初対面の印象
文字数 2,066文字
「鈴さん… 本気いや正気か?」
信じられないことを耳にして目を見開く剛介に対して鈴は視線をそらさずにうなずいた。
「ようこそB組の皆さん。時間がかかったのはしょうがないとは思いますが」
かかとをつけたまま神経質そうにつま先で繰り返し地面を踏みながら、学校ジャージ姿で腕組みをしている杏奈がケンのある物言いをした。
「ところで、ナゼお呼びじゃない女子が一人混ざっているのかしら?」
“この女、何様のつもりだ?”
杏奈の一言は剛介に不快感を起こさせ、エマには先程までとは違う目を細めた冷やかな笑みを浮かべさせた。
「ああ、このコは僕たちと一緒にB組のオリエンテーション合宿の役員やってるエマっていうんだ。実は
「『実は』じゃなくて部外者はジャマなんですけど。そうだよね鈴、美羽」
“もう少し杏奈の言い方も何とかならないかな…”
不安な思いを顔に出したまま美羽は黙って鈴の表情をうかがった。
「ウチは別にジャマじゃない」
「鈴、ジャマじゃないって言っても
「もうエエよ、杏奈。誰がいてもウチのやることは一つだけだから」
“このアンナって子、今までと全然雰囲気が違う… いったいどうしたんだろう?”
良くない雰囲気の中、居心地悪そうな陽二はごくあっさりとB組メンバーの紹介をした。
「あーE組の皆さん、僕は福本陽二で、この女子は江間絵馬、そしてこっちのゴツいのは竜崎剛介。じゃあ二人とも自分のプロフィールを
「エマさんのは結構よ。竜崎さんだけお願い」
一生懸命にその場を取り成そうとするたびに、上から目線の杏奈に腰を折られて陽二はいたたまれない気分になったが剛介の方を見て目で促した。
“えっ? いきなり? 俺の自己紹介か?”
成り行きとはいえ剛介もいつまでも不機嫌になっている訳にいかなくかった。
「えー、俺は竜崎剛介。えーと…」
「…」「…」「…」
「水主(カコ)中学出身で… 部活は野球部をやっていた… 今は部活には入っておらん」
「…」「…」「…」
やり慣れていない自己紹介を何とか進めようする剛介だったが、言葉に詰まるごとに妙な雰囲気を感じた。そう、自分の発言をE組女子たちがガチに一言残らず聞き逃さないようにして、自分たちは黙っていることに気が付いた。
“ワザワザ俺を呼び出しておいて自分らは一言もしゃべらんとは、どういうつもりなんだ?”
3人の女子の方に不審の目をやると一生懸命に自分のことを見る鈴のところで目がとまった。そこで、せっかくの美人と話すチャンスをみすみす失うのが惜しくなった剛介は、相手に話し合いをする気があるかを捨て身を覚悟で確かめてみることにした。
“今後のこともあるから悪印象を与えんようにせんとな… しかし俺は福本のように口が達者じゃない…”
不器用な剛介はストレートではなく変化球でいくことを選んだ。
「カコにはカコ中で野球をやっておったんだがな、ハハ…」
「…」「…」「…」
やらかしに頭を抱える陽二とエマの様子を見るまでもなく、自分でもスベッたと思うギャグにもE組女子の態度は不変だった。
「恥を忍んだボケにもツッコミもないとは、やり切れん… わざわざ人を呼び出しておいて、いったいどうしようっていうんだ?」
結局、沈黙を続けるE組女子たちを見渡して剛介は逆切れ気味に問いただしてしまった。
「俺はただの観察の対象か? そんなんじゃ、どんなに見た目が良くても話に付き合えんな… これで失礼する」
「ちょっと待ってください!」
ひとり血相を変えた鈴があわてて返事をした。
“やっと動いた… ここは鈴から動かないと始まらないのよ”
杏奈がほくそ笑んだように美羽には見えた。
「始めまして竜崎さん。ウチは香月 鈴といいます。いま初めてお合いするから、ウチはとにかく竜崎さんがどんな人なのかを知りたくて… お話しを聞くことだけに集中していたんです。どうもすみませんでした」
鈴は真剣な表情で話し始めた。
「では、ウチの自己紹介をします。己斐が丘中出身で、中学では応援部に入ってました。高校ではクラブ勧誘の時に見て素敵だった競技ダンス部に入っています。ウチも初心者だけど、良かったら竜崎さんも一緒にクラブに入りませんか?」
鈴は笑顔で剛介に近寄って手をとった。
“出た、鈴の天然! 無意識か計算か分からない職人の技が出るなんて調子上がってきたんじゃない!?”
これから面白いものが見られそうな様子に杏奈の期待はいやがうえにも高くなった。
が、突然の鈴の行動に剛介は驚いて自分の手を引き戻してしまった。すると鈴も恥ずかしそうに手を引き戻した。
「ウチってこうなんです… 夢中になると周りが見えなくなって…」
“見た目はクールなのにけっこうお茶目。いいコかもね”
エマは鈴のギャップに好意を抱いていた。
「てっきり俺はからかわれているのかと思ってしまってな… えーっと、香月さん、突然怒ってしまった俺が悪かった」
剛介は素直に鈴に謝ると頭を下げた。それを見た陽二とエマは竹の花が咲いているのを見たかのように驚いた。
信じられないことを耳にして目を見開く剛介に対して鈴は視線をそらさずにうなずいた。
「ようこそB組の皆さん。時間がかかったのはしょうがないとは思いますが」
かかとをつけたまま神経質そうにつま先で繰り返し地面を踏みながら、学校ジャージ姿で腕組みをしている杏奈がケンのある物言いをした。
「ところで、ナゼお呼びじゃない女子が一人混ざっているのかしら?」
“この女、何様のつもりだ?”
杏奈の一言は剛介に不快感を起こさせ、エマには先程までとは違う目を細めた冷やかな笑みを浮かべさせた。
「ああ、このコは僕たちと一緒にB組のオリエンテーション合宿の役員やってるエマっていうんだ。実は
「『実は』じゃなくて部外者はジャマなんですけど。そうだよね鈴、美羽」
“もう少し杏奈の言い方も何とかならないかな…”
不安な思いを顔に出したまま美羽は黙って鈴の表情をうかがった。
「ウチは別にジャマじゃない」
「鈴、ジャマじゃないって言っても
「もうエエよ、杏奈。誰がいてもウチのやることは一つだけだから」
“このアンナって子、今までと全然雰囲気が違う… いったいどうしたんだろう?”
良くない雰囲気の中、居心地悪そうな陽二はごくあっさりとB組メンバーの紹介をした。
「あーE組の皆さん、僕は福本陽二で、この女子は江間絵馬、そしてこっちのゴツいのは竜崎剛介。じゃあ二人とも自分のプロフィールを
「エマさんのは結構よ。竜崎さんだけお願い」
一生懸命にその場を取り成そうとするたびに、上から目線の杏奈に腰を折られて陽二はいたたまれない気分になったが剛介の方を見て目で促した。
“えっ? いきなり? 俺の自己紹介か?”
成り行きとはいえ剛介もいつまでも不機嫌になっている訳にいかなくかった。
「えー、俺は竜崎剛介。えーと…」
「…」「…」「…」
「水主(カコ)中学出身で… 部活は野球部をやっていた… 今は部活には入っておらん」
「…」「…」「…」
やり慣れていない自己紹介を何とか進めようする剛介だったが、言葉に詰まるごとに妙な雰囲気を感じた。そう、自分の発言をE組女子たちがガチに一言残らず聞き逃さないようにして、自分たちは黙っていることに気が付いた。
“ワザワザ俺を呼び出しておいて自分らは一言もしゃべらんとは、どういうつもりなんだ?”
3人の女子の方に不審の目をやると一生懸命に自分のことを見る鈴のところで目がとまった。そこで、せっかくの美人と話すチャンスをみすみす失うのが惜しくなった剛介は、相手に話し合いをする気があるかを捨て身を覚悟で確かめてみることにした。
“今後のこともあるから悪印象を与えんようにせんとな… しかし俺は福本のように口が達者じゃない…”
不器用な剛介はストレートではなく変化球でいくことを選んだ。
「カコにはカコ中で野球をやっておったんだがな、ハハ…」
「…」「…」「…」
やらかしに頭を抱える陽二とエマの様子を見るまでもなく、自分でもスベッたと思うギャグにもE組女子の態度は不変だった。
「恥を忍んだボケにもツッコミもないとは、やり切れん… わざわざ人を呼び出しておいて、いったいどうしようっていうんだ?」
結局、沈黙を続けるE組女子たちを見渡して剛介は逆切れ気味に問いただしてしまった。
「俺はただの観察の対象か? そんなんじゃ、どんなに見た目が良くても話に付き合えんな… これで失礼する」
「ちょっと待ってください!」
ひとり血相を変えた鈴があわてて返事をした。
“やっと動いた… ここは鈴から動かないと始まらないのよ”
杏奈がほくそ笑んだように美羽には見えた。
「始めまして竜崎さん。ウチは香月 鈴といいます。いま初めてお合いするから、ウチはとにかく竜崎さんがどんな人なのかを知りたくて… お話しを聞くことだけに集中していたんです。どうもすみませんでした」
鈴は真剣な表情で話し始めた。
「では、ウチの自己紹介をします。己斐が丘中出身で、中学では応援部に入ってました。高校ではクラブ勧誘の時に見て素敵だった競技ダンス部に入っています。ウチも初心者だけど、良かったら竜崎さんも一緒にクラブに入りませんか?」
鈴は笑顔で剛介に近寄って手をとった。
“出た、鈴の天然! 無意識か計算か分からない職人の技が出るなんて調子上がってきたんじゃない!?”
これから面白いものが見られそうな様子に杏奈の期待はいやがうえにも高くなった。
が、突然の鈴の行動に剛介は驚いて自分の手を引き戻してしまった。すると鈴も恥ずかしそうに手を引き戻した。
「ウチってこうなんです… 夢中になると周りが見えなくなって…」
“見た目はクールなのにけっこうお茶目。いいコかもね”
エマは鈴のギャップに好意を抱いていた。
「てっきり俺はからかわれているのかと思ってしまってな… えーっと、香月さん、突然怒ってしまった俺が悪かった」
剛介は素直に鈴に謝ると頭を下げた。それを見た陽二とエマは竹の花が咲いているのを見たかのように驚いた。