初めの出来事
文字数 1,773文字
“今日は、福本のヤツ休みなのか… カトリも土曜は用事があるって言っていて休んでるし… それに志織までもが休み… 明日の打ち上げ大丈夫なのか?”
ピンポンパ(ンポン…)
朝のホームルーム中、隼人が苦労して調整した打ち上げの開催を危ぶんでいると、突然静けさを破る途切れた呼び出し音が鳴り響いた。
「1-Bの赤城隼人、至急保健室に来なさい。繰り返します、1-Bの赤城隼人、至急保健室に来なさい」
緊急放送で校内に隼人の名前が響き渡っていた。呼び出し音が途切れが事態の切迫さを物語っていることを隼人は感じ取った。
「赤城、行きます」
響子先生に告げると、隼人は保健室へ駆けて行った。
「いったい何があったんですか! んっ!?」
隼人は保健室に飛び込んだ時に見慣れない二人連れの姿を見た。
「ひ弱そうなこの男が私たちの協力者でありますか?」
グレーの迷彩服を着た女子の方を不思議そうに見る隼人に更なる言葉が投げかけられた。
「この迷彩は都市行動用に空自さんから貸与して頂いている。私たちは正真正銘の陸自隊員だ。変な目で見るな」
迷彩女子が突き出した迷彩服には『〇〇刑務所で心を込めて作りました』というタグが付いていた。それを凝視する隼人に向かって、女子は今度は顔を真っ赤にして説明した。
「お借りしているものだから勝手に切ることができないのよ!」
「柏木、いいかげんにしろ。突然の訪問でお騒がせして申し訳ありません、赤城曹長。私どもは陸上自衛隊学校から参りました。自分は一等陸曹の上杉であります」
「赤城君、お二人とも福本君のお知り合いなの。上杉美奈さんは担当教官で柏木亜衣さんは同級生なのよ」
隼人が振り返ると、大人の女性が敬礼していた。髪型はボブにしていて、上品な薄化粧でアイドルの女の子がそのまま大きくなった感じの女性だった。女子の方はショートヘアーでかわいらしいが、勝気で負けず嫌いな性格が顔に表れているスポーツ少女だった。
「どうしてこの二人がココにいるんですか?」
隼人の質問は困り顔のヨーコ先生にダメ押ししたようだった。
「福本君が拉致されたのよ」
「エッ! 福本が拉致されたって!? どうしてまた?」
「もともと福本君はあなたとカトリの陸自からのサポートスタッフだったの。ある時たまたまあるスマホを保管することになってね。そのスマホからバベルに関する情報が得られたから、その持ち主を監視していたのよ」
「たまたま保管することになったって言うより好きな人が置き忘れた物を黙って持って帰ってきちゃった、って言うのが真相らしいわよ」
「柏木、口を慎みなさい」
上杉陸曹のたしなめに亜衣の体が緊張する。
「あんなにビビリだったのに? 人選を間違っていたんじゃないのか?」
「アナタの目は節穴のようね。陽二は本校では技術も知識も体力も一番なのよ。ちなみに二番はこの私」
亜衣はドヤ顔で隼人に解説を続ける。
「銃だって東アジアにある銃なら何でも陽二は体の一部のように扱うし。爪を隠す鷹タイプなのよ」
廃ホテルでのピンチの時に陽二がAK47を手慣れた様子で扱っていたことを隼人は思い出した。亜衣の挑発はスルーして隼人はもう一度聞いた。
「拉致されたかどうかは決められないだろ」
「学園には『家族』から欠席の連絡があったとのことだけど、福本は私たちの管理下にあるから『家族』からの連絡なんてあり得ないのです。それに」
「それに?」
「私たちは万一のために自分の健康上のデータを入れたチップを手のひらに埋め込んでいるのですが、その位置情報が福本の個別宿舎から別の場所へ昨夜のうちに移動していたのです」
「なぜすぐに追っかけなかったんですか、先生?」
責めるような口調の亜衣の声が耳障りだった。
「拉致の場合、殺し目的でない限り人質がすぐに殺される危険は少ない。福本は知っていることの聞き出しのために連れ去られた可能性が高い」
亜衣の刺すような視線を感じながら隼人は話を続ける。
「監禁のされた場所が固定してからの方が救出には効率がいい。地図データや付近の建物やインフラの図面データを用意して作戦をたてられる」
ドンッ!
上杉陸曹は黙って屋外現場仕様のゴツいパソコンを取り出してデータを映し出した。
「今の発信源はバベルに関係する会社があるビルよ」
ピンポンパ(ンポン…)
朝のホームルーム中、隼人が苦労して調整した打ち上げの開催を危ぶんでいると、突然静けさを破る途切れた呼び出し音が鳴り響いた。
「1-Bの赤城隼人、至急保健室に来なさい。繰り返します、1-Bの赤城隼人、至急保健室に来なさい」
緊急放送で校内に隼人の名前が響き渡っていた。呼び出し音が途切れが事態の切迫さを物語っていることを隼人は感じ取った。
「赤城、行きます」
響子先生に告げると、隼人は保健室へ駆けて行った。
「いったい何があったんですか! んっ!?」
隼人は保健室に飛び込んだ時に見慣れない二人連れの姿を見た。
「ひ弱そうなこの男が私たちの協力者でありますか?」
グレーの迷彩服を着た女子の方を不思議そうに見る隼人に更なる言葉が投げかけられた。
「この迷彩は都市行動用に空自さんから貸与して頂いている。私たちは正真正銘の陸自隊員だ。変な目で見るな」
迷彩女子が突き出した迷彩服には『〇〇刑務所で心を込めて作りました』というタグが付いていた。それを凝視する隼人に向かって、女子は今度は顔を真っ赤にして説明した。
「お借りしているものだから勝手に切ることができないのよ!」
「柏木、いいかげんにしろ。突然の訪問でお騒がせして申し訳ありません、赤城曹長。私どもは陸上自衛隊学校から参りました。自分は一等陸曹の上杉であります」
「赤城君、お二人とも福本君のお知り合いなの。上杉美奈さんは担当教官で柏木亜衣さんは同級生なのよ」
隼人が振り返ると、大人の女性が敬礼していた。髪型はボブにしていて、上品な薄化粧でアイドルの女の子がそのまま大きくなった感じの女性だった。女子の方はショートヘアーでかわいらしいが、勝気で負けず嫌いな性格が顔に表れているスポーツ少女だった。
「どうしてこの二人がココにいるんですか?」
隼人の質問は困り顔のヨーコ先生にダメ押ししたようだった。
「福本君が拉致されたのよ」
「エッ! 福本が拉致されたって!? どうしてまた?」
「もともと福本君はあなたとカトリの陸自からのサポートスタッフだったの。ある時たまたまあるスマホを保管することになってね。そのスマホからバベルに関する情報が得られたから、その持ち主を監視していたのよ」
「たまたま保管することになったって言うより好きな人が置き忘れた物を黙って持って帰ってきちゃった、って言うのが真相らしいわよ」
「柏木、口を慎みなさい」
上杉陸曹のたしなめに亜衣の体が緊張する。
「あんなにビビリだったのに? 人選を間違っていたんじゃないのか?」
「アナタの目は節穴のようね。陽二は本校では技術も知識も体力も一番なのよ。ちなみに二番はこの私」
亜衣はドヤ顔で隼人に解説を続ける。
「銃だって東アジアにある銃なら何でも陽二は体の一部のように扱うし。爪を隠す鷹タイプなのよ」
廃ホテルでのピンチの時に陽二がAK47を手慣れた様子で扱っていたことを隼人は思い出した。亜衣の挑発はスルーして隼人はもう一度聞いた。
「拉致されたかどうかは決められないだろ」
「学園には『家族』から欠席の連絡があったとのことだけど、福本は私たちの管理下にあるから『家族』からの連絡なんてあり得ないのです。それに」
「それに?」
「私たちは万一のために自分の健康上のデータを入れたチップを手のひらに埋め込んでいるのですが、その位置情報が福本の個別宿舎から別の場所へ昨夜のうちに移動していたのです」
「なぜすぐに追っかけなかったんですか、先生?」
責めるような口調の亜衣の声が耳障りだった。
「拉致の場合、殺し目的でない限り人質がすぐに殺される危険は少ない。福本は知っていることの聞き出しのために連れ去られた可能性が高い」
亜衣の刺すような視線を感じながら隼人は話を続ける。
「監禁のされた場所が固定してからの方が救出には効率がいい。地図データや付近の建物やインフラの図面データを用意して作戦をたてられる」
ドンッ!
上杉陸曹は黙って屋外現場仕様のゴツいパソコンを取り出してデータを映し出した。
「今の発信源はバベルに関係する会社があるビルよ」