ホットなホットライン
文字数 1,782文字
「朝の響子先生、本当に怖かったよね… 日頃の先生を見ていると昔はヤンチャだったってウワサはあり得ないと思ってたけど、わたし的には俄然アリになってきたわ…」
昼休みに隼人の席にやってきたエマが一方的にまくし立ててきた。
「ところでさ、明日の打ち上げの話のいきさつを詳しく教えてちょうだいよ、赤城! 昼休みになってすぐに志織は具合が悪いって帰っちゃったし」
隼人は教室を出て行く時の志織の様子を思い出していた。諦めたような悟りきったような顔をした志織が静かに歩いて行く姿は亡霊を思い起こさせた。座っている席から見上げたその顔は何か決意したようでもあり寂しそうでもあった。
「わたしは朝からずっと今まで聞きたいのを我慢していたんだからさ。カトリは急いでお昼ごはん食べに家へ行っちゃったし、剛介と福本は朝の調子のままだし… 赤城以外に話を聞ける人がいないんだよね。ねえ、だから教えてよ」
”勝手なことばかり言いやがって…”
隼人は打ち上げの企画や準備といった面倒なことから逃げていたエマに思うところがあった。しかし、自分の視点からの話であることを断ってから今回のトラブルについての話をエマに伝えた。もちろん、志織の自分への打ち明け話については一切触れなかった。
「そうなんだ… 剛介と福本の用事が志織の都合とうまく合わないんだね… どっちが悪いって訳じゃないんだ…」
「それで竜崎になんとか日曜日を空けてくれるように東条とカトリが次々に頼んでくれたんだけど…」
「ダメだったのね… そうなると… 本当に志織の方の都合を明日に合わせられないの?」
「ああ、絶対に無理だ」
“即答で断言するなんて、赤城は志織の事情を知ってるって訳ね… 赤城の方から何か聞きだせないかな…”
「志織が都合を変えられない理由は何なの? それが分かればどうにかできるかも知れないし… ねえ、赤城ったら」
甘えるようにしてエマは隼人の顔をのぞき込んできだ。
「そんなこと知らないよ」
突き放つように返事をした隼人だったが、すこし自分でもキツかったと思って話し方を柔らかく変えた。
「仮にそれに知っていたとしても、人の秘密は明かすものじゃないだろ?」
“友だち同士の仲であんまりしつこく食い下がってもお互いに気分を害するだけだよね”
「そうだよね… それじゃ、しょうがないね」
あっさり引き下がったエマの方は隼人の言い方を全然気にしていないようだった。
「じゃあ、赤城はこれからどうするのさ?」
「それが決められたら苦労しないよ」
困り果てた顔の隼人は天を仰ぐような格好をした。
~♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪~
その時、隼人のスマホに志織からのメールの着信音が鳴った。隼人は急いでスマホを取り出し画面を見た。
“私のスマホには着信がない… グループ用のチャットじゃないわ…”
「ねえ、誰からなの? もしかして志織?」
エマの問いかけが聞こえないかのように隼人の目は画面にクギ付けになっていた。
「ねえねえ、早く教えてよ!」
「少し黙っててくれないか…」
繰り返し画面の文書を読み返していた隼人はエマの声をうるさそうにした。
「東条からメールで… 土曜日で… 大丈夫かもしれない、ってさ…」
「ホットなホットラインね!」
とぎれとぎれ話す隼人の言葉を聞いてエマは無邪気に喜んだ。
「それで… いいバイ… いや、何でもない」
「エッ!? バイなに? バイト?」
スマホの画面を声を出して読み上げるのをあわてて止めた隼人にエマがツッこんだ。
「いや、ただの読み間違えだ… 本当に何でもないんだ… さっきも言ったけど、明日の土曜日でも大丈夫らしい… もうそれで十分だろ?」
なんとかエマへ返事をしている間に、隼人には言いようのない何か悪い予感がしてきた。先程の教室を出て行く時の志織のただならぬ様相が頭によぎった。
“とにかく急いで東条へ連絡しないと!”
「オレ、ちょっと外言ってくるわ!」
「え~~っ! もっとメールのこと教えてよ~っ!」
ほほを膨らませて不満そうな顔をしたエマをその場に置き去りにして、隼人は後ろ扉の方へ向かった。
昼休みに隼人の席にやってきたエマが一方的にまくし立ててきた。
「ところでさ、明日の打ち上げの話のいきさつを詳しく教えてちょうだいよ、赤城! 昼休みになってすぐに志織は具合が悪いって帰っちゃったし」
隼人は教室を出て行く時の志織の様子を思い出していた。諦めたような悟りきったような顔をした志織が静かに歩いて行く姿は亡霊を思い起こさせた。座っている席から見上げたその顔は何か決意したようでもあり寂しそうでもあった。
「わたしは朝からずっと今まで聞きたいのを我慢していたんだからさ。カトリは急いでお昼ごはん食べに家へ行っちゃったし、剛介と福本は朝の調子のままだし… 赤城以外に話を聞ける人がいないんだよね。ねえ、だから教えてよ」
”勝手なことばかり言いやがって…”
隼人は打ち上げの企画や準備といった面倒なことから逃げていたエマに思うところがあった。しかし、自分の視点からの話であることを断ってから今回のトラブルについての話をエマに伝えた。もちろん、志織の自分への打ち明け話については一切触れなかった。
「そうなんだ… 剛介と福本の用事が志織の都合とうまく合わないんだね… どっちが悪いって訳じゃないんだ…」
「それで竜崎になんとか日曜日を空けてくれるように東条とカトリが次々に頼んでくれたんだけど…」
「ダメだったのね… そうなると… 本当に志織の方の都合を明日に合わせられないの?」
「ああ、絶対に無理だ」
“即答で断言するなんて、赤城は志織の事情を知ってるって訳ね… 赤城の方から何か聞きだせないかな…”
「志織が都合を変えられない理由は何なの? それが分かればどうにかできるかも知れないし… ねえ、赤城ったら」
甘えるようにしてエマは隼人の顔をのぞき込んできだ。
「そんなこと知らないよ」
突き放つように返事をした隼人だったが、すこし自分でもキツかったと思って話し方を柔らかく変えた。
「仮にそれに知っていたとしても、人の秘密は明かすものじゃないだろ?」
“友だち同士の仲であんまりしつこく食い下がってもお互いに気分を害するだけだよね”
「そうだよね… それじゃ、しょうがないね」
あっさり引き下がったエマの方は隼人の言い方を全然気にしていないようだった。
「じゃあ、赤城はこれからどうするのさ?」
「それが決められたら苦労しないよ」
困り果てた顔の隼人は天を仰ぐような格好をした。
~♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪~
その時、隼人のスマホに志織からのメールの着信音が鳴った。隼人は急いでスマホを取り出し画面を見た。
“私のスマホには着信がない… グループ用のチャットじゃないわ…”
「ねえ、誰からなの? もしかして志織?」
エマの問いかけが聞こえないかのように隼人の目は画面にクギ付けになっていた。
「ねえねえ、早く教えてよ!」
「少し黙っててくれないか…」
繰り返し画面の文書を読み返していた隼人はエマの声をうるさそうにした。
「東条からメールで… 土曜日で… 大丈夫かもしれない、ってさ…」
「ホットなホットラインね!」
とぎれとぎれ話す隼人の言葉を聞いてエマは無邪気に喜んだ。
「それで… いいバイ… いや、何でもない」
「エッ!? バイなに? バイト?」
スマホの画面を声を出して読み上げるのをあわてて止めた隼人にエマがツッこんだ。
「いや、ただの読み間違えだ… 本当に何でもないんだ… さっきも言ったけど、明日の土曜日でも大丈夫らしい… もうそれで十分だろ?」
なんとかエマへ返事をしている間に、隼人には言いようのない何か悪い予感がしてきた。先程の教室を出て行く時の志織のただならぬ様相が頭によぎった。
“とにかく急いで東条へ連絡しないと!”
「オレ、ちょっと外言ってくるわ!」
「え~~っ! もっとメールのこと教えてよ~っ!」
ほほを膨らませて不満そうな顔をしたエマをその場に置き去りにして、隼人は後ろ扉の方へ向かった。