第68話 ロックと魔術

文字数 419文字

 ここで生きてるってことを刻みたくて、僕は今日もせっせと曲をつくる。不格好な、それはへんてこな曲の数々だけど、僕はそれで構わない。構わず、つくる。
 それこそ、寝る間も惜しんで。
 だから、人付き合いが悪いって、ひとは言う。
 でもさ、選んじゃった道なんだ、仕方ない。
 僕は今日も、ギターを〈弾きながら〉、曲をつくる。

 ……ある日、その現場を有人に見られてしまった。
「お、おまえ……」
「ち、違うんだ! おれは曲をつくるためにッ……」
 ……次の日から僕は、学校へ行けなくなった。

 まさか、魔術的な方法によって曲を〈つくって〉いるとは、誰も思わなかっただろう。その前に、信じてさえもらえない。
「T-REXのマーク・ボランが魔術に入れ込んで死んだ話とかさぁ、ロックと魔術は離せないものなんだけど、……な」
 僕は文字通り曲を〈産んでいた〉。ギターを抱きながら。
 それは誰にも知られちゃならなかったのだけれど……。


〈了〉
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