2. 本性顕に、いと簡単に。

文字数 1,339文字

Re: 花道における客演&奈落からの情報提供

時刻はもうすぐ0時をまわる。
施設内に動くものは誰一人いなかった。
猫の子、ネズミ一匹たりとて…。

柏手キャンパスは千葉県の北西部にある。
丁度、利根川と江戸川の中間あたり。
ここは郊外型国際学園都市の構想のもと造成されたが未だ日は浅い。
近隣に緑地帯が多いのは良いことだが、やはり僻地の感は否めない。
道の照明灯がえらく少ないことがこのことを証ししている。
だから、夜の闇は、大変暗く、やたら濃く、そして重い…。

教授の後ろ手に引戸は閉められた。
重厚な重みのせいでか「 バシャン!」とその音が廊下に大きく木霊した。
これを合図かのように空間は世界から完全に切り離された…。

廊下は外の闇と比較すればあまりに明るい。
通路の天井にはLEDがみっしりと埋められている。
面状に冷めた白昼光が頭上より強烈に照射されている。

片側の壁面には外の闇が嵌め込まれた窓が横一列で並ぶ。
そして床は漆黒のリノリュームで継ぎ目なく続く。
途方もなく延々と、彼方、奥まで伸びきり、何故か果てが見えない。

超高輝度の光の照射の下、暗黒の花道が形成されていた!。
そこをたった数歩歩き出せば、もう内荒教授はもう別存在。
なんの躊躇も見せずして本性を曝け出していた…。

腰部から下に、複数の野太い触腕が「ドサリ」と落ちてきた/いた。
[無闇/矢鱈/滅法]に[蠢き〜のたうち〜蠕動]している…。
動きは滑らかにして逞しい。また厭らしくも、そして…淫らであった。

「シュルン・シュル・シュル・シュル」(早回しx1)

さんざめく冷光の洪水の中を、悪夢の如き存在が、体を前後させながら…。

「ニュラルラ・ニュルリ・ニュルリン」(早回しx2)

艶めかしくも「ぬらぬら」と照り映え、疾走してゆく…。

「ねちゃり・ねちゃ・ねちゃ・ねちゃり」(早回しx3)

おぞましい以外、何の言葉も有り得ない…。

目を伏せながらも様子を伺うと、
それはネクタイを緩め、右腕を捻ってゆっくりと上方に伸ばした。
片や、左腕は左方斜め下に同じく。
両手の手のひらは反るように伸ばされ、刻みを入れつつゆっくりと
旋回させられてゆく。手と腕の両方が同時にである。

何らかの状況把握の…情報受信の手段に違いあるまい。


 「なる、なる…」
 「こりゃ緊急事態だねッ…」
 「コンタクトはさせれませんな~…」。




無限に続く廊下の果てには消失点があるのみ。



そこに向けて疾走は劇的に加速されていった。



そして奥の暗がりに飲み込まれて彼の姿は見えなくなった…。


    『パッリ---ン!!!』




不意に空間のすべてが砕け散り、これが溶暗の表しとなっていた…。


〈続く〉










補足:

地図でロケーションを確認してみました。
まず脱走したネフィリムは東京に居て、エノクを探して東へと移動中。
またエノクは成田よりバイクに乗って東京に西へと向かっています。
なので、両者は京成成田空港線のどこかで遭遇することになるのでしょう。

そして、インターセプターたる教授のスタートポイントは柏ICの近く。
なので、国道16号線を南下するのが妥当でしょう。
でも彼の存在は物理法則には従いません。

舞台は小室や鎌ヶ谷や東松戸ではないかもしれません。

前回の予告しました、銀幕の中のパトカーによる追跡はありません。
嘘つきました。メンゴw。



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