第36話 再会5

文字数 851文字

 僕達はダイニングに戻り、またコーヒーを飲んだ。ルーは、家の中をあちこち走り回り、体に着いた水分を辺りに撒き散らしていった。

「それ、どうやって動いてるの?」
「脳波。あと、生体電池」
「へ?」
「あぁ、俺もよくわかんないんだ」

樹も、当時はどういう仕組みで動いているのか聞いたことがあるけど、難しい言葉ばかり出てきて、まったくわからなかったそうだ。

「頭に『何とかチップ』を埋め込んで、そこからシグナルがなんとかかんとかって、博士は言ってた」
「博士がいたの?」
「うん、新開(しんかい)博士。団長の友達」

僕は、「はぁ」と口をぽかんと開けた。樹は、コートのポケットから一枚の写真を引っ張り出して、僕に見せてくれた。

「俺達の写真。旅団の仲間」
「えっと、第一旅団……」
「うん」

樹は僕に紙とペンを貸してと言ったので、僕はどこそこから紙とペンを探して、樹に渡した。樹はペンを持って、紙に文字を書いていった。
その字は、意外にも達筆で驚いた。

第一旅団
嶽上威一郎(たけがみいいちろう)
矢城悠也(やしろゆうや)
柳洋二(やなぎようじ)
熊裕介(くまゆうすけ)
川添大介(かわぞえだいすけ)
別府海斗(べっぷかいと)
星翔太(ほししょうた)
眞武大希(またけだいき)
東光拓海(とうこうたくみ)
室戸翼(むろとつばさ)
高口健一(こうぐちけんいち)
愛甲健太郎(あいこうけんたろう)
早野直樹(はやのなおき)
宇都和也(うとかずや)
神山弘大(かみやまこうだい)
十時大輝(とときだいき)
緒片太陽(おがたたいよう)
山浪誠(やまなみまこと)
清瀬(きよせ)なお
丸中圭悟(まるなかけいご)
岡山晃(おかやまあきら)
南田孝太郎(みなみだこうたろう)
菊地亘(きくちわたる)
伊月司(いづきつかさ)
岩村優一(いわむらゆういち)
(おれ)

 樹は、これが誰だと、一人一人を教えてくれた。

「悠也はまだ小さかった頃なんだね」

 白髪頭になってる樹のズボンを握りしめ、綺麗な栗色の髪をした小さな悠也がこっちを見ていた。まだ慣れない頃だったのか、樹にベッタリくっついた様子で、お人形さんみたいな丸い目をして、口をへの字に曲げていた。

「嶽上が団長。この真ん中に座ってるの」

 写真に写っているのは、全体的に堀が深く、髪は焦茶色でオールバック。緑と言うかなんと言うか、俗に言う『ヘーゼルナッツ』の色をした目。見るからに、ハードボイルドと言ったような見た目の人だった。

「この人、外人?怖そうな人だね」
「ハーフらしい。父親がどっかの白人で、母親が日本人」
「へぇー」
「悠の父親」
「へぇー……、え?」

あまりにも樹がサラッと言ったので、僕は聞き流すところだったよ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み