構成物たるトルマリンが、怪しい光芒、燐光を放ちながら、その質と量と形を変化
させてゆく。離れ、崩れ、わかれてして、そして奔流となって逆巻きだってゆく。
新たな形態を獲得すべく、めまぐるしくコンバインされてゆく。

戦闘要塞、パンデモニウムとしての正体を現すべく、
         レンの大地はその姿を完全に変えていった…。


*(すべて六百六十六人の「ネフィリム」の土工をもっての並列化で出来上がっている。)


〈暗転〉


Re: 総攻撃

初手はタイタン。
地上に展開する防壁攻防により即座に一斉射撃を受けていた。
が、なんら意に介する様子はなく、淡々と進撃は進められる。
両肩のシャッターが開き、数千機のオービタルが射出された。
要塞のぐるりに高所に点在して周りを取り巻く。
みなパラボラを装備しており、そのすべてが地上へと向けられていた。
胸のダイアフラムから音波が発せられる。
全オービタルを中継として、超振動が遍く地表に照射される。
これの影響下では、いかなるものであっても動くことが叶わない。
銃爆撃的低周波が延々と地上にてどぐろを撒き続ける。
これは作戦終了まで途切れることはなかった…。



次にサーリーが元素変換の操作を始める。
翼にある無数のレンズより、稲妻の如き放電が大地に向けて始まる。
オービタルごと紫電が地表を貫き舐めてゆく。
これに曝されて、大地は徹底的に分解された。
続いて、ただの「花崗岩」として再構成される。
二段階の操作が行われていたのだ。
それの浸透作用は深度50キロに及んでいた。
舐めるような絨毯放電爆撃が延々と続けられていた…。



時は日暮れ近くになっている。
焦土からは雷撃により大量の蒸気が立ち昇っている。
残照に照り映えながら、無残にして無骨なだけとなった荒野が広がっている。

上空にあった「ラー」が最後の仕上げとして動き出す。

此度の暗黒球は〈サターン〉(土星)を取り込んでいる。

、その根源として。質量は地球の95倍はある。
これを、自身をレンズとして大地に転写する。



まるで綿菓子に熱湯をかけたかの如く、大地は沈んでいった。
丸ごと、日本列島サイズの面積が陥没していゆく。

小休止が置かれる。

サリーが再び舞い戻り、集中的に元素変換のための雷撃が送り込まれる。
そしてまた重力レンズにより更に深くへと沈められる。
この繰り返しによって都度二十四層の分厚い障壁の覆いがかけられた。

そして花崗岩の[檻]は底知れぬ深淵へと落とされて行ったのだ…。


『じきに大水が大地を覆う』
『それがここに完全なる蓋をする』
『審判はこれにて完了とする』。


〈暗転〉





瑪瑙でできたストゥーパはあらぬ彼方、異界にちゃんと存在していた。
複数の次元に同時に存在しているのだから。
全く何のダメージも受けてはいない。

血溜まりの如き赤石が蕩けるような光彩を放っている。
その六百六十六個には希少な、希少な、魂が宿っているのだ。
代行者がこれからも彼らの面倒をちゃんとみるであろう。





今、

に笛の音が、か細く…
(とぐろ)を巻くかのようにして響きわたっている…。



〈了〉


*トランスフォームの直前に大量の人間の命が奪われている。それも…。
 彼らは地下に囚われて久しいものたち。意識の中ではそこは楽園だったんだけど…。
 これによって吹き出した血やらなんやらがパイプを通ってストゥーパへと流れ込んでいた。
 これが真紅の色の理由。要はネフィリムたちにとってのカンフル剤として使われていた。

 長々とややこしい話やバックグラウンドがあるんだけど今は割愛。
 要はアスコキンだけじゃないんだ、恐怖と絶望、そして倒錯した幸福感が
 血というメディアに転写される必要があるんだ。これはまた特別な別のニーズ、
 別の目的において



 ちょっと内容的にハードなので、あの欠番の中で詳細はやります。 かしこ。

 



あとがき:

未だ、8.5部のでき!。めんごー!。生きてる間には仕上げるー!。

あの暗い暗い「ゲートキーパー21」のラストが元のイメージ。これは告白しておこう。
黒のスフィンクスはバビル二世のゴーリキでしたね。ここで明かしておく。
知っとったわいって?


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