8.  ギャザリング。

文字数 6,736文字



翼竜が漆黒の空を飛んでゆく。両翼を真一文字に広げて。
マッハ8。ありえないスピードだ。
耳を擘く爆音が、それの到来を告げるかのようにして尾を引いてゆく…。



大きく弧を描き、抉るようにして旋回。そして島の東側へと回り込む。
接近は海からと決められていた。
侵入角は鋭角にとられ東京湾へと滑るように降下する。
海面ギリギリの高さで島の岸までの直進コースへと入っていた。

” 疾風迅雷 ”の構えである。

ここまでは開始から一呼吸の出来事でしかない。
此度における作戦の成否は、敵の意表を突くこと、
敵の懐深くに急襲をもって踏み込めるかどうかだけに掛かっている。

要は檻の中にカナリアがいるかいないかだけが問題だったのだ…。



揚陸を目前にして新たな命令を発する。時間牢の囲みを局所的に解除させる。
彼の周囲5メーターを範囲として。そのための目印、ビーコンはエノクの太陽神経叢。
これより例外区域が発生する。

『今より一時間を限度として檻は保持される。
 そしてガイアー、お前は即刻、虚数空間へと退却せよ!』

メタルの翼竜は波頭をぶち抜き、
いやさかに速度を増しながら、岸へと向かって飛んでいった…。

〈暗転〉


急に室内の照度が上がったように感じられた。同時にボワンとした大気の揺れが…。
突如、気圧が変化したように思えた。そして、すぐに代行者は異常の到来を察知した。

何かが今この島には起きている。それも全く思いも寄らないことがだ!。
そう思った瞬間、不意に何やら光の点が一つ、ふわっと飛んで、消えたような気がした…。
操作盤の上に現れて、羽虫のようにして飛んでった。

 「何じゃ?今のは…。」

その不思議な光を見極める間も無く、同じものが湧くかのように部屋のあちこちに
現れてきた。見渡せば部屋中のどこも、かしこも、みなおんなじだ。見る間にどんどん
増えてゆくッ!。計器類の上にポーッと浮かんで現れ、漂い、ふらつき、そして、
いつの間にやら消えている。次々に、部屋の到る所で、これが発生しているではないか!。

やがて、すべての輪郭が朧になりだす。そしてこのコントロール・ルーム内のすべてが、
濡れて鈍く輝くような様相になってきた。光の雲霞に触れて、触れられて。背後に沈んで、
入れ替わりに何かが浮かんできてる…。

そして…『ズン』とくる地響きが地下に届いてきた。
重く刺すような、強烈な一撃だった。
まるで”それ”の到来を宣うたが如くに…。

代行者は即座に状況把握をすべく集中する。目を閉じ”中央”へとアクセス。
正体不明の巨大な人形がこの島に現在いるではないか…。
巨人が不可解な電子音を放ちながら島の東部、この地下施設の真上に立っている!。
こいつが元凶となってか、何某かの作用が今、この地に及んでる。
今、この場所は途轍もない攻撃に曝されているのだ。

 「こいつは一体何者なんだい?」
 「規格外の凄みがあるな…」
 「何?………」
 「まあ~なんとも…

のお出ましじゃないかーーー!!!」(絶叫)

急速に進行する〈空〉の露呈は、その場にいるすべての意識体に影響を及ぼし出していた。
代行者の頭も朦朧としてきており既に考えることはまともにできない。
これは以前、だいぶ昔に…いや大昔に、経験したことがあるぞー…。
すぐさま覚醒真言が頭蓋の中で回り出す。

 「クドゥルフ~(uuumn)・ツガー・ツガー・フグダン・クトゥルフ(uuumn)~」

これによって彼の意識は賦活される。

 「そんな”チート”が許されるなら、こちとらも”暗黙の協定”など糞食らえだ!」

辛うじて正気を取り戻した代行者は、まともに動けないまでも、呪詛信を唱えていた。
緊急召喚である。

の!。

突如、相模トラフの西端、深度2,300m の海底に異変が起こる。
東京湾の湾口、浦賀水道の少し沖合。暗き海底が急に泡立ち始める。
何か巨大なものが実体化をはじめていた。

そのポイントから吾妻島までは、ほんの目と鼻の先である…。



〈暗転〉


ガイアーの足元に暗黒の平面膜が広がってゆく。撤退が開始されていたのだ。
そこに沈み、消え去るのかと思われたがことは急に停止される。
巨人は再び元の立位へと戻っていた。

これを岸に向かう途上、確認したエノクは:

 『そうか…〈何か〉が来るのだな…
  では、そいつの相手はお前に任した』。

夜間にあっても島全体は、なにか光に濡れそぼったような様相であった。
けったいな表現だがこうとしか表現のしようがない。

島の北東岸中央部より鷹は侵入する。隣接する整備区画で一度バウンドして高みへ跳ねた。
そして降下の最中に着地点を見極めた。森を等分に分けて蛇行して走る小道路。
その右翼。その箇所の真下が中枢であると知る。小ぶりだがやけに手の込んだ地下施設が
ある。モニターは精査の極みとしての情報を上げてくれていた。





風も闇も音も存在しない異化領域。時間凍結の森の中。
突入と同時にエノクはその所在を完全に消した。
凍結解除までの残り時間は57分。
後には警戒モードに入ったガイアーが立ち尽くすのみ。

 『ビーン・ビーン・ビーン…』


〈暗転〉




Re: ドブ板通り商店街。

午前2時を過ぎても、やってる飲み屋はあるってもんだッ!w。なんてったってここは
軍港からは目と鼻の先、由緒正しき飲屋街。鄙びた、草臥れた、いつからここはやってんの?
のぼろい飲み屋が「た~くさん」(岡井ちゃん)。

家には帰りたくない野郎どもにっては格好の隠れ家となる。朝四時半までは絶賛開店営業中
ヨロピクネ。明日は非番の若き海兵さん、もしくは眠れぬ夜に暇を持て余したご年配さんたち
がうろちょろしてるってわけさ。この横須賀に骨を埋めれることを決意せざる得なかった
デラシネさんたちが…。
 「母チャン鍵カケテ寝テシマッテマ~ス」「スー・シタイガっ、コレ夢デース」。
 「トニカク昔話ヲ、誰カトシタイデース」「ソシタラバ、ギブユーチョコレートデース。」
まっ、どうでもいい話なんだけどねー。

スナック”Jail Bait” を出てきたばかりの男がいた。退役軍人アンディ・カーティス、63歳。
かって若き日の彼は、ここ横須賀で大和撫子を見染めてちゃって、結ばれちゃって、
そんで逃げられなくなっちゃった~ってヤンキーさん。そんためにさ~、キャリアは諦め
なきゃならなくなっちゃったし、本国には帰れなくなっちゃった~って境遇の人。w。
その嫁さんってのに収まっちゃった~って娘は見かけによらず、おっとろしく強情な玉
だったようで、「この地元は死んでも離れない。他では絶対生活できないィィー。」
「じゃないと私、あんたをスーします」って、 ♫泣いて脅して喧嘩して~、
どっこい(二人睦まじく)生きてる、”スカ”のな~か~♫。
……そんな歌はどうでもいい!。

話を戻そう…、アンディーは、ちゃんと知っていた。そのスナックにはいい歳のマッチョ
なレディーしかいないのは。サービサー嬢(婆)たちが、口が恐ろしく辛辣で、かつその
飲みっぷりが皆良すぎることも…。全部膝下の樽に吐き戻しているんだろが…。
そなことは、はなから全部、承知の上でこの店にはやって来てた!。

やはり相手が皆、歳近いせいかフランクに話しができる。これって、歳食ってくると、
ホントありがたいこと思えるようになっちゃうんだって。もう見かけの若さ美しさとか
なんかとは引き換えにできないもんになっちゃうのだわさ~。その代わりと言っては
なんなんだが、いらぬ酒まで、飲んでもいない酒までが請求されてしまうんだが…。
こんな話はどうでもいい!。



今、彼の目の前を通り過ぎていったもの…。
彼の心臓はいきなり鷲掴みにされてしまってた。
薄暗い街灯の下を疾走してった、あの大きな動物を目撃してだ。

犬?…いや違う。「あれは狼だ!」。『 Noーkiddi~ng ! 』
彼は、以前、遠い故郷のアイダホで、この野生の動物を見かけたことがある。
だから見間違えるはずはないのだ…。そんな話は…これはどうでもよくない!。

足音を一切立てず、ゴーストようにして闇を縫っていったもの。
そこそこの体格、厚み、重量感があったにも関わらず、
それには現実感がなさ過ぎた。まるで3Dホロの映像の如く…。
彼が急ぎその影を目で追った時には、もうなんの形跡も認められなかった…。



 アンディ・カーティス
 通称 Sergt. クマ~(63)

〈暗転〉



Re: 確かに彼らにはできなかったであろう。しかし我らにはできる。
  それもガイアーの解析が最初にされておればこそ…。

昔話をしておこう…。

最初に、七神体、各個の備えるテクノロジー、その秘密の総体、そのすべての解析が
なされた。全能者によって。ただ興味だけで。これは当然な話である…。

背景としての本来のテーマがなんだったのか。
潜んでいる開発の経緯/由来さえも詳細に調べられた。
そして全能者は、その本当の目的においての欠如を補い、不足を埋めた…。

その結果、あれらの遺産は神能科学の領域に達するまでに完成された。
仮想空間からの物質的現実世界への干渉が可能になったのだ。
仮想領域で製造されたものを現実世界にも同じく存在させることさえも…。
これもガイアーの解析が完璧にされたればこそ。

だが、すべては禁断の技とされて封印された。
だた天使長クラスのものものだけには使用が許された。

ぶっちゃけ極論から言えば、旧宇宙の遺産などというものは、現宇宙の、今を生きる
有機生命体にとっては余計なものでしかない。すべては白紙から、やり直されるべき
なのだから。

しかし創始者は旧宇宙の最後の住人たちの意向をも感じ取っていた。そしてそれ汲んだのだ。
彼らのその思い、その意思、その祈りを活かすべしとした。あの七体を彼自身のシナリオに
組み込むことにした。

イレギュラーであったればこそ、イレギュラーと結び付けられる。それのみが彼を救う。
そして彼は全てを背負って、これを贖い、そしてやがてに天へと帰還する…。

  絶望は深く重く救い難く
  そして理想は焦がれてより高みへと
  悲劇こそが(げき)たるを呼ばせるもの
  逸脱こそが道なき所に道を開く
  振り子の、大いなる振れ幅
  力の源

  これぞ、すなわち、 ” スゥイング・バイ ” … 。

〈暗転〉


Re: Astral holographic coherence
 『泡沫なるが故に、むしろ強固に自在に現し身足り得るの原理』




時は、ほんの”少~し”だけ遡る…。

Virtual Labo にて、イリヤは自身の憑依体たるものを完成させていた。
エノクにとっての盾であり矛ともなり得るもの。そして何よりも細やかなサポートが
叶う自身の機動ユニットとしてのものを。構想の肝とされていたものは…。
在/非在を、物質/ホロの境界を自在に行き来できる性質のもの。簡単に言えば変幻自在が
特徴であること。なんとこれに答える技術データは、ガイアーと紐付きのファイルに
あったのだ!。なんたる偶然!!。そしてまた必然!!!。
イリヤは一気呵成にプログラムを書き上げた。
彼女の願うすべての要件が、漏れ無く、過不足なく、すべてが叶っていた…。

だが最初に、この子宮(Virtual Labo)より、地上へと、物理的に送り込む必要があった。
これだけは絶対に必要とされる手順手続き、つまりは儀式だったのだ。この行為が現実性
との橋渡しをしてくれることとなる。

エノクが追走を発した時点でイリヤは即刻実行を決めてた。今がその時であると。
カプセルがメタトロンより緊急発射されていた…。




〈暗転〉


Re: もう一つの、別の追走劇。

地表への着陸はかなり乱暴なものだった。だが、当たり前として、こちとらにとっては
痛くも痒くもない。機は乗り捨て。後顧の憂いを断つべくの対処は万全。なので実をとって
花は捨てる。当然の話だ。いやむしろ卵を派手に割ることの方が本当には必要なことだった
のだろう。

カプセルより這い出てきたのは狼だった。現界化したホロはこの野生動物の形態を纏うこと
を最初に選んだ。必要性からの選択だったまで。そして、すぐさま脱兎の如くして、東へ、
吾妻島を目指して疾走を開始する。暗き影そのままに、ゴーストのようにして、山裾を駆け
抜けて行った…。



桜山の裾野を三秒で駆け下りた。次いで上空よりサーチした送電経路の異常に沿って走って
みる。オゾン臭が経路に色濃く残されている。特に送電塔だ。臭気とはまた別の尋常ならざる
オーラが色濃く残留している。それも大量にだ…。まるで命をまき散らかしながら、ぶち撒け
ながら、移動して行ったかのよう…。

手負いだったのか?。必死で逃げていた?、それとも追っていたのか?…。
そのどちらかだ。

兎も角にも、それは並の存在ではあり得なかった。オーラは霊性をまとっていた。
それも天界の上位クラスのものを。ある可能性が彼女の心を過ぎる。
あの見捨てられた魂たち。まさか…そんな…。


〈暗転〉

まばらに人家が現れはじめる。夜間とはいえ繁華なエリアにでも入れば人の目に止まる
ことは避けられまい。夜目には大きな犬としか今の自分は見えないはず。ただ注意だけは
怠らない。風音も足音も立てず、夜の闇に完璧に同化する。まるで影そのものかのように。
そうして疾走は続いていった。

経路はアメリカ海軍の敷地を貫いて来ている。どうしようかと思い悩んだが、結局そのままに
東へと真っ直ぐに向かった。島への最短ルートではもはやない。少し遠回りになってしまう。

だがどうしても気になることが別にもあったのだ。東京湾の河口を遡って、こちらへと向かっ
てくる正体不明の存在があった。海底を猛スピードで突き進んできている。それも数体…。
だがそれらは機械仕掛けでは決してない。何か巨大な生物のようなものなのだ…。
向け先はもしかしたら同じなのかも知れない。ならば、このまま行けばガイアーと
鉢合わせになる。現物の目視が叶うことが切に求められた。


京浜線の敷設内へと侵入。そのまま道床を行く。汐入を越えたあたりで離脱し林の中へと
入った。諏訪大神社を通り越し、最後にはどぶ板通りを走り抜ける。通りの終わりに左折。
目の前には米海軍横須賀基地内へと入る為の通用門。幅広六車線の道路を闇に紛れ、照光を
透過させつつ突入。ゲートの縦縞のスリットに向かってそのまま突っ込んでゆく。
まるで分割されたかのように、そのまま通り抜けたかのようにして内へと渡っていった。
飛び越す必要などまったくなかったのだ…。

〈続く〉





おまけ:

サージェント・くまーがカラオケ歌っているのを霊聴いたしました。
曲は沢田研二です。こんな歌詞でした。


  愚かな女は 時には可愛い〜
  愚かな男は ただ愚かだ〜ね〜
  夜のベッドの片隅にー
  背中を向けた おじいとおばあ

  これで愛なら〜結婚するじゃなかったーあー
  まるで淋しさにKissしたみたいだー
  ロンリーロンリーロンリーウルフ〜
  夜中にふと目覚めてタバコを吸えばー
  男の影はロンリーウルフ

  夢みる女は(若い時は)いつもきれいだー
  夢みた男は なぜ着た切り雀〜
  いつか言い出すーさよならを(離婚の話を〜)
  隠して眠る 正味、おじさんとおばさん
  これが夢なら 見るんじゃなかったー
  まるで幸せと 取り違えたみたいだー
  ロンリーロンリーロンリー(aged)ウルフ~

  もっと愛想よく にこやかに笑ってみせろよー
  出会った時の お前のようにー
  ロンリーロンリーロンリーウルフ~
  夜中に〜もようして厠に向かえば〜
  男の影は  老いぼれロンリーウルフーーーーー。


いや〜彼はヤンキーなのに日本語がうまいです。
しかし少しオリジナルを彼なりに変更を加えてますね。
せっかくですから元歌もご案内しておきます。

https://www.youtube.com/watch?v=u3drwRl0FFc






あとがき:

まあ、あれだわ、どれもこれもメタクソだわな~……。
黒豹にしなかっただけでも…。
そうなるとだ上空遥かにいるメタトロンってのがあれなんだわな~…。
36対の翼って、片方36枚の羽根のことだったのか~…。
あれって、哨戒機だけど、そのサイズは桁外れにデカいんだよな~。
地球に降ろす訳にはいかん程に。

ますます秋田が怖くなるわ…やっぱ…。

私は構想っというものが持てません。
(だから思慮配慮もできません、しません。)
考えると何も出てきません。
信じられないぐらいすっからかんです。
書くと初めてなんか出てくるまで。
だから本人も何が何やら先行きが全く分からない。

いい加減もいい加減。
バランスも筋も何もあったもんじゃない。
完全終了してから、気力があれば、やり直します。
そん時にこそ高学年向けに変えます。
小学生のですが。

しかし全然進まんねー。

メンゴ。

謝~!。

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