第68話 犠牲2
文字数 795文字
「た、巽……悠を、頼む」
「樹、もう戦争は終わった。だから、一緒に暮らせないかな?また、あの時みたいに……ね?」
樹がやっと僕の目を見てくれた。そして少し笑った。
「そうだな……、もう……疲れた。その前に、言わなきゃいけない」
「シュウ?」
「俺は……俺は、スパイだ。政権側のスパイ」
「え……」
「脅されていた……。フィルム型の爆弾を頭に埋め込まれて、命令に、従わなかったら、スイッチひとつで殺される……。俺は、そうやって死んだやつを、ずっと……見てきた。……た、嶽上団長も殺した……。お……、俺は、敵も、味方も殺した……、悪人……」
「樹……」
「本当は、あの時……い、家を出た後、俺、怖くなって……家に戻ったんだ……。お前が倒れてるのが見えたから、走って、む、向かった時、政権側の大人にさらわれた。ごめんな……たつ……み……」
樹は涙を流しながらお腹に手を当てた。僕はすぐに彼のそばに行って、コートの前を外して何かを隠そうとした手を退かした。僕は言葉を失った。
「み、見るなよ……」
「樹……」
樹のお腹は、ぽっかりと穴が空いていた。
「はは……」
乾いた笑い声が、僕の心を掻き立てた。
「すぐに手当を……」
「む、無理だ……。もう……」
「無理じゃない!悠也、光呼んできて!」
悠也は「分かった」と行って走って行った。ルーは樹に寄り添うように伏せた。
僕は着ているコートを樹に着せた。下顎がカタカタと震えていた。
僕も泣きながらそのお腹に手を当てた。本当は、もう助からないのは分かっていた。でも、もしかしたら、助かるんじゃないかって、そう思ったりもした。
「なんで……なんでこんなに頑張ったの?」
樹は僕の肩に手をかけて言った。
「やっと、会えた」
僕の肩から、樹の手が落ちた。樹は目を少し閉じて一筋の涙を頬に伝わせ、口を少し開けた状態で、動かなくなった。
「た……樹」
僕の目の前が真っ暗になった。それからのそこでの記憶はない。
「樹、もう戦争は終わった。だから、一緒に暮らせないかな?また、あの時みたいに……ね?」
樹がやっと僕の目を見てくれた。そして少し笑った。
「そうだな……、もう……疲れた。その前に、言わなきゃいけない」
「シュウ?」
「俺は……俺は、スパイだ。政権側のスパイ」
「え……」
「脅されていた……。フィルム型の爆弾を頭に埋め込まれて、命令に、従わなかったら、スイッチひとつで殺される……。俺は、そうやって死んだやつを、ずっと……見てきた。……た、嶽上団長も殺した……。お……、俺は、敵も、味方も殺した……、悪人……」
「樹……」
「本当は、あの時……い、家を出た後、俺、怖くなって……家に戻ったんだ……。お前が倒れてるのが見えたから、走って、む、向かった時、政権側の大人にさらわれた。ごめんな……たつ……み……」
樹は涙を流しながらお腹に手を当てた。僕はすぐに彼のそばに行って、コートの前を外して何かを隠そうとした手を退かした。僕は言葉を失った。
「み、見るなよ……」
「樹……」
樹のお腹は、ぽっかりと穴が空いていた。
「はは……」
乾いた笑い声が、僕の心を掻き立てた。
「すぐに手当を……」
「む、無理だ……。もう……」
「無理じゃない!悠也、光呼んできて!」
悠也は「分かった」と行って走って行った。ルーは樹に寄り添うように伏せた。
僕は着ているコートを樹に着せた。下顎がカタカタと震えていた。
僕も泣きながらそのお腹に手を当てた。本当は、もう助からないのは分かっていた。でも、もしかしたら、助かるんじゃないかって、そう思ったりもした。
「なんで……なんでこんなに頑張ったの?」
樹は僕の肩に手をかけて言った。
「やっと、会えた」
僕の肩から、樹の手が落ちた。樹は目を少し閉じて一筋の涙を頬に伝わせ、口を少し開けた状態で、動かなくなった。
「た……樹」
僕の目の前が真っ暗になった。それからのそこでの記憶はない。