12. ニューヨークの五人

文字数 1,935文字




ゴラン高原北部、ニムロッド城跡近くのRoute 989。
ふて腐れて間延びしたかの様なアスファルトを踏んで、
アストンマーティンDB5改が疾走してゆく。
まるで時を惜しむかのようにして。

空は澄みわたり満天の星空であった。
ここいらは三方をイスラエル、レバノンそしてシリアが取り囲んでいる。
領有権は今もって定まっていない。

時刻は深夜0時を少し回ったところ。
あえて人目につきにくい時間を選んだのだが、その必要はなかったかもしれない。
そのポイントがあまりに人里離れて辺鄙な場所だったからだ。
仮にもし現地の人間がその出現に遭遇したならば、さぞかし驚いたことだろう。
時速500を超える高速物体が突如、いきなり、空間から出現したのだから。
強烈な爆音をまとう赤い塊が闇から吐き出されてきたかのようだった。

深紅のビークルはスパルタンな走りでひたすら前進を続ける。
目指すは “Mt.Hermon”!。
たいへんな悪路である…。





車を走らせていると空の様子が急に変わりだした。
夜空はみるみる嵐の気配となっていった。
すぐに雷の閃光が前方遥かに見えはじめ、やがてさんざ降る大雨となっていった。

嵐の到来ではあるが、風は思ったよりは強くはない。
しかし稲妻の方は、その(ほとばし)りが半端でなかった。
巨大な稲妻が、幾重にも幅広くも枝分かれして夜空を切り裂いてゆく。
遅れて、重低音を伴った爆発音が驚くほどに派手派手しく鳴り響いた。
尽きることなく、饗宴の如くにそれらは繰り返されゆく。
目を見開き、歯を食いしばり、肝に居座る恐怖に堪えながら、疾走はなおも続く。

ハンドルを握りしめるエノクには、
 この啓示が祝福なのかそれとも呪いなのか分からなかった……。



〈暗転〉






Re: ニューヨークの五人。

ニューヨークのとある高層ホテルの一室。5人の人間が何やら協議を始める…。

「えらく急な召集じゃったな。何があった?」

「エノクが地上に降りたそうだ。ヒトの身(からだ)としてではあるがな。」

「ならば想定外の話ではあるが、さしたることでもあるまいて」

「否、現在の彼は〈ガイアー〉のハンドラーとなってしまっている。」

「!!!?そんなバカな! ガイアーとの engagement は、アミーユではないか!
 なぜそんなことになっている?!」

「だからこうして集まってもらったのだ。」

「ところで、なぜエリヤがここにおらぬ?」

「知らぬ。なぜだか音信不通だ。呼びかけには一切答えよらん。」



「独断行動で動いている…もしくは動こうとしておるというわけか…。」

「男が動けばまた女も動くということじゃろて。奴らはワシらと違って元はヒトだからな。
 それも兄弟だ。相通ずるところがあってもおかしくないて。」

「エノクの方は、イレギュラーとしても看過できぬ。特にガイアーがだ。
 あれの出撃はディエス・イレの時のみに限定れていたはず。
 もし地上でことを行えばその影響は甚大となる。全ての歯車が狂ってしまうやもしれぬ。」

「放ってはおけぬな。アレらと戦う術を得てしまっているのなら…。
 エノクの方があらゆる戦局において圧倒的に優勢になるのは間違いない。」

「篩(ふるい)が壊されてしまうことになる。」

「排除だ! それに決まっておる。場合によっては消えてもらわねばなるまい。
 不介入の発令は絶対なのだから。」

「しかしそれができるか?」

「なに、奴のみを仕留めればいいだけの話し。
 ガイアーは一時的に動きを封じて、その間に奴を押さえるまで。
それができるのは我らだけだ。」

「現在のやつの所在は?」

「ヘルモンへ向かっているようです。」

「ならば、”ゾフィー”が一番近いな。お前に任せる。」

一人の男が無言で立ち上がり部屋を出て行く。





「デウス・エクス・マキナが二体も戦列を離れることになろうとは…
 これもすべては至上の御方のご意向やもしれぬ。」

「では、我々は我々の使命をただ粛々とまっとうするとしよう。」
「相手は軍神の使い手。相手にとって不足はない。」
「見せてくれよう七大天の力を!」





そしてすべての人間が消える…。



ED : ”Are you going with me” by ANNA MARIA JOPEK & PAT METHENY

https://www.youtube.com/watch?v=5_OJdz1gOwk


〈続〉




あとがき:

そうなのよ。一人多いの!。ホワイトー。

エノク書:稲妻と雷鳴の秘密。
個人的な経験から、エノク書もやはり同じく経験者が記したものと断定する。
よって、聖書に加えて然るべきの内容かと思います。







資料:

オリジナルのアストンマーチンとこれとの合体でもいいかもね。



フレームと六輪はであることは残して、フロン部だけを変更する。

このままでは余りにルパン臭が強すぎる…。




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