3. ベドラムの子供達

文字数 3,095文字



タイタンのコックピット内。
道中、サンダルホンはずっと歌を口ずさんでいる。
無慈悲にして鳴り響く(パイルの打撃音を思わせる)その足音を拍子としながら。
18世紀のイギリス民謡なのだが少し通常聴くものの歌詞とは違い
珍しいタイプのものだった.....


【Boys of Bedlam】

To find my Tom of Bedlam
Ten thousand years I'll travel,
Mad Maudlin goes on dirty toes
To save her shoes from gravel.

ベドラムにいる私のトムを捜して私は1万年を旅するの。
狂ったモードリアンは彼女の靴が砂利で傷まぬよう
汚れたつま先突ったてて尚もゆくー。

*Chorus (repeated after each verse):
Still I sing:
Bonny boys, bonny mad boys,
Bedlam boys are bonny,
For they all go bare and they live by the air,
And they want no drink nor money.

コーラス・パート(各節の後に繰り返される):
*いまだに私は歌うのよ
『愛しい子供達・狂ってしまったあの子供達が今でも愛おしい。
 ベドラムの男の子たちがとても愛おしい。
 彼らはみんな素っ裸、霞を喰って生きている。
 酒もお金も、何も欲しがりゃしない』。



I now repent that ever
Poor Tom was so disdained,
My wits are lost since him I crossed,
Which makes me thus go chained.

私は今、ずっと後悔してる。
可哀想なあのトムがそんなにも貶められていたとは...
私の思考力はどっか行っちゃった。
彼を、私があそこに閉じ込めてから。
そのことが今も私を縛る。

I went to Pluto's kitchen
To beg some food one morning,
And there I got souls piping hot,
All on the spit a-turning.

ある朝、食べものもらいに私はプルート(サタン)の台所に降って行ったのね。
そして、そこで私は熱々の魂にありついた。
みんな串刺しにされて、ぐるりとコンガリ炙られていた。



*いまだに私は歌っているのよ
『愛しい子供達・狂ってしまっているあの子供達が愛おしい。
 ベドラムの男の子たちみんなが愛おしい。
 彼らはみんな素っ裸、霞を喰って生きている。
 酒もお金も、何も欲しがりゃしない』。

There I took up a cauldron,
Where boiled ten thousand harlots,
Though full of flame I drank the same,
To the health of all such varlets.

そこで私は大釜を手に取った。
中では1万人の淫売が煮られていたよ。
焔がいっぱい立ってたが、私は気にせずそいつを飲みました。
こうしたロクデナシ達みんなの健康を祝ってさ。

My staff has murdered giants,
My bag a long knife carries,
For to cut mince pies from children's thighs,
With which to feed the fairies.

私の得物は巨人どもをやったこともあるんだわ。
長〜えナイフが私のバッグにゃ忍ばれている。
子供の腿からの、ミンチパイ削ぎとり用にね。
妖精らをこれで餌付けしてんの。

*いまだに私は歌っているのよ
『愛しい子供達・狂ったあの子供達が愛おしい。
 ベドラムの男の子たちがとても愛おしい。
 彼らはみんな素っ裸、霞を喰って生きている。
 酒もお金も、何も欲しがりゃしない』。



A spirit hot as lightning
Did on that journey guide me,
The sun did shake and the pale moon quake,
As soon as e'er they spied me.

稲妻の如き熱き聖霊の訪れ。
これが私に旅の導きを寄こしてくれる。
太陽は揺れ惑い、そして蒼き月は震え慄いてた。
こっそり私の行い覗いてしまい、それ見てすぐに。

*いまだに私は歌っているよ
『愛おしい子供達・狂ってしまったあの子供達がなおも私にゃ愛おしい。
 ベドラムの男の子たちがとても愛おしい。
 彼らはみんな素っ裸、霞を喰って生きている。
 酒もお金も、何も欲しがりゃしない』。

No gypsy, slut, or doxy
Shall win my Mad Tom from me,
I'll weep all night, with stars I'll fight,
The fray shall well become me.

ジプシーも、娼婦もしくは情婦らも。
私から痴れ者トムを取り上げることなんかできゃしない。
私は夜通し咽び泣こう。私が戦うこととなる星々と共に。
喧嘩になるこた〜私にゃ分かってる。

*いまだに私は歌っているよ
『愛しい子供達・狂ってしまっているあの子供達が愛おしい。
 ベドラムの男の子たちがとても愛おしい。
 彼らはみんな素っ裸、霞を喰って生きている。
 酒もお金も、何も欲しがりゃしない』。

So drink to Tom of Bedlam,
Go fill the seas in barrels,
I'll drink it all, well brewed with gall,
And Maudlin drunk I'll quarrel.

そんじゃあベドラムのトムの処へ飲みに参りましょう。
樽を海ほどに満たしといてくだしゃんせ。
私はそれをぜんぶ飲み干して、胆汁でよっく醸造しますわ。
そんでモードリンは酔っぱらってしまうのね。
そんでもって私は喧嘩すんだ。

*いまも私は歌うわよ
『愛しい子供達・狂ったあの子供達が心が破れるほどに愛ほしい。
 ベドラムの男の子たちがなんてったって憐れでさ。
 彼らはみんな素っ裸、霞喰って生きてやがる。
 酒もお金も、何にも欲しがりゃしない』。

by Roberts & Barrand sing Tom of Bedlam

” since him I crossed ”:「彼を、私が磔刑に処してから」が直訳。

[意訳:byMe]


多分、モードリアンは両手に靴をぶら下げて、爪先立ちで猫背で歩いてる...
wな女子やね。


〈続く〉



補完:

https://www.youtube.com/watch?v=_FfRHKFymeA

これがイメージ的はピッタリになります。


Steeleye Spanのものが有名だったみたい。ボクはYBO2(1986)で初めて聴いた。
こちらは地獄からの怨歌の如き解釈でビビったものだ。「Tom o' Bedlam 」 という
言い回しはシェークスピアの『リア王』に既にあるんだって。
狂人であり物乞いでもある人物、または狂人をよそおった物乞いを指すとのこと。
ネフィリムの暗喩としては余りにも相応し過ぎる。これは”天啓”かも。www。
詳細がお知りになりたければ、Wiki へ。
ベドラムで検索してみてください。たんまり情報ありますぜ。






























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