第54話 昔話8
文字数 1,225文字
「シュウが俺を投げ飛ばして熊が俺をキャッチしてくれた。俺を肩に担いで熊は逃げた。その時、後ろの様子を見れたけど、シュウは倒れて草むらに消えた。
敵はシュウに集中したから、俺たちはその場から離れることができた。あ、誠がシュウを守る為に残ったよ。木々の後ろから、ライフルで敵を狙撃してた。
凄かった。百発百中なんだ」
「ライフルって、スナイパー用の?」
「いや、アサルトライフルだ。俺たちは無駄撃ちはしない。いつもそうやって訓練してきた。
アサルトライフルは、戦場で一番使われる銃だ。俺もよく使ってた」
「そういえば、君がこの森で倒れてた時、ハンドガンとAKを持ってたね」
「俺のハンドガンとライフルだ。団長からもらった。命の次に大切なものーー。そういえば、俺の銃はどこにあるんだ?」
「君のは武器庫にあるよ。綺麗に手入れされててまだ使えそうだったし」
彼は少し、ホッとした顔をした。だけど、大切なものでも銃を返すわけにはいかない。
なぜかって、察しのいい君なら理由は分かるよね?
「それで、その後はどうなったの?」
「キャンプに戻った。団長からは何もなかったけど、熊にビンタされた。
で、キャンプも危ないだろうってなったけど、俺たちはそれを利用して、木の影とかに隠れて、キャンプに近づいてきた敵を一掃することにした。その支度の途中に誠とシュウが戻ってきた。シュウ、左の脇腹と肩と、背中からも血が出てて、誠に担がれてた。
俺、悪いことしちゃったって思ったよ。
シュウはもう動かせないから、団長と俺とルーと一緒にキャンプに残った。そのテントの中で、団長はシュウを手当てしてた。体の中に入った弾を取り出すんだけど、ちょうど麻酔が切れてた。だから団長、シュウの口に布を突っ込んで弾を取り出して消毒してから傷を縫ってた。凄く痛そうだった。汗が噴き出してて、血まで噴き出して、でも声は我慢して、目をギュッてつむってた」
その様を想像してしまった僕は、思わず悠也から目をそらした。
「外は銃撃戦が始まってた。激しかった。たまに流れ弾がテントを突き破ってくるんだ。ずっと音がしてた。ダダダダって。誰かの叫び声が聞こえてた。『怯むな』とか『うわぁぁぁぁ』とか、敵の声だと思う。
怖くてソワソワしてたら、団長が『落ち着け』って、『仲間が戦ってるし、何かあっても俺がいる』って言ってくれたんだ。それで俺、怖いの我慢してずっとルーを抱きしめて、銃撃戦が終わるのを待ってた」
悠也はまた言葉を切って、片膝を立てた。そしてまた、口を開いた。
「シュウの手当てが済んだ頃、銃の音もやんでた。外に出たら、テントの周りとか、近くの川縁とか二十人くらいの敵が倒れてた。火薬の匂いと血の匂いが混ざって、変な匂いがしてた。
銃撃戦が終わって、皆は敵の装備を外して使えそうなものを取った。マガジンとか手投げ弾とか使えそうな銃とか、あと戦闘服と靴も。そして、死体は土に埋めた」
彼は、あの虚ろな目をして遠くを見つめていた。
敵はシュウに集中したから、俺たちはその場から離れることができた。あ、誠がシュウを守る為に残ったよ。木々の後ろから、ライフルで敵を狙撃してた。
凄かった。百発百中なんだ」
「ライフルって、スナイパー用の?」
「いや、アサルトライフルだ。俺たちは無駄撃ちはしない。いつもそうやって訓練してきた。
アサルトライフルは、戦場で一番使われる銃だ。俺もよく使ってた」
「そういえば、君がこの森で倒れてた時、ハンドガンとAKを持ってたね」
「俺のハンドガンとライフルだ。団長からもらった。命の次に大切なものーー。そういえば、俺の銃はどこにあるんだ?」
「君のは武器庫にあるよ。綺麗に手入れされててまだ使えそうだったし」
彼は少し、ホッとした顔をした。だけど、大切なものでも銃を返すわけにはいかない。
なぜかって、察しのいい君なら理由は分かるよね?
「それで、その後はどうなったの?」
「キャンプに戻った。団長からは何もなかったけど、熊にビンタされた。
で、キャンプも危ないだろうってなったけど、俺たちはそれを利用して、木の影とかに隠れて、キャンプに近づいてきた敵を一掃することにした。その支度の途中に誠とシュウが戻ってきた。シュウ、左の脇腹と肩と、背中からも血が出てて、誠に担がれてた。
俺、悪いことしちゃったって思ったよ。
シュウはもう動かせないから、団長と俺とルーと一緒にキャンプに残った。そのテントの中で、団長はシュウを手当てしてた。体の中に入った弾を取り出すんだけど、ちょうど麻酔が切れてた。だから団長、シュウの口に布を突っ込んで弾を取り出して消毒してから傷を縫ってた。凄く痛そうだった。汗が噴き出してて、血まで噴き出して、でも声は我慢して、目をギュッてつむってた」
その様を想像してしまった僕は、思わず悠也から目をそらした。
「外は銃撃戦が始まってた。激しかった。たまに流れ弾がテントを突き破ってくるんだ。ずっと音がしてた。ダダダダって。誰かの叫び声が聞こえてた。『怯むな』とか『うわぁぁぁぁ』とか、敵の声だと思う。
怖くてソワソワしてたら、団長が『落ち着け』って、『仲間が戦ってるし、何かあっても俺がいる』って言ってくれたんだ。それで俺、怖いの我慢してずっとルーを抱きしめて、銃撃戦が終わるのを待ってた」
悠也はまた言葉を切って、片膝を立てた。そしてまた、口を開いた。
「シュウの手当てが済んだ頃、銃の音もやんでた。外に出たら、テントの周りとか、近くの川縁とか二十人くらいの敵が倒れてた。火薬の匂いと血の匂いが混ざって、変な匂いがしてた。
銃撃戦が終わって、皆は敵の装備を外して使えそうなものを取った。マガジンとか手投げ弾とか使えそうな銃とか、あと戦闘服と靴も。そして、死体は土に埋めた」
彼は、あの虚ろな目をして遠くを見つめていた。