第55話 昔話9
文字数 1,355文字
「敵の装備を回収して、俺たちは人が入らないようなところに移動した。移動に使うトラックは、カムフラージュの為のカバーとか葉っぱとかをかぶせるんだ。
移動が終わったのは昼過ぎ。その日はそこで夜まで待った。
俺は睡眠薬で眠ったシュウの隣にいた。目が覚めたら団長に言うように言われてたから、ずっと見てた。そしたら、唸り始めて、叫びながら起きたんだ。俺、びっくりして、持ってたナイフでリンゴの皮を剥くところを真っ二つに切って手まで切ったよ。
そしたらシュウ、頭を抱えて起き上がったんだ。傷口を塞いだばかりだったから、すぐに血が出てきてた。慌てて団長を呼びに行って、またシュウのいるテントに戻ったら……シュウ、リンゴを剥いてたナイフで自分のおでこを切ってた。団長は急いで薬の入ったニードルをシュウの首に刺した。そしたらシュウ、すぐに落ち着いてまた寝た。
団長は『こいつは、世間じゃ鬼だって恐れられてるけど、本当はとても優しくていい子なんだ』って。『でも戦争だから』って言ってたーー」
僕は、これはストレスだと思った。長いこと戦場で戦い続けて、心が壊れていく。ここにいる子ども達は、よく悪夢にうなされたり、暴力的になったりしていた。以前にも言ったよね?
樹の場合は頭が痛くて痛くて、気が狂うそうだ。だから薬を使って落ち着かせないと自殺しちゃうって。でもその薬は劇薬らしく、あまり使うと薬が効かなくなるそうだ。
凄く、胸が痛くなった。
「やがて夜になって、みんなが戦闘の準備を始めたから、俺も行かせてくれって頼んだんだ。最初はみんな嫌がってたけど、弘大が『俺と来い』って言ってくれた。
戦闘の目的は、発電所の破壊だった。二つに分かれて、一つは揺動と敵兵の撃破、一つは潜入と目標の破壊任務があった。
あっちの数は三十人くらいで少なかったから、こっちは十一人で戦った。七人が敵兵をおびき出してるうちに、俺たち四人は中に潜入するって作戦だった。
あ
まずはビルが小型のスティンガーで建物の一部を壊した。そしたら敵兵が数人出てきて銃を構えたから、みんなは物陰から敵を狙い撃った。
まずは足を狙う。そこで相手が動けなくなったところで心臓とか頭を狙ってた。でもクレアは違った。クレアはスナイパーだから、一発の弾丸で相手を仕留めてた。
クレアは凄いんだ。どんなに遠くても、風を読んで狙撃するんだ」
佐野さんの言葉を思い出した。
ーー彼らは、エキスパートコンバットという、いわばプロの戦闘集団です。銃の腕は百発百中。特に狙撃手は優秀で、どこからでも標的を撃ち抜く程ですーー。
風の動きを読むなんて、経験豊富でないと出来っこないと思う。どれだけ戦場に立って戦っていたんだろう?
そんなことを思っていたけど、悠也は話を続けた。
「クレアは目がいいんだ。だって、目玉がサイボーグになってて、俺たちとは違う見え方になってるんだって。目標がどんな背格好なのかとか、目標までどれくらいの距離なのかとか、目玉からの情報を解析できるって言ってた。すげーよな、サイボーグって……。
あと、暗闇でも目標がはっきり見えたりとか、熱源を元に目標を見つけたりとか、とにかく凄いんだ。数キロ先の目標とかも見えるんだって。すげーよな、綺麗な目玉してんだぜ」
彼は、少し興奮した様子で語った。
移動が終わったのは昼過ぎ。その日はそこで夜まで待った。
俺は睡眠薬で眠ったシュウの隣にいた。目が覚めたら団長に言うように言われてたから、ずっと見てた。そしたら、唸り始めて、叫びながら起きたんだ。俺、びっくりして、持ってたナイフでリンゴの皮を剥くところを真っ二つに切って手まで切ったよ。
そしたらシュウ、頭を抱えて起き上がったんだ。傷口を塞いだばかりだったから、すぐに血が出てきてた。慌てて団長を呼びに行って、またシュウのいるテントに戻ったら……シュウ、リンゴを剥いてたナイフで自分のおでこを切ってた。団長は急いで薬の入ったニードルをシュウの首に刺した。そしたらシュウ、すぐに落ち着いてまた寝た。
団長は『こいつは、世間じゃ鬼だって恐れられてるけど、本当はとても優しくていい子なんだ』って。『でも戦争だから』って言ってたーー」
僕は、これはストレスだと思った。長いこと戦場で戦い続けて、心が壊れていく。ここにいる子ども達は、よく悪夢にうなされたり、暴力的になったりしていた。以前にも言ったよね?
樹の場合は頭が痛くて痛くて、気が狂うそうだ。だから薬を使って落ち着かせないと自殺しちゃうって。でもその薬は劇薬らしく、あまり使うと薬が効かなくなるそうだ。
凄く、胸が痛くなった。
「やがて夜になって、みんなが戦闘の準備を始めたから、俺も行かせてくれって頼んだんだ。最初はみんな嫌がってたけど、弘大が『俺と来い』って言ってくれた。
戦闘の目的は、発電所の破壊だった。二つに分かれて、一つは揺動と敵兵の撃破、一つは潜入と目標の破壊任務があった。
あっちの数は三十人くらいで少なかったから、こっちは十一人で戦った。七人が敵兵をおびき出してるうちに、俺たち四人は中に潜入するって作戦だった。
あ
まずはビルが小型のスティンガーで建物の一部を壊した。そしたら敵兵が数人出てきて銃を構えたから、みんなは物陰から敵を狙い撃った。
まずは足を狙う。そこで相手が動けなくなったところで心臓とか頭を狙ってた。でもクレアは違った。クレアはスナイパーだから、一発の弾丸で相手を仕留めてた。
クレアは凄いんだ。どんなに遠くても、風を読んで狙撃するんだ」
佐野さんの言葉を思い出した。
ーー彼らは、エキスパートコンバットという、いわばプロの戦闘集団です。銃の腕は百発百中。特に狙撃手は優秀で、どこからでも標的を撃ち抜く程ですーー。
風の動きを読むなんて、経験豊富でないと出来っこないと思う。どれだけ戦場に立って戦っていたんだろう?
そんなことを思っていたけど、悠也は話を続けた。
「クレアは目がいいんだ。だって、目玉がサイボーグになってて、俺たちとは違う見え方になってるんだって。目標がどんな背格好なのかとか、目標までどれくらいの距離なのかとか、目玉からの情報を解析できるって言ってた。すげーよな、サイボーグって……。
あと、暗闇でも目標がはっきり見えたりとか、熱源を元に目標を見つけたりとか、とにかく凄いんだ。数キロ先の目標とかも見えるんだって。すげーよな、綺麗な目玉してんだぜ」
彼は、少し興奮した様子で語った。