第79話 真骨頂

文字数 349文字

 病院の保護室に入れられた。
 保護室。
 トイレとベッドしかない部屋。
「これから……一週間はここにいてもらいます。反省しなさい」
 主治医が目覚めたおれにそう言って、出ていった。
 鍵の閉まる音。
 ……そう、ここは保護室だ。
 おれはなにをしていれられたんだっけ?
 爪を噛んで考えてみた。
 ノートとペンが欲しい。
 垂れ流されるこの心を、ノートに書くのでもなければどうしていいかわからない。
「反省……かぁ」
 反省するには、人生は短すぎる。
 だったら最初から反省なんて、してやらないぞ。
「あー、どーすっかな。とりあえずうたでも歌うか」
 テキトーな節を付けて歌ってみる。お風呂のようにエコーがかかる。
 誰も聴くことがない、檻のなかでの、このうたこそが、おれの真骨頂だ。


〈了〉
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