第61話 昔話15
文字数 1,391文字
「あの時の事は覚えてる。話し合いの次の日に、俺たちは戦場に戻ったんだ。そこには他の旅団の仲間もいて、皆疲れた顔してた。
俺は頭と足に包帯を巻いて、皆に着いていった。団長から『足を引きずってまで行かなくていい』って言われたけど、直樹の分の仕返しをしたかったし、皆が戦ってるのに俺だけ指をくわえて見てるのも嫌だった。だから戦場に出た」
「……死ぬのは怖くなかった?」
悠也は小さく首を振った。
「全然」
またそよ風が吹いた。僕はその風になぜか懐かしさを感じた。冷たい風なんだけど、包まれるような雰囲気の風で、その匂いが、なんだか子どもの頃を思い出させるようなーー。とにかく、不思議な感じだった。
「俺たちは三つに別れて行動した。一つは狙撃部隊。一つは後方援護。あと一つは先鋒部隊。
俺は後方に回された。その時一緒にいたのは、ブラッドとトムとエドガーとジャックとビルとアレンとフランクとマルク。先鋒部隊の後ろからライフルを構えて、腰を低くして歩いた。壊れそうな建物の間を歩いて、隠れながら敵の背後に静かに近づいたんだ。
サイボーグ達は、一人で行動することが多かった。部隊って言うけど人数は五、六人程度で移動速度も速い。だからできるだけ息を殺して、近づいて一気に倒す。首を狙って一発撃って、それで死ねば問題ない。そこで動きが鈍くなったら首を切るんだ。連携プレーってやつ。
で、何人かを倒して前に進んでたら、あいつが後ろからやって来たんだ。
あいつは俺たちを尾けてたんだ。なんでかわかんないけど、皆、『変だな』って言ってた。
だって、普通敵を見つけたら真っ先に殺しに行くだろ?いつでも俺たちを全滅しようと思ったらできたのに、あいつは俺たちを殺さなかった。むしろ、自分の味方が死んでいくのをずっと後ろから見てたんだぜ。だから皆、『変だな』って言ってた。
で、ジャックが俺たちを集めて言ったんだ。『俺が死んだらすぐに離れろ』って」
悠也は手振りを加えて言った。きっと戦闘中では何かしらのハンドサインがあるんだろう。首を手刀で切るような仕草をしたり、拳を作って親指を下に向けたり上に向けたりした。
「あの時の戦いは凄かった。シュウはナイフとライフルで、あいつはナイフと素手で戦って、シュウのナイフが何本も折れていってた。あいつのナイフは魔法のナイフって誰かが言ってた。なんでも切れるんだ。普通ナイフで岩は切れないけど、あいつのナイフは岩を真っ二つに切ったんだ。それにあいつのナイフ長いんだ。これくらい」
と言って悠也は自分の両手で長さを表してくれた。六十センチメートルくらいだ。
「で、俺たちはずっと戦いを援護してた。サイボーグ野郎に向かって撃ったりグレネード投げたり、ジャックの弾がなくなったらマガジンを投げたりナイフ投げたり。
戦いはじめた頃は五分五分だった。でもだんだんジャックが押されていって、防戦一方になっていった。ジャックは切り傷だらけで必死なのに、あの野郎、ヘラヘラ笑ってやがったんだ。
俺たちはずっと黙っていられなくて、ジャックと一緒に戦うことにした。みんなであいつを囲んで弾を撃ち込んで、一瞬でも動きを止めたらジャックがトドメを刺せるけど、その一瞬が難しかった。どのタイミングで撃っても避けられるし、殴りかかっても痛い目にあうのは俺たちだし、でも他に方法はなかったからとにかく攻撃しまくった」
俺は頭と足に包帯を巻いて、皆に着いていった。団長から『足を引きずってまで行かなくていい』って言われたけど、直樹の分の仕返しをしたかったし、皆が戦ってるのに俺だけ指をくわえて見てるのも嫌だった。だから戦場に出た」
「……死ぬのは怖くなかった?」
悠也は小さく首を振った。
「全然」
またそよ風が吹いた。僕はその風になぜか懐かしさを感じた。冷たい風なんだけど、包まれるような雰囲気の風で、その匂いが、なんだか子どもの頃を思い出させるようなーー。とにかく、不思議な感じだった。
「俺たちは三つに別れて行動した。一つは狙撃部隊。一つは後方援護。あと一つは先鋒部隊。
俺は後方に回された。その時一緒にいたのは、ブラッドとトムとエドガーとジャックとビルとアレンとフランクとマルク。先鋒部隊の後ろからライフルを構えて、腰を低くして歩いた。壊れそうな建物の間を歩いて、隠れながら敵の背後に静かに近づいたんだ。
サイボーグ達は、一人で行動することが多かった。部隊って言うけど人数は五、六人程度で移動速度も速い。だからできるだけ息を殺して、近づいて一気に倒す。首を狙って一発撃って、それで死ねば問題ない。そこで動きが鈍くなったら首を切るんだ。連携プレーってやつ。
で、何人かを倒して前に進んでたら、あいつが後ろからやって来たんだ。
あいつは俺たちを尾けてたんだ。なんでかわかんないけど、皆、『変だな』って言ってた。
だって、普通敵を見つけたら真っ先に殺しに行くだろ?いつでも俺たちを全滅しようと思ったらできたのに、あいつは俺たちを殺さなかった。むしろ、自分の味方が死んでいくのをずっと後ろから見てたんだぜ。だから皆、『変だな』って言ってた。
で、ジャックが俺たちを集めて言ったんだ。『俺が死んだらすぐに離れろ』って」
悠也は手振りを加えて言った。きっと戦闘中では何かしらのハンドサインがあるんだろう。首を手刀で切るような仕草をしたり、拳を作って親指を下に向けたり上に向けたりした。
「あの時の戦いは凄かった。シュウはナイフとライフルで、あいつはナイフと素手で戦って、シュウのナイフが何本も折れていってた。あいつのナイフは魔法のナイフって誰かが言ってた。なんでも切れるんだ。普通ナイフで岩は切れないけど、あいつのナイフは岩を真っ二つに切ったんだ。それにあいつのナイフ長いんだ。これくらい」
と言って悠也は自分の両手で長さを表してくれた。六十センチメートルくらいだ。
「で、俺たちはずっと戦いを援護してた。サイボーグ野郎に向かって撃ったりグレネード投げたり、ジャックの弾がなくなったらマガジンを投げたりナイフ投げたり。
戦いはじめた頃は五分五分だった。でもだんだんジャックが押されていって、防戦一方になっていった。ジャックは切り傷だらけで必死なのに、あの野郎、ヘラヘラ笑ってやがったんだ。
俺たちはずっと黙っていられなくて、ジャックと一緒に戦うことにした。みんなであいつを囲んで弾を撃ち込んで、一瞬でも動きを止めたらジャックがトドメを刺せるけど、その一瞬が難しかった。どのタイミングで撃っても避けられるし、殴りかかっても痛い目にあうのは俺たちだし、でも他に方法はなかったからとにかく攻撃しまくった」