第31話 夜
文字数 1,863文字
次の日の夜、仕事を無事に終わらせて部屋に戻ったけど、既にくつろいでいた光が、「悠也がお前を探してたぞ」と言うので、僕はすぐに悠也の部屋に向かった。
「僕を探してたって?」
彼は、寝転がって何やら本を読んでいた。
「何読んでるの?」
「な、何でもない」
そう言うと、彼は慌てて本を閉じて起き上がった。
僕は、ベッドの端に座った。彼は、本を枕の下に入れた。
「何読んでたの?」
「何でもない」
「そっか。僕に用があるって?」
「あ、あぁ」
彼は、自分の足の指をそわそわと動かし、体を前後に揺らした。
「あ、あの……、そろそろ、話さなきゃって思って……」
「ん?」
「俺のこと、皆のこと……」
彼は、もじもじしながら顔を下に向けた。そして彼は、明後日、外で話をしたいと言った。
「どうして?」
「誰にも聞かれたくないし、明日はダメだ」
彼の目が、いつになく鋭くなった。こんな目をする悠也を見るのは久しぶりだったと思う。
僕は返事をした。彼は、鋭い目を窓に向けた。
「じゃ、明後日ね」
僕は部屋を出た。自分の部屋に戻り、光にこの事を話して、明後日の仕事の事をお願いした。光は快く受けてくれた。
「明日じゃなくて明後日?なんで?」
「明日はダメなんだって」
「ふーん、明後日ねぇ……」
それ以上の話の進展はなく、僕は支度を整えてベッドに潜った。
その日の夜中、大きな爆発音がして飛び起きた。光もすぐに起きた。
「なんだ?」
大きな爆発音の後、遠くから銃声が聞こえた。
「とにかく、確認しなきゃ」
「あぁ」
僕は、枕元に置いてるハンドガンを取り、光は、ベッドの下に隠していたアサルトライフルを取り出した。
こういうことに慣れてる光は、ヘラヘラと笑っていた。僕は怖かった。僕は、こういう場に慣れてなかった。
「よく笑えるね。僕なんて足が震えてきたよ」
「バカ言うな。俺だって怖いに決まってんだろ。銃は持ちたくねぇよ……、あの時を思い出す」
「……ごめん」
その時、部屋のドアが勢いよく開いた。すぐさま銃口を向けたその先には、悠也がいた。悠也は銃口が向けられていることに気がつき、すぐに両手をあげた。
「ヒッ!」
「あ、ごめん」
僕も両手をあげた。
悠也は、肩で息をしながら部屋に入った。
「大丈夫?ケガはない?」
「う、ん……」
彼の額には汗が噴き出ており、唇を少し震わせていた。
「怖い?」
彼は小さく頷いた。
その時、また大きな爆発音が響いた。さっきのよりは遠かったけど、窓ガラスが揺れた。
「巽、行くぞ」
「うん。悠也はここにいて」
「ど、どこ行くんだ」
「ここの周りを見るだけだよ。大丈夫、すぐ戻るから」
「い、嫌だ、俺も行く」
「だめだ、ここにいて」
「嫌だ!」
こんな時に困った。悠也も、一人が怖かったんだと思う。
そのやりとりを見ていた光が口を開いた。
「悠也、俺のベッドの下にハンドガンがある」
悠也はすぐに光のベッドの下に手を入れ、ハンドガンを掴むと、マガジンを確認した。
「HK45、十発だ。いいか、引き金に指をかけるなよ。絶対だぞ!」
悠也は口をキュッと閉じ、大きく頷いた。
「よし、お前はここにいろ。巽、行くぞ」
「待って、俺も……」
その時、光が悠也のそばまで戻り、彼の頬を平手で打った。
「いいかげんにしろ‼︎」
悠也は、打たれた左頬を手で押さえ、下を向いた。
そして僕達は部屋を出て、その部屋に鍵をかけた。
外に出て、周囲を警戒した。どうやら、音は二キロ先の市街地からのようだった。
施設の周りは、意外にも静かだった。それでも僕達は、物音に敏感になっていた。
葉の擦れる音、雪の降る音、自分達の息を殺して周囲を見て回った。
だが、人影や動物の姿はなかった。僕達は一通り外を見廻り、施設に戻って子ども達の様子を見て回った。
爆発音に驚いて、ベッドの中に潜っている子や、音が気になって興奮している子、そのまま何事もなく眠っている子など、様々だった。
僕達は、一人ひとりに声をかけ、安心するように言った。リラックスできるように子ども達の頭を撫で、背中をさすり、できる限りの事をやった。自室に戻る時には、もう夜が明けようとしていた。そして、爆発音や銃声は、いつの間にか聞こえなくなっていた。
僕達は、部屋の中に入った。悠也は、僕のベッドの上で、落ち着いて座っていた。あんなに心を乱した悠也が落ち着きを取り戻していた理由が、僕にはすぐに分かった。
僕のベッドの下に、銃弾の破片が一つ落ちていた。それを拾い上げると、その中に入っているはずの火薬が入っていなかったんだ。
「吸ったの?」
悠也は、ゆっくりと瞬きを一回した。僕と光は、互いの目を見合わせた。
「僕を探してたって?」
彼は、寝転がって何やら本を読んでいた。
「何読んでるの?」
「な、何でもない」
そう言うと、彼は慌てて本を閉じて起き上がった。
僕は、ベッドの端に座った。彼は、本を枕の下に入れた。
「何読んでたの?」
「何でもない」
「そっか。僕に用があるって?」
「あ、あぁ」
彼は、自分の足の指をそわそわと動かし、体を前後に揺らした。
「あ、あの……、そろそろ、話さなきゃって思って……」
「ん?」
「俺のこと、皆のこと……」
彼は、もじもじしながら顔を下に向けた。そして彼は、明後日、外で話をしたいと言った。
「どうして?」
「誰にも聞かれたくないし、明日はダメだ」
彼の目が、いつになく鋭くなった。こんな目をする悠也を見るのは久しぶりだったと思う。
僕は返事をした。彼は、鋭い目を窓に向けた。
「じゃ、明後日ね」
僕は部屋を出た。自分の部屋に戻り、光にこの事を話して、明後日の仕事の事をお願いした。光は快く受けてくれた。
「明日じゃなくて明後日?なんで?」
「明日はダメなんだって」
「ふーん、明後日ねぇ……」
それ以上の話の進展はなく、僕は支度を整えてベッドに潜った。
その日の夜中、大きな爆発音がして飛び起きた。光もすぐに起きた。
「なんだ?」
大きな爆発音の後、遠くから銃声が聞こえた。
「とにかく、確認しなきゃ」
「あぁ」
僕は、枕元に置いてるハンドガンを取り、光は、ベッドの下に隠していたアサルトライフルを取り出した。
こういうことに慣れてる光は、ヘラヘラと笑っていた。僕は怖かった。僕は、こういう場に慣れてなかった。
「よく笑えるね。僕なんて足が震えてきたよ」
「バカ言うな。俺だって怖いに決まってんだろ。銃は持ちたくねぇよ……、あの時を思い出す」
「……ごめん」
その時、部屋のドアが勢いよく開いた。すぐさま銃口を向けたその先には、悠也がいた。悠也は銃口が向けられていることに気がつき、すぐに両手をあげた。
「ヒッ!」
「あ、ごめん」
僕も両手をあげた。
悠也は、肩で息をしながら部屋に入った。
「大丈夫?ケガはない?」
「う、ん……」
彼の額には汗が噴き出ており、唇を少し震わせていた。
「怖い?」
彼は小さく頷いた。
その時、また大きな爆発音が響いた。さっきのよりは遠かったけど、窓ガラスが揺れた。
「巽、行くぞ」
「うん。悠也はここにいて」
「ど、どこ行くんだ」
「ここの周りを見るだけだよ。大丈夫、すぐ戻るから」
「い、嫌だ、俺も行く」
「だめだ、ここにいて」
「嫌だ!」
こんな時に困った。悠也も、一人が怖かったんだと思う。
そのやりとりを見ていた光が口を開いた。
「悠也、俺のベッドの下にハンドガンがある」
悠也はすぐに光のベッドの下に手を入れ、ハンドガンを掴むと、マガジンを確認した。
「HK45、十発だ。いいか、引き金に指をかけるなよ。絶対だぞ!」
悠也は口をキュッと閉じ、大きく頷いた。
「よし、お前はここにいろ。巽、行くぞ」
「待って、俺も……」
その時、光が悠也のそばまで戻り、彼の頬を平手で打った。
「いいかげんにしろ‼︎」
悠也は、打たれた左頬を手で押さえ、下を向いた。
そして僕達は部屋を出て、その部屋に鍵をかけた。
外に出て、周囲を警戒した。どうやら、音は二キロ先の市街地からのようだった。
施設の周りは、意外にも静かだった。それでも僕達は、物音に敏感になっていた。
葉の擦れる音、雪の降る音、自分達の息を殺して周囲を見て回った。
だが、人影や動物の姿はなかった。僕達は一通り外を見廻り、施設に戻って子ども達の様子を見て回った。
爆発音に驚いて、ベッドの中に潜っている子や、音が気になって興奮している子、そのまま何事もなく眠っている子など、様々だった。
僕達は、一人ひとりに声をかけ、安心するように言った。リラックスできるように子ども達の頭を撫で、背中をさすり、できる限りの事をやった。自室に戻る時には、もう夜が明けようとしていた。そして、爆発音や銃声は、いつの間にか聞こえなくなっていた。
僕達は、部屋の中に入った。悠也は、僕のベッドの上で、落ち着いて座っていた。あんなに心を乱した悠也が落ち着きを取り戻していた理由が、僕にはすぐに分かった。
僕のベッドの下に、銃弾の破片が一つ落ちていた。それを拾い上げると、その中に入っているはずの火薬が入っていなかったんだ。
「吸ったの?」
悠也は、ゆっくりと瞬きを一回した。僕と光は、互いの目を見合わせた。