10. 重力球

文字数 10,420文字

あくまでもイメ〜ジ


   [サリム]

   [イワン]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Re: 暗き荒野に男が一人。

黒のスーツに黒のネクタイ(ポイントに髑髏の白いマーク)。
髪型は、ゆたかな髪を左右バックへ掻き揚げて流している。
もみあげからは短く刈り込まれた厚い髭が(あご)へと続く。
その意思的な角張った顎と相まって、彼に精悍な印象を与えていた。
さらにアクセントとなるのがピンと跳ね上がった細くかたいコールマン(ひげ)
これが、彼が非情にして冷酷なること、そして一筋縄ではいかない性格の持ち主で
あることを代弁している。右目のみが黒の眼帯で覆われている。
その下には黄金の瞳が隠されていた。眼帯は自身の魔眼封じの為のもの。
その魔眼の効力たるや凄まじく、一度その視線を受け止めれば四肢の自由は失われ、
彼の言うがままと化す。これは誰彼の如何(いかん)

してなのである…。

死の天使、[サリム]。死を司る神の意志の執行官。
人の魂の監視者であり、かつ神に背く天使あれば審判者として臨むのも彼の役目であった。

その役割上、人の世に紛れ込む必要があった。肉体は、この世での生を終えた
クリスチャンのものをもらい受ける。洗礼を受けた人間でありさえすれば
これが可能であった。同化において姿形、人相はまったく別人のものとなる。
その天使の特質/気質/本質が自然と反映されるからである。
地上における天使の存在は彼だけに止まらない…。


『ターゲット!』


声に応えて眼前に巨石が出現する。彼の体内に気が見る間に充満していく。
そして大きな(大げさな)アクションで腕を振るい、烈破の気合いが放たれた。
巨石の表面には突如無数の孔が深く穿たれる。不思議なのは何ら音が響くことが
なかったことである。蜂の巣となった岩を男はまずまずといった表情でこれを見つめていた。
天使化モードであれば、すべては即時即応で果たされる。
全ては自ずと最適化され、0 時間とも言える刹那のうちに果たされてしまう。
これが『超越』である。『魔法』と言った方がしっくりくるのかもしれない…。

動作は一切不要のはずなのだが?…。
すべてはあくまで”イメージされし”の反映なのだ。
このイメージを引き出すためだけに彼の動作は必要とされていたまで。

しかし、天使といえども物質界で受肉をしてしまったのならまた話は違ってくる。
あらゆる物理法則の影響を受けることは避けられない。
未だ人間と比べれば、反射神経、筋力、感性は圧倒的、
桁外れに優れているとは言え…。
物質界における制約は基本、人間と何ら変わらない。

受肉を果たした当初、
新たな法則下で肉体を操ることにはなんとも言えない不便さがあった。
だが、これはこれで、面白いとやがて感じるようになった。
肉体なるものを意によって機能させることに新鮮な感覚味があった。
天使である彼にとっては未知なる感覚領域との遭遇であった。

特に『抵抗』『力点』『支点』『作用点』なるものの手応えだ。
これらは祟りもすれば、驚くほどの役立ちもする。
肉体を操り、これらを活かすことには驚くほどの充実感を覚えてしまう。
なぜか…痺れるほどの野蛮なる快感がそこにはあったのだから…。

彼がこの空間にあるのは

ことがあったからだ。

そうだ、アイデアは

生まれていた…



〈暗転〉


Re: 回想録、山中の川にてのルアーフィッシング。

サリムは苛ついていた。職場の同僚に誘われて釣りにやってきていたのだ(w)。

『何故ワシが釣り糸垂れて、のんびり過ごさんとあかんのだー』(怒)
『プレゼンス(御前天使)のこのワシが、何で…』(ブツクサ)
『こんなところを部下のイワンに見られてでもしてみろ、いい笑い草だーーー!』

イワンはサリムを敬愛し心からの忠義を捧げてくれいている天使の一人だった。
パワーズとしてずば抜けて有能であり頼りにできる存在だった。
しかし…人間化を果たした彼は何故かハゲていた。
サリムにはこのことがどうしても許せなかった…。
いや対面すれば否が応でも彼の頭には目がいってしまう…。
このことがどうにもこうにも癪にさわってしょうがなかっただけなのだ・が!。

毎度、毎度、気が散ってしょうがないでわないかーーー…

おのれ〜ッ、天使の分際でーーー!』(怒気荒め)

*これらは心の奥底で思うだけに留められていた。


閑話休題、キャスティング(

による遠投)である。

これの際の要諦となるのが竿先から重りまでののタラシの長さである。
長ければ長いほどいいとはならない。竿の長さとと同じであることがベストとして
定まってしまう。力点は、リール(糸巻)につながる糸の押さえ(支点1)、
竿先(支点2)そして力点である竿の尾の部分。

重りを遠心力と利用し、竿の反発力とし溜め込み、最後には一閃の振りにて力を
一点に向けて解放する。竿を振るスピードが速ければ速いほど、竿からの反発力は
強いものとなる。ポイントの一つは間違いなく振子運動の利用である。
最後の運動は支点1を軸として、竿の尾の引き戻し、すべての力を一体化して
前方に解放することにある。当然にすべての運動を支える足腰のこれも作用点と
よくわきまえた補助が必要となってくる。
また、手元に握りで止めている糸を離すタイミングだ。
竿を振って、竿のしなりと遠心力が糸を通しておもりが一番しっかりと感じられる
その瞬間に、糸の押さえが解除されれば飛距離は最大となる。

サリムにとっては初めての体験であったが、このスポーツに魅せられてしまってた。
竿と糸そして重り。この三者を肉体の運動をもって操ることに底知れない喜びを
感じてしまったのだ。それは、彼が飛礫なる念能力の使い手であったこととも
関係があるのかもしれない。

狙ったポイントに重りが飛ぶように構成要素を最適化する。
この動作においての試行錯誤を
脳内で繰り返しモデル化を行なった。
そしてその全てを取り込んだでいた…。

見事にルアーは見定めたポイントに沈んでいた…。*超難所。
もう竿も重りもいらない。
これからは川釣りに誘われても、もう行くことはないであろう。


これを利用すれば、面白いことができる。


〈暗転〉





Re: 元の空間、荒れ野…

現在、巷では何やら次元シフトらしきことが起こっているのは確かだ。
あり得るわけのない者共/ことがそこら中で走り廻り/起こっている始末ではないか。
世界を構成/維持する原質(プラクリティ)が特段と奇異なるものへと変わり果てて
しまっている。まるで絶対の敷居(閾)がなくってしまったかのように…。

『まあ良い。すべては我らの主の御心においてなのだろうから。』

サリムは要観察までとし、怪訝に思うにとどめた。人類の営為の結果であるとの
連絡を受け取っていたからだった。だが、この世界環境の変化は、彼にとっても
影響がないとは言えなかった。イメージすればその全てがやがてには現実化して
いたのだから。それはマジックなどとはとても呼べないものだ。
あくまで

を、
人間の理をもっての

の話となっていたからだった…。

『ターゲット、地を這うもの、跳躍するもの、飛行するもの』

空間が変転し、おびただしい数の[(もど)き]が彼を取り囲む様子となる。
恐るべき速度で蠢き、今まさに彼に襲いかからんとばかりの陣形である。
脱兎とばかりにサリムは合間を縫って失踪した。
地にあるもの空にあるものらもこれを合図に彼に襲いかかる。
サリムは出鱈目な軌跡を描きながら両の腕を広げ、指先の全てに対象の操作を預ける。
イメージされていたのは鉄球であった。
襲いかかる影等に向けて彼は

おいたり消したりをする。
また同時に複雑な軌道を、最後に最大限の効果が結ばれるようイメージした…。

『インパクト』

あらゆる方角から、見えざる鉄球がアプローチを行い対象を粉砕していく。
十の鉄球は遠心/直進の動きを取り混ぜて、轟音をひき連れ猛烈な勢いで突進していた。
空間のあらゆるポイントに、サリムは不可知の支点を置くことができた。
これを活かせれば軌道は急速な

、衝撃力の倍増が叶うこととなる。
よって、相手にとって避けようがなく、また逃げ場は空にも地にもどこにもないようになる。
更には、支点は一つに止まらず、イメージのままに、無限に置くことができたのだ。
その組み合わせが不自然なる軌道の原因であった。
その更には、鉄球の数は、十の十乗倍に増やすことさえも可能であった。
全ては”空”が新たに肉の身として取り込んだ内部モデルに準じ、
あとは彼の天使として備えるイメージ力と演算能力がすべて面倒を見てくれる。

襲いくる、軌道も挙動もまったく読めない鉄球の猛攻に会い、
現出していた[(もど)き]は、瞬く間に壊滅させられることとなった。
最後に残しておいた一体には時間差で送り出した十の運動が、
最後には同着で衝撃を与えるよう工夫もしてみた。
それはものの見事に、その擬態をバラバラにする。
四肢は吹っ飛び、ひき千切られ、惨たらしく絶命させられていた。

『リセット』

惨たらしい残骸、戦闘の跡はものの見事に拭われて、元のままの荒地と化す。
試みは満足に終わった。

本体ならば、ここでイワンの太鼓持ちがあってもおかしくはないのだが…。
だがこれはもう叶わない。イワンは、つい最近昇天してしまったのだから。
見張りとしての天使に仇なす

との戦闘において
彼は負けて滅ぼされてしまった。
これはサリムにとって少なからずショックを与えた出来事だった。

イワンと重ねた以前の会話が、なぜか途切れ途切れに思い起こされていた。

その時のことが、

…。


〈暗転〉


「至高の御方と我々天使との違いはどこにあるのでございましょうか?」


『センターの数はもとより、わしが察するに外宇宙との関係に根源としての秘密があると
 みておる。ならば、もう我らの理解の叶う話では到底なくなる。
 至聖絶対としか言いようがない』


「至高の御方は何故ヒトなる存在を作ったのでございましょうか?」


『ご自身の写し身として考えられたのは間違いのない話であろう。なんと、あれらには
 ご自身の分霊までお与えになられたのだから。我らの反対を押し切ってまでして、
 あの者らは創られた…』


ヒトの原罪とは

のでございましょう?」


『客体を〔自己とは切り離された/全く関係のないもの〕として対象化することが
 できるようになった。そしてそれに続く観念(言葉)把握。これが事の本質だ…。

 知恵の実を食べたことにより『相対的』な視点において、(モノ/事を)、
 価値づけ/評価/認識する能力が現れた。困ったことに準備ができていない、
 この宇宙の全体性への理解のない、未成熟な段階でだ…。

だが、このことが【重罪】とされた真の理由は、神がヒトを

留め置くよう伝えてあった[禁止事項]をヒト自らが違反したことにある。十全なる愛に包まれていてこそ、これまで生きてこれていたのに、その環境条件を自ら破壊してしまった。

ヒトの、知恵の実による成果をみれば、このことによって何が失われたかがよく分かる……。

その最初の認識は、【自分は罪を犯した…悪を入れてしまった(完了形)】であった
ではないか!。

同時に奴らは、「自身が裸であること」更に「無垢でなくなってしまった」が生まれて初めて
自覚されてしまっていた。今の自分達が、恥ずかしくて堪らないものとして意識され、感情が掻き立てられていた。これが、彼らにとっては自然な、そして

直感認識となった。
*以降は幼児期にのみ、その様式は残留/残滓として仄かに確認されるまで…。

これまであった○との一体感は失われ、入れ替わるようにして、
別なる現実が既に現れてしまっていた。

『違反を犯す】を契機としてヒトの中に【悪】が入ってしまった。

 神、あらば、即ち、また悪魔も、あらんだ。

つまりは神の(かいな)よりこぼれ落ちてしまったのだ。

このことにより、結果、ヒトは『絶対的な善』がなんであったか、
その状態がいかなる形であるかが、なぜか、もう分からなくなってしまった。

それと入れ替えで、新たに獲得されたのが〈対象化〉の力だ。

「主体」(I)が、対象たるもの(O)を、言語〈観念〉を[仲立ち]として、
[考える/評価する/値をつける]が常態となってしまった。当たり前のこととして。

別の表現をするならばマインドの、心の、エゴの発生だ…。
*(大統領補佐官としての秘書か、OSをイメージするのがいい、AIもだ)

これは、

でしかないことが分からない…。
*(詳しいことは、本当のところは、私は何も分かりません、知りません、実は興味さえ‥)

ヒトは言葉遊びに熱中していったのだよ…。
当人らにとっては痛く真剣なものであったかもしれないが…(w)。

この傾向は洗練強化されていった。伝統文化とやらの累積と伝達、否、伝染をもって。
やがてに、マインドに従う、これを我と思い、これに従うがヒトにおいては完全なる
自動性となってしまった。タマスとラジャスにばかり気を取られ、密かに働く怠惰の
潮流に無自覚、無抵抗に流されることによって。

つまりはだ、「善とは?」「正とは?」が、彼らにおいては言葉の組み立てによって
創造されているのだ。[全き善]を、理屈抜きで、生の存在の確信として把握理解できなく
なってしまった。相対性の罠へと嵌り込んでしまったと言うしかあるまい…。

ことは、ますます混乱するだばかりとなっていった。

我ら(天使)にすれば、それは自ずと知れて当然のこととなる。
つまりは語るを要せぬこと。

敢えてそうする必要があるならば「神を指し示す」以外には
何も出てこない、ありえないであろう…。

そして…、便宜的に有用とされるものでしかない「主体」(I)だ。
この便宜的なる器をもって、これが真実の自己であると錯覚するようになった。
これが副次的にして致命的なエラー、罪だ。

人の歴史において、善悪についてが、相対的な観点から、山ほどの理屈が作り出されていった。空論を重ね、こねくり回すことが奴らにとっての何よりの娯楽なのかもしれぬ。
面白いのは、「快なる」が善とする価値観が優勢となっていったことにある。
多くは我等(天使)からすれば、悪なるもの以外の何物でもないのだが…。

”I” は、ヒトにおいて、凝り固まり根付くこととなった…。この偽りとしての自己は、
感覚的なものによく反応する。また、こねくり回されて作られたかのような怪しげな観念、
そして煌びやかな凝った視覚イメージにも。惹かれ/憑かれ/熱狂している。

前者は肉への頽落における振動数低下に等しく、後者は悪しき霊泉からの障りでしかない
ものも少なくはない。どちらも異常な興奮、精神の高揚が内部では引き起こされている。

奴らは不必要なことを考え過ぎる。喋り過ぎる。安易に関わり過ぎるのだ。
そして…、それで、それだけで仕舞いなのだ……。本当にそれだけなのだ…。

至上の善から離れ、愛を施すことをおざなりにするようになってしまった。
いやできなくなってしまっている。

器としての分離は、あくまで便宜的なるもの、適時にしか有効でないことが
理解されるには、今となっては大変な苦しみ/葛藤によって、器が炎に焼かれ、
[融解/純化/死]を経ることなくしては叶うまい。

見よ、生存としての社会の情勢は、どこもかしこも、
あらゆる階層、どのスケールにおいても同じだ。
もう(ほとんどの人間は)ただの自動機械の群れと成り果てている。

全体的な視点、統一性を、誰もが欠いているのは、何ら考慮し得ないのは、
真に『繋がって』生きていないからだ。断片としての〈虚〉が舵を奪い合い、
取り合っているだけなのだから。

そう、無数の主人(あるじ)なきシステムが無目的に世界中で稼働している。

、実態は分からんぞー。
中身が、実は、レギオンである可能性も当然ある!。』


「それでも勝敗は

....。」

「負け戦は確実なのに奴らの今もっての目的とは一体何なんでしょうか?」


『今となっては、至高の御方の分霊たるヒトを堕落させることに、ただただ情念を燃やす
 しかないのであろう。所詮、

のだから…。
 

 一人でも多くのヒトを地獄への道連れとして引き込みたいだけだ。
 御方の、清き分霊の持ち主ならば、これに勝る獲物はないとまで考えておる。

 終局における勝ち負けなどもうどうでもいいこと。
 ただ盲目的なる絶望と悪意の権化と成り果てておる。
 
 しかし、それには恐ろしき

が、その目的に対して仕え、働いている。
 結果を見よ、とてつもなく巨大にして緻密なダイナミズムを生み出し、それらに寄生し、
 各々を導いておるわい。あたかも人類自らがが考え出したと思い込んでいる
 二つの経済原理を隠れ蓑として…』

〈回想終わり〉


〈暗転〉






Re: ステージ、無窮砂漠。


出でよ、ラー!


突如、空を割って巨大な球体が現れる。虚数空間からの帰還であった。上空遙を無音にてゆっくりと移動し、サリムの頭上にて停止した。『暗黒球』。もし触れることができたらば、10本の指は即座にふっとぶことになるであろう。無限度数にてあらゆる方向に回転しているからだ。重力制御の目的で建造された前宇宙科学の成果物。それらの一体である。

話を過去へと戻すなら、至高の御方は、あれらの遺産を七人の天使の専用機として聖別された。太陽神経叢が各々の連結でありコントロールの鍵とされた。しかし、細かな性能その機能の総体においては、天使たちに一切伝えられることはなかった。各自が自分の役目において自由に使えばいいとのことだけだったのだ。よって、実戦においてその真価を解明理解していくしかなかった。いくばかりかはその力を知り得たが、多くの内容がブラックボックスの状態ままに置かれている。例えば、〈ラー〉だ。これの本領は永久機関としての恒星間移動の推進ドライブになる(スゥイングバイ)。また、次元跳躍を、そして小型のブラックホールの生成さえも可能にしていた。こういったことをサリムは朧げに察することはできはしたが使いこなすまでには至っていない。そうする機会は生半に恵まれることでもない。よって、まだまだ余りにも多くの機能が所有者達にとって謎のままなのである…。

見渡す限りの砂漠である。


『フロー』


サリムは上空へと浮かび上がり、見えない足場に立つ。ラーとの連結を確認し(胸に手を当てる)、いつものごとくの派手な身振りで、あの大げさなアクションで操作を行う。ここで言っとくならば、

は操縦者のイメージがすべてなのだ。言葉もアクションも実はいらない。既に一心同体なのだから。だが、イメージの掻き立て方が、各自に個性があるのも確か。サリムの場合は彼の気性からか、どうしてもこういった荒々しく派手派手しいアクションが必要とされていたまでである…。

球体は登場の時とは比較にならないスピードで移動を開始した。それも全くの無音で。

『こいつにおいても同じことが行えるかを試しておきたい』

サイズ的には飛礫(つぶて)とは比較にはならない。
標的とすべき相手も今は想像はつかない。
しかし

の応用がこいつにおいてはどう現れるのかを確認をしておきたかった。
多段階変化でのインパクトを裸の大地に試す。

目を閉じた。目障りなものは一切遮断だ。着地ポイントのみを思念する。
無限の空間がそのままにお前自身に力を与える。
お前の思うがままに、自在に、存分に、その持てる力を開放せよ!!!。

イメージとし、我自身がロッドとなり渾身の力を初動からくれてやる。
その後に現れた運動は、あまりに変則的で、恐ろしくも激しいものであった。

複雑怪奇な軌道を、それは巨体にも関わらず、飛んで、走って、振り回される。
時に直進猛々しいだけの豪速の大怪球!。

サリムの激しい気性、鋭敏な感性、そして悪魔的なまでの知性、
これらの如実なる結晶である。
そして彼の持つ芸術性の発露、啓示、その表現。
これら以外の何者でもなかった。

数多の支点がおかれていた。作用点における引きと開放、
そして更に更なる加速増幅振幅…。
すべてが刹那の無時間において、完璧に果たされていた!。


『インパクト』


見事に、捉えどころのない軌跡を描き、(消失出現を取り混ぜながら)、
暗黒球は砂漠の大地へとめり込んでいった。
砂塵が舞う瞬間を確かにみた。

が、しかし、突如、時は引き戻される、された。

サリムの上空には最初の出現の時と同じ様子でラーが控えて浮かんでいた。
これは先ほどの場面ではないか!。シュミレーターの演算処理能力を上回る
事態となったからだ。それだけは間違いない。
かって、これまで、このような展開に接したことはないぞ…。

この一事には肝が冷えるような恐ろしさを覚えた。
なぜならば、この空間の衝撃に対しての許容範囲は
無限大の設定となっていたからだ。

確かに、質量計算をちゃんと行い、サリムがイメージをしっかりと組み立てられたならば、
地球そのものを物理的に貫通することさえも可能ではある。
だが、今回は、

、ほんの遊びとして、気軽に試しただけではないかー…。

何が起こった?

しばし熟考するも、これも不気味ではあるが、
抑止力としての威力と取らまえればいいだけの話ではないかー!となった。
いづれにお前の真価を見定めてくれよう…。


見上げた大空には暗黒球が静止して静かに浮かんでいる。
また他方の空には驚愕のイワンの顔が!。目は見開かれ、お口はあんぐり。
そして、こころからの賛辞を送る屈託の無い満面の笑みへと変わる。

「サリム殿、お見事でございます。」(




イワーン!!!

ええい、天使の分際でぇー、よくも〜よくも、よくもぉーーー!・・・』


雄叫びともとれる咆哮が、澄み切った空に木霊(こだま)していた…。




〈続〉


あとがき:

今回のテーマは、あっしニャ〜あ、ちと荷が勝ちすぎるの内容になりやす。
でも、なんとはなしに、『やれ』って…。○○美ちゃんが…。
もう言葉足らずも未だいいとこジャン…。
でももうやんない。今は。これ以上は。

完全に抜けてると思うのが、もう今回はいいや〜となったのが、
なぜ神は、ヒトが知恵の実を食することを止めたのか、禁じたのか?

中でも言ったが、もう一回、言っとく。
彼がヒトを心から愛していたからだ。
ことの結果としてアダムたちが死に渡されることになるのが分かっていたから。
彼が死ぬようなことに、なって欲しくなかった。

なぜ死が必然として、忽然となって立ち現れてくるのか?
なぜ、知恵の実とセットとなってしまうのか?

これは世界内から世界外へと踏み出すを客観的には意味するではないだろうか?。
要は、不死なる神の腕から落ちるのだ。自動的に排除された状態へと移行する。

本来永遠に機能する、不死たる、この宇宙のシステム、その秩序から、脱落した。
枠外へと踏み出てしまった。
その結果として、死が発生してしまった。避けがたいものとなった…。

更に、生命の実を食させるわけには”今は”いかないのであろう。
特に、こんな展開においては!、絶対に。

 ……

おそらく、これも既定の、進化の道筋なのかも知れない。

己が意思にて世界内へと回帰することができれば、
 それはそのままに、元のアダムを超えた、新たなる存在種と化すことになる。

お前が禁を破って手に入れた、その善悪を知る知恵をもって、
 宇宙の全体を、その成り立ちを、その正体を理解するならば、
  自ずととるべき道が何なのかをお前は自分で選択できるはずだ。

彼の希望に応えるか、答えないか、それは各自の自由です。





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