第39話 再会8

文字数 704文字

 僕が目を覚ました時、外は暗くなり始めていた。

「……寝すぎた」

体を起こして、樹が眠っているソファに目を向けると、そこに樹はいなかった。体を起こした拍子に、何かがソファから落ちた。樹の着ていたコートだった。

「樹」

部屋はとても静かだった。ソファから立ち上がり、家の中を歩いて探した。でも、樹とルーはいなかった。

僕は急に寂しくなった。一人になったあの時を思い出して、泣きそうになった。

 その時、玄関が開く音が聞こえたので、僕は走って玄関に向かった。

「た……、椿か」
「ん?私よ」

仕事を終わらせて、椿がここに来てくれた。

リビングに戻った。

「お父さんにね、巽が帰ってきたって言ったら、今晩一緒にどうだって。どうする?」
「あ、あぁ、でも樹が……。椿、樹を見てない?」
「え、いいえ、見てないけど。どうして?」

僕は今日の出来事を話した。椿は、キョトンとした顔で聞いてくれた。そして、こんな事を言った。

「そういえば、うちに来た患者さんが、『変なニ人組と、それを追いかけてる大きな犬を見かけた』って言ってたけど、それ、あなただったの?」
「あ、うん。でも犬じゃないよ。狼のルーだよ」
「狼?」
「うん。樹が連れてきたんだ」
「そ、そうなの……。それで、樹は?帰ってくるの?」
「……わからない。どこ行ったんだろう?もう外は暗いのに」

僕は、ソファの下に落ちているコートを拾って、ダイニングの椅子に掛けた。そのコートは結構重かった。何が入っているのか気になって、コートのポケットを探ってみた。

ハンドガン二丁と、弾の入ったマガジンが二つ、干し肉が三枚、お昼に見せてもらった写真と、ライター。

 そして、あの時と同じ形の、音楽プレーヤーが入っていた。
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