予想外のことばかり
文字数 2,023文字
『家に帰ってから打上げのモデルプランを考えたんだ。メールで金額プランは送ったけど内容のことで感想を聞きたかったから、直接話をしたいと思ったんだ』
自分の思っていた理由とは異なる隼人の電話の理由に志織は失意を感じていた。
『基本は遊んでから食事の流れとして、ボーリングやカラオケ、それからファミレスや食べ放題のどれかの組み合わせがいいと思うんだけど、どうかな? 組み合わせは自由にできるぜ!』
「それはいいけど、予算が初めの金額より高目になっているよね…」
メールで送られた高額になった金額プランをあらためて見て、志織は自分の目を疑っているかのようであった。
『せっかくだから楽しくするために、ちょっとだけ金をかけてさ!』
「ちょっとだけお金をかけるって…」
隼人との経済的な観念の違いをまざまざと感じさせられて、志織の声は詰まった。
『東条、どうした? 高過ぎたか…』
「…そんなこと、ないよ… プランを考えてくれてどうもありがとう… 遊びや食事の内容はそれで大丈夫じゃないかな… みんなもきっと喜ぶよ…」
“私の方はどうにかしてお金を用意しないといけないわね…”
隼人に対する感謝を伝えた返事の陰で志織は参加費の算段をつける気持ちを強くしていた。
『そうか? それじゃ、オレの方で今の話をまとめてモデルプランとしてみんなに送っておくよ。でも組み合わせでどうにでもできるから、金のことが大変だったら遠慮なく言ってくれよ、マジにだぜ』
「…うん、もちろんだよ… じゃ、みんなにプランを送るのはお願いするわね」
“せっかく隼人が考えてくれて喜んでいるんだから… 私は何とか手っ取り早くお金を手に入れる方法を考えないと…”
楽しそうに話す隼人の思い通りにさせてやりたい志織は、自分は資金を工面するためには無理をすることをも覚悟した。
『ところでさ、東条…』
「……! どうしたの、赤城?」
隼人の呼びかけが、すでにスタートを切っていた志織の資金調達の思案を中断した。
『学校では… オレが急に黙り込んで悪かった…』
今までとは打って変わって元気のなくなった隼人の声がスピーカーから志織の耳に響く。
『あの時… オレはどうしたらいいか分からなくて、黙ったままになったんだ…』
「あの時って、何の… ことかな…」
隼人の答えの内容が自分の予想とはかなり違うものだったので、話をはぐらかしたものの志織はとまどっていた。
『つまり… 電話番号とメアドの交換の時のことなんだけど…』
隼人は考えながらゆっくりと話しているようだった。
『オレってそういうのに慣れていないんだ… オレにそう言ってくれたの東条で二人目だし…』
“…二人目だっていうこと、ワザワザ言うことないのに…”
志織には一人目に思い当たりがあったので嫉妬を感じた。
『あの時はどう東条に反応したらいいか分からなくて… 何か分からないけど東条の迷惑になるんじゃないかって、ふと思ったんだ…』
「私が自分からお願いしておいて迷惑になる訳ないでしょ!」
『だったら… 普通に喜んで良かったのかな…』
「当たり前でしょ! それも普通にじゃなくて、もっともっと喜んで欲しかったのよ、私は! かなり凹んじゃったんだからね、責任とってよ!」
興奮気味に大声で話す志織は必ずしも怒っているだけではない様子だった。
『責任って、どうとったらいいんだよ…』
叱責への答えに困った隼人が志織にたずねた声は次第に小さくなっていった。
「今のは冗談よ赤城、気にしないで! それより私の方こそ急に逃げ出してゴメンね…」
自分にも隼人に謝るチャンスがめぐってきて、志織はとてもうれしかった。
「でも赤城が急に黙りこんだから、私との電話番号とメールアドレスの交換には無理してイヤイヤ付き合ってくれたんじゃないかと思って、本当に自信を失くしたんだからね… でも、それが思い過ごしで良かった!」
『何でオレが東条のことを嫌だと思うなんて考えるんだ? 嫌なら初めからスマホを渡すことないはずだろ』
隼人はさも不思議そうに志織にたずねた。
「何で嫌、って…」
隼人の真っ直ぐな返答に詰まってしまった志織はこれまでの自分の思い込みを恥ずかしく思っていた。
「…あ、ゴメン、もうすぐ電池なくなるから切るね。また明日、お休みなさい!」
いとま乞いも早々に志織はあわてて充電満タンのスマホの終話ボタンを押した。
「オレ今の話でウソはついていないよな… 電話番号とかの交換に慣れていないの本当だし…」
終話後のプー・プーと鳴る発振音が鳴り続ける中、あのとき沈黙したことについての志織への説明が偽りでなかったはずだと隼人は自分に言い聞かせていた。
自分の思っていた理由とは異なる隼人の電話の理由に志織は失意を感じていた。
『基本は遊んでから食事の流れとして、ボーリングやカラオケ、それからファミレスや食べ放題のどれかの組み合わせがいいと思うんだけど、どうかな? 組み合わせは自由にできるぜ!』
「それはいいけど、予算が初めの金額より高目になっているよね…」
メールで送られた高額になった金額プランをあらためて見て、志織は自分の目を疑っているかのようであった。
『せっかくだから楽しくするために、ちょっとだけ金をかけてさ!』
「ちょっとだけお金をかけるって…」
隼人との経済的な観念の違いをまざまざと感じさせられて、志織の声は詰まった。
『東条、どうした? 高過ぎたか…』
「…そんなこと、ないよ… プランを考えてくれてどうもありがとう… 遊びや食事の内容はそれで大丈夫じゃないかな… みんなもきっと喜ぶよ…」
“私の方はどうにかしてお金を用意しないといけないわね…”
隼人に対する感謝を伝えた返事の陰で志織は参加費の算段をつける気持ちを強くしていた。
『そうか? それじゃ、オレの方で今の話をまとめてモデルプランとしてみんなに送っておくよ。でも組み合わせでどうにでもできるから、金のことが大変だったら遠慮なく言ってくれよ、マジにだぜ』
「…うん、もちろんだよ… じゃ、みんなにプランを送るのはお願いするわね」
“せっかく隼人が考えてくれて喜んでいるんだから… 私は何とか手っ取り早くお金を手に入れる方法を考えないと…”
楽しそうに話す隼人の思い通りにさせてやりたい志織は、自分は資金を工面するためには無理をすることをも覚悟した。
『ところでさ、東条…』
「……! どうしたの、赤城?」
隼人の呼びかけが、すでにスタートを切っていた志織の資金調達の思案を中断した。
『学校では… オレが急に黙り込んで悪かった…』
今までとは打って変わって元気のなくなった隼人の声がスピーカーから志織の耳に響く。
『あの時… オレはどうしたらいいか分からなくて、黙ったままになったんだ…』
「あの時って、何の… ことかな…」
隼人の答えの内容が自分の予想とはかなり違うものだったので、話をはぐらかしたものの志織はとまどっていた。
『つまり… 電話番号とメアドの交換の時のことなんだけど…』
隼人は考えながらゆっくりと話しているようだった。
『オレってそういうのに慣れていないんだ… オレにそう言ってくれたの東条で二人目だし…』
“…二人目だっていうこと、ワザワザ言うことないのに…”
志織には一人目に思い当たりがあったので嫉妬を感じた。
『あの時はどう東条に反応したらいいか分からなくて… 何か分からないけど東条の迷惑になるんじゃないかって、ふと思ったんだ…』
「私が自分からお願いしておいて迷惑になる訳ないでしょ!」
『だったら… 普通に喜んで良かったのかな…』
「当たり前でしょ! それも普通にじゃなくて、もっともっと喜んで欲しかったのよ、私は! かなり凹んじゃったんだからね、責任とってよ!」
興奮気味に大声で話す志織は必ずしも怒っているだけではない様子だった。
『責任って、どうとったらいいんだよ…』
叱責への答えに困った隼人が志織にたずねた声は次第に小さくなっていった。
「今のは冗談よ赤城、気にしないで! それより私の方こそ急に逃げ出してゴメンね…」
自分にも隼人に謝るチャンスがめぐってきて、志織はとてもうれしかった。
「でも赤城が急に黙りこんだから、私との電話番号とメールアドレスの交換には無理してイヤイヤ付き合ってくれたんじゃないかと思って、本当に自信を失くしたんだからね… でも、それが思い過ごしで良かった!」
『何でオレが東条のことを嫌だと思うなんて考えるんだ? 嫌なら初めからスマホを渡すことないはずだろ』
隼人はさも不思議そうに志織にたずねた。
「何で嫌、って…」
隼人の真っ直ぐな返答に詰まってしまった志織はこれまでの自分の思い込みを恥ずかしく思っていた。
「…あ、ゴメン、もうすぐ電池なくなるから切るね。また明日、お休みなさい!」
いとま乞いも早々に志織はあわてて充電満タンのスマホの終話ボタンを押した。
「オレ今の話でウソはついていないよな… 電話番号とかの交換に慣れていないの本当だし…」
終話後のプー・プーと鳴る発振音が鳴り続ける中、あのとき沈黙したことについての志織への説明が偽りでなかったはずだと隼人は自分に言い聞かせていた。