第52話 チャック

文字数 672文字

 なんかまわりから見られてるなー、と思ったらズボンのチャックが全開だった。
 でも、おれがズボンのチャックが全開なのはインターネットの中でも同じだ。女性蔑視ともとれる下ネタの文章をネットに書き連ねているからだ。
「意味がわからない」……そう言われるかもしれないから補足しておこう。
 おれは不細工な男だ。
 で、そのブ男のズボンのチャックが開いている。これで喜ぶのはかなり低いレートで存在するひとたちだけで、基本、アンラッキーで、見たひとはげんなりと吐き気がしてしまうか、チャックが開いているそのだらしなさで笑ってしまうかのいずれかなのだ。
 で、ネットに匿名で書き連ねる下ネタも、チャック同様、他人を不愉快にさせるものだと思われる。つまりおれは全身下ネタ人間なのだ。
 下ネタなんてどーってことない、というのは幻想である。
 不愉快にさせまくりだ。少なくとも公共の場では。
 ……しかし、断っておくが、えろがないと生きられないというひとは多い。
 下ネタとはずれてしまう話だが、おれは頭の中がえろでいっぱいだ。
 そういう人間だっている。
 しかしそのえろ人間の大半はすまし顔で生きていて、すました表情をしながらえろを夢想するものであり、これはなぜかというと「えろ」は「悪」だからだ。婦人団体的に。
 えろいだけで叩かれ、笑われる。いや、えろい「素の自分」をさらけ出してしまうと、の話だが。
 ……チャック全開から遠いところへ来てしまった。
 まあ、ブ男のおれだって、話を膨らますことは出来るのだ。チャックの中を膨らませるように。


〈了〉
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