同行の条件
文字数 1,626文字
隼人、ヨーコ先生、上杉陸曹の三人は奪還に必要な装備や携行品の選定に入った。それらはここの保健室の物品庫にあるもので何とか間に合いそうだ。
「エントリーツールはどうする?」
「ショットガンをブリーチャーにするといいわ」
「ショットガンだと銃声が…」
「試作品だけどこれを使って」
ヨーコ先生は隼人に木製グリップから鉄パイプが生えたような不恰好なポンプアクションのレミントンを手渡した。
「コイツの弾丸は?」
「もちろん実弾よ。しかも鉛弾じゃなくて鋼鉄球の7ボール。サプレッサーが銃身に付くことによるパワーダウンを補うためにね。この銃は人には向けないでよ」
「ショットガンじゃ陸自の人は使えないな。俺が使うしかないか…」
「それは自分がやります。私も米軍との共同オペの際にショットガンを使って突入の訓練をしたことがあります」
上杉陸曹が名乗り出た。
「それに… 弾を撃って来ない扉なら自分でも撃破できますが、対人の銃撃戦の方は残念ながら曹長にお任せするしかありません」
打ち合わせに口出しできない亜衣は隼人が誉められているのを見て悔しそうに顔を歪めている。上杉陸曹はパソコンに目標のビルの設計図面を映し出す。
「今回のビルの図面でいくと… ほとんどの扉が鍵の受け口をドアノブの斜め上から打つことになります」
「アンリーサルでないから取り扱いには十分に気を付けてください」
真顔のヨーコ先生に美奈は真剣な表情で答える。
「ええ、自分は人質の救出に向かうのであって交戦に行くのではありません。その点については十分に注意します」
それから三人はできるだけ手短かに陽二の奪還計画をたてることに。時間がかかるほど陽二が受けているかも知れない苦痛、すなわち拷問の時間が長くなるおそれがあるからだ。
「外の非常階段を使っての移動は建物内の人間には見つからないけど、昼間は周囲に目立って騒ぎになると危険だわ。となると、建物内部を移動するしか方法がないわね」
「なら、囮が入口にいる警備員の気を引いているうちに救出隊員が建物内に入る」
「建物内では人に出合わないようにするのがいいですよね。誰がいつ乗り降りするか分からないエレベーターは使わないことにしましょう」
上杉陸曹がパソコン内の画面をいくつも開いたり設計図面をスクロールさせながら話し続ける。
「奥に建物内を縦断する階段室があります。ここを徒歩で移動しましょう」
「徒歩で移動って、荷物が重いのに… あなたたちには相当の負荷がかかるわよ…」
「自分なら平気です。ご心配は無用です」
言い切る上杉陸曹のことを隼人は大したものだと思った。
「自分が福本のことをバイオロギングします。居場所を見つけしだい救出と帰還を図りましょう」
「その間、俺は途中の全ての障害の処理をする」
「あの、皆さん… お話しに一段落ついたところでおたずねしますが、私は連れていってもらえるのでしょうか?」
打ち合わせの終わった三人の顔を見回しながらおずおずと亜衣がたずねた。
「柏木さんへの危険が大きいから私は賛成しない。赤城君はどう?」
「亜衣サンだっけ? 彼女に確かにかなりの危険が伴う」
隼人は目をつむりながら沈黙してから言葉を続けた。
「ただ、今はカトリもいない」
「ええ、東富士に行っている」
“ヨーコ先生は行き先を知っていたのか! カトリは何でワザワザそんなトコまで… それは置いといて”
「人手が不足しているのは事実だ。俺と上杉陸曹の二人だけでは救出作戦は無理だろう。あくまでも亜衣サンがサポート役に徹しては絶対に戦闘には参加しない、と誓えるのなら俺は賛成する」
「絶対に戦闘には参加しません! 危険な場所には近づきません! 一生懸命サポートします! ワタクシ柏木亜衣は誓います!」
「聖エルモの皆さんもそう言ってくれています。今の誓いを決して忘れないように。いいですね、柏木」
亜衣は引き締まった顔つきで三人へ敬礼した。
「エントリーツールはどうする?」
「ショットガンをブリーチャーにするといいわ」
「ショットガンだと銃声が…」
「試作品だけどこれを使って」
ヨーコ先生は隼人に木製グリップから鉄パイプが生えたような不恰好なポンプアクションのレミントンを手渡した。
「コイツの弾丸は?」
「もちろん実弾よ。しかも鉛弾じゃなくて鋼鉄球の7ボール。サプレッサーが銃身に付くことによるパワーダウンを補うためにね。この銃は人には向けないでよ」
「ショットガンじゃ陸自の人は使えないな。俺が使うしかないか…」
「それは自分がやります。私も米軍との共同オペの際にショットガンを使って突入の訓練をしたことがあります」
上杉陸曹が名乗り出た。
「それに… 弾を撃って来ない扉なら自分でも撃破できますが、対人の銃撃戦の方は残念ながら曹長にお任せするしかありません」
打ち合わせに口出しできない亜衣は隼人が誉められているのを見て悔しそうに顔を歪めている。上杉陸曹はパソコンに目標のビルの設計図面を映し出す。
「今回のビルの図面でいくと… ほとんどの扉が鍵の受け口をドアノブの斜め上から打つことになります」
「アンリーサルでないから取り扱いには十分に気を付けてください」
真顔のヨーコ先生に美奈は真剣な表情で答える。
「ええ、自分は人質の救出に向かうのであって交戦に行くのではありません。その点については十分に注意します」
それから三人はできるだけ手短かに陽二の奪還計画をたてることに。時間がかかるほど陽二が受けているかも知れない苦痛、すなわち拷問の時間が長くなるおそれがあるからだ。
「外の非常階段を使っての移動は建物内の人間には見つからないけど、昼間は周囲に目立って騒ぎになると危険だわ。となると、建物内部を移動するしか方法がないわね」
「なら、囮が入口にいる警備員の気を引いているうちに救出隊員が建物内に入る」
「建物内では人に出合わないようにするのがいいですよね。誰がいつ乗り降りするか分からないエレベーターは使わないことにしましょう」
上杉陸曹がパソコン内の画面をいくつも開いたり設計図面をスクロールさせながら話し続ける。
「奥に建物内を縦断する階段室があります。ここを徒歩で移動しましょう」
「徒歩で移動って、荷物が重いのに… あなたたちには相当の負荷がかかるわよ…」
「自分なら平気です。ご心配は無用です」
言い切る上杉陸曹のことを隼人は大したものだと思った。
「自分が福本のことをバイオロギングします。居場所を見つけしだい救出と帰還を図りましょう」
「その間、俺は途中の全ての障害の処理をする」
「あの、皆さん… お話しに一段落ついたところでおたずねしますが、私は連れていってもらえるのでしょうか?」
打ち合わせの終わった三人の顔を見回しながらおずおずと亜衣がたずねた。
「柏木さんへの危険が大きいから私は賛成しない。赤城君はどう?」
「亜衣サンだっけ? 彼女に確かにかなりの危険が伴う」
隼人は目をつむりながら沈黙してから言葉を続けた。
「ただ、今はカトリもいない」
「ええ、東富士に行っている」
“ヨーコ先生は行き先を知っていたのか! カトリは何でワザワザそんなトコまで… それは置いといて”
「人手が不足しているのは事実だ。俺と上杉陸曹の二人だけでは救出作戦は無理だろう。あくまでも亜衣サンがサポート役に徹しては絶対に戦闘には参加しない、と誓えるのなら俺は賛成する」
「絶対に戦闘には参加しません! 危険な場所には近づきません! 一生懸命サポートします! ワタクシ柏木亜衣は誓います!」
「聖エルモの皆さんもそう言ってくれています。今の誓いを決して忘れないように。いいですね、柏木」
亜衣は引き締まった顔つきで三人へ敬礼した。