第48話 オフィス

文字数 843文字

「ねみーですよ」
「眠たいです」
 深夜のオフィス。朝まで残業は決定済み。美鈴と川原はうつろまなこでオフィス内を徘徊する。仕事になってない。上司の望月は呪文さえ唱えはじめている。OLの負の側面は、夜に開花する。
「かっぷらーめんつくるですよー」
 そう言って美鈴は給湯室へ。川原は、
「犬の霊が出るから午前一時から三時の間には給湯室に行ってはダメ!」
 と引き留める。そこで望月が、
「なぁに。私が唱えたマントーラララによって犬は既に撃破されている」
 と、誇らしげ。美鈴は、
「犬の霊じゃなくて犬を撃破しやがったんですか!?」
 とツッコミを入れるがそれには望月は、
「フフフ」
 とはぐらかす。
「ばからしいです」
 そう残して、無視。
 給湯室に行った美鈴は、
「うっひゃー! やべぇですよ。湯気の雲がもくもくでました。くそあつい水蒸気! 雲のまにまに。……ところでなんでカップ焼きそばって流し台にお湯捨てると『べこっ!』って音がしやがるんですかね」
 望月が給湯室まで「フフフ」と肩を揺らしながら来る。
「人数分……。人数分あるか焼きそば……」
「ねーですよ。にんずうぶんというよりにんじょうもん(人情物)です。語るも涙、語らぬも涙。人数分ないでーす」
「ダジャレ言ってると呪うわよ!」
 望月はぶち切れモード。ギャグがお気に召さなかったらしい。
 二人が会話している間も、川原はオフィス内を徘徊している。
「オフィス内を徘徊する私はお化けみたい。恐怖!廃人OL!」
 川原は叫んだ。と、同時に美鈴と望月が同時に、
「廃人を痴女と空目した!」
 と、叫び返した。
「痴女? いいでしょう。こっち来なさい」
 くいっくいっと指さされた方に美鈴と望月が近づいていくと、そこのデスクの上のパソコンには、乙女ゲーが起動されていた。
「痴女くなりましょう!」
「「おー!」」
 そして三人は夜食を忘れて乙女ゲーをプレイ。仕事は放棄することにした。

               〈完〉
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