いつもどおりの感心 いつもどおりの不満
文字数 1,315文字
部品から目を離さずに作業しながら隼人はカトリに声をかけた。
「さっきカトリは亜衣サン、あのオレと一緒にいた女の子のことを撃ったよな」
「ウン」
「どうして撃ったんだ」
「スコープだったから良くはわからなかったけど、何かを握った手を振り上げて隼人のことを襲おうとしていたみたいだった。だから撃った」
「そうだったのか…」
作業を止めた自分の手を隼人は見つめた。
「それはいいとして… あの時オレと女の子は一緒だったからチームだったのはわかったと思うが… カトリはオレたちと同じチームのメンバーを撃っても平気なのか? ひどいことをしたと思わないのか?」
「平気って言うか、あの場合仕方ないでしょ。だから私はひどいことをしたとは思わないわ」
「えっ!?」
顔を上げて目を大きく見開いていく隼人のことをカトリは不思議そうに見た。
「でも、オリエンテーション合宿の時にオレがみんなを撃った時、どうしてみんなを撃ったか、仲間なのにって、カトリは言ったじゃないか! ひどいことしたって言ったじゃないか!」
再び機材の組み立てを手荒く始めた隼人にカトリは静かに言った。
「そう言ったけど、あの時はそう言う意味じゃない… あんな苦しい思いをハヤトだけにさせたくなかったんだ… 仕方がないことはワタシも仲間だから同じ苦しさを分け合いたかったのよ、わかるでしょ?」
カトリは隼人の前に座りなおして隼人の目を真っ直ぐに見た。
「あの言葉はハヤトへのお詫びだったの。ひどいことした、って言ったのはハヤトのことじゃない、ワタシのことなんだよ」
「そうは聞こえなかったんだ。てっきりオレは自分が責められたのかと思って…」
「ううん、そうじゃないよ… それでハヤトはあれからワタシを避けていたんだね…」
「ゴメンなカトリ。話もしないで勝手に決めつけて悪かった、謝るよ… やっぱりカトリはすごい人だな。オレにはとてもかなわないよ」
隼人がいつもどおりの感心しかしないのを見てカトリは寂しそうな顔をした。
「そんなこと… ぜんぜんないよ…」
「えっ、どうした」
カトリがつぶやいた時には隼人は機材を組み立て終わっていた。
「ハヤト、いったい何なのコレ?」
「これは高性能の集音マイクのセットだ。高感度で鋭指向のマイク、電源を兼ねたアンプ、ヘッドホンでできている。マイクの向いた方なら離れたところの音でも聞こえるんだ。まわりの雑音は拾わない」
「テレビ中継の録音スタッフみたいね」
負傷した上杉陸曹と亜衣のところには救急隊が到着していた。
「解説はこれくらいにして早く福本を捜しに行くぞ」
隼人は手にしたヘッドホンを着けようとした。
「待って、ハヤト。これは私にやらせて。こう見えてもワタシは歌や楽器が趣味なの。微妙な音の違いを聞き分ける自信があるの」
カトリが手を差し出すと隼人がヘッドホンを手渡して機材の使い方を説明した。カトリはヘルメットを脱いで髪を整えてからヘッドホンを着け、他の機材も身に付けた。
「もう香りのするものはつけていないよ」
隼人に少し微笑んでからカトリは耳の集中力を高めて、グリップの付いたマイクの向きをゆっくり動かしながら歩みを進めた。
「さっきカトリは亜衣サン、あのオレと一緒にいた女の子のことを撃ったよな」
「ウン」
「どうして撃ったんだ」
「スコープだったから良くはわからなかったけど、何かを握った手を振り上げて隼人のことを襲おうとしていたみたいだった。だから撃った」
「そうだったのか…」
作業を止めた自分の手を隼人は見つめた。
「それはいいとして… あの時オレと女の子は一緒だったからチームだったのはわかったと思うが… カトリはオレたちと同じチームのメンバーを撃っても平気なのか? ひどいことをしたと思わないのか?」
「平気って言うか、あの場合仕方ないでしょ。だから私はひどいことをしたとは思わないわ」
「えっ!?」
顔を上げて目を大きく見開いていく隼人のことをカトリは不思議そうに見た。
「でも、オリエンテーション合宿の時にオレがみんなを撃った時、どうしてみんなを撃ったか、仲間なのにって、カトリは言ったじゃないか! ひどいことしたって言ったじゃないか!」
再び機材の組み立てを手荒く始めた隼人にカトリは静かに言った。
「そう言ったけど、あの時はそう言う意味じゃない… あんな苦しい思いをハヤトだけにさせたくなかったんだ… 仕方がないことはワタシも仲間だから同じ苦しさを分け合いたかったのよ、わかるでしょ?」
カトリは隼人の前に座りなおして隼人の目を真っ直ぐに見た。
「あの言葉はハヤトへのお詫びだったの。ひどいことした、って言ったのはハヤトのことじゃない、ワタシのことなんだよ」
「そうは聞こえなかったんだ。てっきりオレは自分が責められたのかと思って…」
「ううん、そうじゃないよ… それでハヤトはあれからワタシを避けていたんだね…」
「ゴメンなカトリ。話もしないで勝手に決めつけて悪かった、謝るよ… やっぱりカトリはすごい人だな。オレにはとてもかなわないよ」
隼人がいつもどおりの感心しかしないのを見てカトリは寂しそうな顔をした。
「そんなこと… ぜんぜんないよ…」
「えっ、どうした」
カトリがつぶやいた時には隼人は機材を組み立て終わっていた。
「ハヤト、いったい何なのコレ?」
「これは高性能の集音マイクのセットだ。高感度で鋭指向のマイク、電源を兼ねたアンプ、ヘッドホンでできている。マイクの向いた方なら離れたところの音でも聞こえるんだ。まわりの雑音は拾わない」
「テレビ中継の録音スタッフみたいね」
負傷した上杉陸曹と亜衣のところには救急隊が到着していた。
「解説はこれくらいにして早く福本を捜しに行くぞ」
隼人は手にしたヘッドホンを着けようとした。
「待って、ハヤト。これは私にやらせて。こう見えてもワタシは歌や楽器が趣味なの。微妙な音の違いを聞き分ける自信があるの」
カトリが手を差し出すと隼人がヘッドホンを手渡して機材の使い方を説明した。カトリはヘルメットを脱いで髪を整えてからヘッドホンを着け、他の機材も身に付けた。
「もう香りのするものはつけていないよ」
隼人に少し微笑んでからカトリは耳の集中力を高めて、グリップの付いたマイクの向きをゆっくり動かしながら歩みを進めた。