整然すぎる理由
文字数 1,439文字
翌日の3時間目の授業中のことだった。突然カトリは身体をブルっとさせたかと思うと、手を上げて体調がよくないことを先生に告げて静かに教室を出ていった。それを見た志織はエマに目くばせをすると、エマは目立たぬように軽くうなずいてから続いて手を上げた。自分も体調がよくない旨を先生に伝えて同じように静かに教室を出ていった。
教室を出てすぐにエマはカトリを捜したが、すでにカトリはいなかった。そこでまず行き先として思いついた自販機コーナーや購買を確認するため、エマは1階まで降りて行った。が、そこにはカトリの姿はなかった。
カトリが体調を崩した可能性を考えたエマは次に保健室へ向かった。入口にある在室のプレートを確認したうえで、カトリの体調が本当に悪い可能性も考えエマは扉を小さくノックした。しかし、何の応答もないため、エマは室内の様子を探ろうと耳をすました。人のいる気配がなかったので、さらに詳しく中の状況をうかがおうと耳に手をあてて扉に近づいた途端
ガラッ
扉が突然開いて、エマの耳の真横にヨーコ先生が壁のように立っていた。耳に手をあて扉に寄りかかる格好のままのエマを見て先生は不審そうだった。
「あなた、そんな格好をしてこんなところで何をしているの?」
「せ、先生、今カトリが保健室へ来ませんでしたか? と、とても具合が悪そうに教室を出ていったので心配になって来たんですけど… 」
ヨーコ先生の質問には何とか答えることができたが、自分が怪しい格好のままでその場にいることをツッコまれないかとエマは内心ヒヤヒヤしていた。
「あなたはカトリがここに入るところを見たの?」
「そ、そうじゃないんですけど… ただ、よく授業中に席を外すんですよね、カトリって… もし本当に体調が悪いならココに来るしかないな、と思って…」
「…」
“『もし本当に』って言い方だと、カトリが体調は悪くないくせに、と私が考えていると思われたかも…”
ヨーコ先生が黙って考え込んだのでエマはしくじったと思った。
「確かにカトリはここに来てはいるけど…」
あたりを見回すヨーコ先生は急に小声になった。
「確かに体調が悪いとかの理由で来ている訳ではないの… もちろん授業をサボるためとかでもないのよ、決して」
「えっ? どういうことなんですか、先生?」
「プライベートなことなので大っぴらにできないんだけど、あなただけには特別にお話しするわね…」
ヨーコ先生は意を決したようだった。
「実はカトリのおばさんから国際電話がカトリにかかってくるのよ。一人暮らしで寂しがり屋だから、時を選ばずに電話してきてね… いつも長めの話になるんだけど、カトリもなかなか断れなくてね」
エマに打ち明けるヨーコ先生の顔には困ったような表情が現れている。
「授業中に電話があった時にみんなの迷惑にならないよう私がこの相談室をカトリへ提供しているのよ。だから察してあげてくれないかな」
“先生の話、真に受けていいのかしら?”
ヨーコ先生からの話が妙にスキが無いので、エマは事前に準備されたストーリーではないかと少なからぬ疑念を抱いた。そして志織にも自分の感想を伝えておこうと思った。
“せっかく先生がお芝居と『打ち明け話』までしてくれたのに、今ワザワザそのことを論争するのは得策じゃないわよね…”
「分かりました先生、他言はしません。カトリも寂しいおばさんの相手をして大変ですね」
自分の思いをおくびにも出さずエマは教室へ戻った。
教室を出てすぐにエマはカトリを捜したが、すでにカトリはいなかった。そこでまず行き先として思いついた自販機コーナーや購買を確認するため、エマは1階まで降りて行った。が、そこにはカトリの姿はなかった。
カトリが体調を崩した可能性を考えたエマは次に保健室へ向かった。入口にある在室のプレートを確認したうえで、カトリの体調が本当に悪い可能性も考えエマは扉を小さくノックした。しかし、何の応答もないため、エマは室内の様子を探ろうと耳をすました。人のいる気配がなかったので、さらに詳しく中の状況をうかがおうと耳に手をあてて扉に近づいた途端
ガラッ
扉が突然開いて、エマの耳の真横にヨーコ先生が壁のように立っていた。耳に手をあて扉に寄りかかる格好のままのエマを見て先生は不審そうだった。
「あなた、そんな格好をしてこんなところで何をしているの?」
「せ、先生、今カトリが保健室へ来ませんでしたか? と、とても具合が悪そうに教室を出ていったので心配になって来たんですけど… 」
ヨーコ先生の質問には何とか答えることができたが、自分が怪しい格好のままでその場にいることをツッコまれないかとエマは内心ヒヤヒヤしていた。
「あなたはカトリがここに入るところを見たの?」
「そ、そうじゃないんですけど… ただ、よく授業中に席を外すんですよね、カトリって… もし本当に体調が悪いならココに来るしかないな、と思って…」
「…」
“『もし本当に』って言い方だと、カトリが体調は悪くないくせに、と私が考えていると思われたかも…”
ヨーコ先生が黙って考え込んだのでエマはしくじったと思った。
「確かにカトリはここに来てはいるけど…」
あたりを見回すヨーコ先生は急に小声になった。
「確かに体調が悪いとかの理由で来ている訳ではないの… もちろん授業をサボるためとかでもないのよ、決して」
「えっ? どういうことなんですか、先生?」
「プライベートなことなので大っぴらにできないんだけど、あなただけには特別にお話しするわね…」
ヨーコ先生は意を決したようだった。
「実はカトリのおばさんから国際電話がカトリにかかってくるのよ。一人暮らしで寂しがり屋だから、時を選ばずに電話してきてね… いつも長めの話になるんだけど、カトリもなかなか断れなくてね」
エマに打ち明けるヨーコ先生の顔には困ったような表情が現れている。
「授業中に電話があった時にみんなの迷惑にならないよう私がこの相談室をカトリへ提供しているのよ。だから察してあげてくれないかな」
“先生の話、真に受けていいのかしら?”
ヨーコ先生からの話が妙にスキが無いので、エマは事前に準備されたストーリーではないかと少なからぬ疑念を抱いた。そして志織にも自分の感想を伝えておこうと思った。
“せっかく先生がお芝居と『打ち明け話』までしてくれたのに、今ワザワザそのことを論争するのは得策じゃないわよね…”
「分かりました先生、他言はしません。カトリも寂しいおばさんの相手をして大変ですね」
自分の思いをおくびにも出さずエマは教室へ戻った。