第38話 再会7

文字数 714文字

 お昼時になり、食事をすることにした。と言っても食材がなかったので、僕は樹を家に残して、近くのお店まで買いに行くことにした。でも、僕は料理が得意じゃないので、なんだが美味しそうな惣菜をいくつか買ってきた。

「ごめん、僕、料理苦手なんだ」
「別にいい。これは野菜炒め……、お⁈魚の塩焼きか!」
「うん、食べよう」

 僕たちは、あっという間に食べてしまった。その間、ルーが樹の足元でおねだりをしていたので、樹はルーに魚の塩焼きを分けてやった。そしてルーが美味しそうに食べては、樹は微笑んでいた。
試しに、僕の魚の塩焼きをやろうとすると、ルーはさっきと同じように匂いを嗅いで、少し唸った。

「なんで?樹のと変わらないでしょ」
「お前の施しは受けたくないんだとさ」

僕は少しショックを受けた。樹はそれを見て、声を殺して笑っていた。

 食事を終わらせ、僕たちはソファでくつろいだ。そこで、さっきの悠也の話をしてくれた。

「俺たちが悠也を見つけた時、あいつは正規軍の人質になっていた。そこで俺たちが助けたんだ。春の日だったと思う。山に桜が咲いてたから」
「お母さんは、目の前で殺されたって、言ってた」
「あぁ、俺と出会う前日に殺されたらしい。その日は近所の友達の家に保護されたけど、そこの父親は、正規軍の兵士だった」

樹はソファで横になった。黒い腕を枕にして、天井を向いた。そして欠伸をひとつした。

「次の日、俺は町周辺を制圧するのと並行して、団長の家族を保護しようとしたんだ」
「それで、悠也を助けた?」
「あぁ」

樹はまた欠伸をして、目を閉じた。

「眠い?」
「うん。少し寝る」
「うん」

 僕は樹に毛布をかけた。
そして、僕も少し眠くなったので、もうひとつのソファに横になった。
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