0. 三女神

文字数 1,650文字





夢をみた。

白昼夢だ。

それはほんの一瞬、たった数秒の、束の間のできごとでしかなかったはず…


丁度プレリュードで一人ドライブをしていた時のことだ。

場所はビッドウエル・パークの中だった。(広大な敷地面積の自然公園)

Madonna の新作のカセットをご多分にも漏れずにボクも買って持っていた。

これをデッキに放り込み曲を大音量で流して聞いていた。

その中の一曲「 Papa Don't Preach」。

これが発射台となってしまった。


この曲はストリングスによるイントロのあと間髪入れずメロディーパートが始まる。

あとはえぐい響きのシンセ・ベースがモッサりしたテンポでリズムをただただ刻んでいく。

隙間だらけのサウンド空間を Madonna の歌が埋める…。

作用したのはこの本体部ではなく、始まりのイントロ(間奏部)。

上昇下降を繰り返すストリングによる流麗にして気品ある旋律は、
 やがて空に放たれるようにしてボーカルパートへと受け渡される。

ここの変化とボクの感覚は完全なる同期化を果たしてしまってた。

その証拠に、感覚は如実なる反応を

引き起こしてしまっていたのだから。

この時節、ボクは一切のリミッターが外されたにも似た状態だったので、
 各センターの振動数、そして相互の連結関与はフルパワーの寄与となっていたはず。

リフの昇り降りがそのままに、ある種の完全なる魅了と同時に、緊張を、
 そして驚き、いや恐怖を引き起こしていた。

音に、あまりに過剰に、深く、影響されてしまっていると

からだ。

昂揚感が、その旋律の上下の移行にともなって急速に高まっていく。

そして上昇としては最後となる最高度へと向かう


 ボクの意識は ” 飛んで ”しまった。

否、「意識」に、何か未知の情動中枢との連結が原因の元で、
  終ぞ体験したことがない未知にして正体不明の情報群が
   イキナリ意識内に、それも大量に流れ込んできてしまい、
    その処理でキャパオーバーとなっていた、と言うべきかも知れない(w)。 
     (高次感情センターを介して上と接続してた)


それらの解釈は通常の言語での翻訳がかなわないがゆえに

夢のような内容となっていた…。


おかしな〈ビジョン〉をみた…



〈暗転〉


そこは暗い地下牢。

冷たく湿った空間。

両手を壁に鎖につながれた男が項垂れて膝をつていいる。

見るに忍びないほど絶望の虜になっているのがわかる。

生きるにおける希望も覇気も気概も遠に消え失せていた。

もう誰かのお情けにすがってしか生きる道はない…


〈暗転〉


いつの間にか彼の様子が変わっている。

見違えるほどにその存在は違っていた。

一瞬にして彼は宇宙空間へと飛ぶ。

そしてその高みから地球を見下ろしていた。

やがて地球の三方より光の帯が急速に昇ってきて彼の元に合流する。

三人の女神たち。

彼は『Fatal Sisters』と呼んでいた。

思慕と信頼の思いがそのコミューンの中で急激に堰を増して膨れ上がっていく。

再びの邂逅による喜び、そしてこれから起こることへの戸惑いが彼のうちにあった。

彼女らは元来は彼につき従う存在であるらしい。

しかし彼女たちはこれまで、
 この世界(地球)の守護、維持、鎮護に与ってきたもの、
  その任を担い、全うしてきた存在ではないか!。

それがこうして、その本来の姿へと還り、
 彼の元に集うということは、
  その役目が

ことを意味する…。

この世を終わらせるべくの展開がこれから始まるのだ…。

その号令を発する権限

のものだった…。



〈了〉





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