第57話 昔話11

文字数 926文字

 話が一度終わり、ゆっくりと瞬きをして小さく息をついた悠也を見て、僕はまた聞いた。

「ねぇ、君たちの仲間はなんで戦ってたの?」
「なんで?武器の種類か?」
「あ、いや、どうして戦ってたのかなって。みんな君と同じ理由?」

悠也はまたゆっくりと瞬きをして答えてくれた。

「金が貰えてご飯も食えるから、兵士で稼いで里の家族を養う奴が半分と、戦争孤児になって行くところがない奴が半分。あと、物心ついた時から旅団にいた奴が一人いた」
「それって、小さな子供の時から部隊にいたってこと?」
「ん。翼は一才の時に、『一色(いっしき)』って言う団長に拾われたんだって。翼は覚えてないみたいだったけど」
「そういえば、翼っていう人は樹と子供の時から一緒だって言ってたね」
「ん。……なんだ、シュウの事が知りたいのか?」

 図星だった。悠也は顔色ひとつ変えずに話してくれた。

「俺が知ってるのは、シュウは十歳の時に第一旅団に来たらしい。それまでは第五旅団にいて、たまたまそこに視察に行った団長が第一に引き抜いたって聞いてる。
子供なのに運動神経が良くて、その場その場での判断力もあって、何より目が良いって、一目見て気に入ったって団長が言ってた。その頃からちょっと白髪混じりの頭だったらしい。
ズタボロの服を着て、体中泥だらけで手足は傷だらけで髪はボサボサだったんだって。顔はやつれてて、たぶんあまりご飯を食べさせてもらえてなかったんだろうって言ってた。

 団長が『シュウが欲しい』って言ったら、あっちの団長は『こんなボロ雑巾が欲しけりゃタダでやるよ』って言ったらしい。可哀想だよな。

 翼はシュウが第一に来た時は『生まれて初めての同い年の友達だ』って、『嬉しかった』って言ってた」
「樹は、自分の事を話したりするの?」
「いや、聞こうとしたらだんまりして、ムスッとしてどっかに行くんだ。ただでさえ眉間にシワ寄せて怖い顔してるんだぜ」
「そうなんだ……」
「あ、でも一回だけなんか聞いたことある」
「え?どんなの?」
「『俺は、コーヒーよりもココア派だ』って言ってた。いつもの怖い顔して言ってたから、少し笑った。あの顔で辛いのは食えないんだ。けっこう舌はお子様なんだ!」

僕は、この前の事を思い出して笑った。

 実は僕もココア派だ。
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