3.  オープン・ザ・セサミ

文字数 3,383文字





Re: 来訪せし土工たち。

深宇宙より突如飛来し、全天を覆った土工の群れ ! 。

空が薄暗くなるほどの数であったが、それらも所詮は先発隊でしかなかった。
地に降りてからは即座に務めを果たすべく散ってゆく。
荒き陸の遍くへ、炎燻る山脈群へ、熱水の海中深くへと。

だが多くのものは地下深くへと潜り込んでいったのだ。
二つのエリアを集中的に掘削してゆく。
その奥深きところを目指して。

そこに彼らの陣屋を築く…。
特別な秘所たるもの…。

を開くのだ。

本隊たるものたちを招聘する。
それこそが彼ら先発隊の本当の役目であった…。


〈暗転〉









Re: 夜明け…。

昇り現れてきた太陽はあまりに大きかった。
そしてその明るさは尋常でない。
だが明るさだけで熱の供与はそこにはなかったのだ。
あるべくの輻射熱が存在していない…。

もうこの星には磁極を作り出す力はなくなってる。
エーテルを大気圏にまとう力もない。
それとも太陽の方に、供与すべき活性元素は尽きてしまったのか?。

そのどちらか、いや、それら両方のせいだったのかもしれない…。

宇宙との物質変換、その交流は痩せ細り、今や絶え入りそうなまで。
まったく幽けきものでしかなくなってる。慈悲としてなのだろうか、
恒久的なる日中気温摂氏2℃のみが残るまで。

地上のどこであってもこうなのだ…。
もうかれこれ百年になるか…。
こんな感じになってしまったのは…。

ここは生命の絶えた退役退官せる惑星。

遥か未来の地球である…。


〈暗転〉















Re: 黄昏の惑星。

すでに星としての意義は失われてしまってる。
星間圏への物質供給はもう何もしていない。できないのだ。
そう、息づくものは、もう誰も、何も、いない。

なに一つたりとて…。

だが、不気味なハウリング音だけが、そこら中から漏れ聞こえてくる。
空の彼方此方から…。さらに地中よりも、水の中からも…。
そして…信じられないことに上空遥かの高みよりも…。

まるでこの星全体がこの音響を発しているかのようだ。

「Woommmn…Wooommmnnn…Woooommnnnnn…Wooommmnnn…」
「Wooooomn…Woooooomnnn…Wooooomnnnnn…」
「Wommmnn…Woommmmnnn…Wooommmnnnn…Wooommmnnn…」
「Woommmn…Wooommmnnn…Woooommnnnnn…」
「Woommmn…Wooommmnnn…」

星々は今も回り続けている。自転、公転取り混ぜて。
この運動が終わらぬ限り、エネルギーの尽きぬ限り、
つまりは太陽系自体が破綻することのない限り、
これらの音が止むことはないのだ。

永遠に…。


〈暗転〉






Re: 冥王代末期ごろの地球。

今からなら41億年前ごろの話になる…。
後に「パンゲア」と呼ばれる大陸。その南端。
荒くれて厳ついだけの大地が広がっていた。

気温は未だ高く、日中は最高で 97℃ にまで達してしまう。
また夜であっても 50℃ を切ることはまずない。
当然に未だ生き物の気配は微塵もなかった…。





この地が多くの土工が潜っていった場所の一つ。
おそらくは総数の七割がと言っていい。
それが残した穴の一つに入ってみよう…。





穴はかなり大きい。
直下降で真下へと続く。延々とだ…。





壁面はなにか鋭利なナイフのようなもので削り取られたかのように滑らかだ。
取り除かれた土砂がいったいどうなったのかが謎である。
まるで何処かへと忽然と消え失せたかのようではないか…。





彼等の侵攻は上下マントルを貫き外郭層近くまで至る。
深度は 2,800 ㎞、この辺りだ。
そこまで掘り進んだ時点で侵攻は止んでいた…。





多数が集まってきており、何か集中しての協業に入っていた。
ひと時も休まず、延々と作業は続けられる。
そして百年単位での時が経っていった…。


〈暗転〉







Re: 空間位相転移。

地下には途方もない巨大空間ができあがっていた。

三千世界の広がりにも似た圧倒的なスケールでだ。
そして、上方も同じく、空かと思うほどに高さと広さ深さを備えた空間ではないか。
一瞬、元の地上に戻ったのかと勘違いしてしまう…。

天蓋は未完成なのか、暗黒の世界下に未だそのすべてはあった。

そこは元から、巨大な”(うろ)”を抱える場所だったのかも知れない。
然もなくば、あれだけの土砂を運び出せるわけがないのだ。

先に言っておこう。
 まだ特異なる現象は”一切”ここでは起こっていない。
   それはこれから、すぐに…。


〈暗転〉









岩石を複雑に切り出し巧みに組み合わせて造った巨大な構成都市…。

だが何かが変だ。稜線などまるでデタラメに思える。
あえて、いい加減に復元をしたかのように見える。
結果、朽ち果てた味わいが自然とそこにはあったのだが…。

表層にはライムストーンがやたら多く使われている。
それらはなぜか発光している。
そのお陰でか、なんとはなしに全体の様子は分かるんだが…。

複雑にして巨大なこの造形群、いや都市群は何の為に造られたのだろうか?。
これは遥か未来の都市を、丸ごと、取り敢えずの乱暴にで模倣したものなのさ。
取り敢えずとした理由は、都市としての機能性はまったく考えられていなかったからだ。

構造体としての質量、それらの分散と配置、配列における比率。
各々における高さ広さ深さの対数比。

それをなぞっての完璧な復元だけがなされていた。
あくまで、数値変換された〈何か〉だけが重要だったわけさ。

限りなく正確な値として、局部、細部に至ってまで、復元されていたよ。
ただの土塊、岩石の切り出し、そして即席の有機モルタル(これはどうやって
作ったかは説明したくない)を材料にして。
もう材料なんて、なんだってよかったんだと思う…。

これらは…つまりはだ、模擬体としての都市なのだ。
「だが侮ることなかれ!」
つまりは、遥か未来の巨大都市機構群、それと共振させるための依代。

然るべくの作法に則れば、
実在するオリジナルと、時空を超えて、
位相連続体を形成させることが可能になる…。







Re: コネクティング。

あらかたの造成は済んだのだろう、とある一角の建築物から灯りが煌々と漏れ出てきてる。
だが土工の姿はあたりに一匹も見当たらない。
廃墟の如き巨大都市群を残して、彼等は

消えてしまっている。
おそらくは、新たな任務におもむいていったのだろう…。

その塔のような建物に入ってみる。
入ってすぐが大広間となっていた。中央に巨大な門が設置してある。
その中から強烈な光が照射されている。

それも自力で、何のエネルギー供給もなく。
まるで光り輝く〈魔鏡〉のようではないか!。
その不思議な眩さに、暫し心は完全に奪われていた…。

何かが、今ここで、確かに始まっている…。


〈暗転〉











此方がそうなら、彼方の方はというと、同じような現象が見られていた。
ただし、彼方は瓦礫の中に聳え立つ巨大モノリスとしてであったが。

天空の下、荒涼たる大地に

が立っていることから、
一つ分かることがあった…。

復元されるべきは、都市群が、正常に機能していた時の状態でなければならなかったのだ。
連結がなされるのが、その終末、末路でしかなくとも!。





彼方の門は円形になっていた。
この中より凄まじい光量が照射されている。
みるみる増して巨大になり圧倒的な拡散光となっていった。

前景の空間のすべてを眩い光で染めあげてゆく。
地にあるもの、宙にあるもの、そして見えざるかっての都市群のそのすべてを!。
照らしては貫き、漏れ入り、触れてゆく…。

そこに鼓動だけにて眠る”モノドモら”総てに、

指令コードたるを伝達すべく!。



































「Woommmn…Wooommmnnn…Woooommnnnnn…Wooommmnnn…」



〈続く〉



補足:

*先鋒らは何故

を出発点とせねばならなかったのか?。
 そこが奇跡の”源”たる場所だからさ。主が招いた。

*形はここ最近のネタに似てる…。あるスケールで、定数としてのまとまった数で、
 物理的に飛来することによって初めてリンクは達成される。

*ゲートオープンは、また特別な作法を必要とする。
 まッ、一種の魔術だわな〜…。まだその実際に関してはアイデア結ばれておらず。
 たぶんアラジンが関係してくると思うよ!。

*上空の土工らは目的なく飛んでるだけ。オート、オート。



バイビー。












休もうと思ってたのに、すぐ再開してた。
すっごくしんどくなるのに…。
たぶんこれやるの好きなんだね。





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