ロスト
文字数 1,645文字
集音マイクを使って捜索し始めて小1時間。二人はまだ陽二を捜しだすことができない。
”地道に作業を進めるしかないが1か所ずつ調べるから効率が悪い。それに敵の待ち伏せやトラップを警戒しなければならないからどうしても歩みが遅くなる”
隼人の背中にはいやな汗が流れ、額にはあぶら汗が浮き出ていた。
“パソコンの設計データも実際の完成と違ったり改修されて現状と違ったりしている。そんな悪条件でもカトリは懸命に福本のことを捜してくれている。先に俺が折れる訳にはいかない”
「カトリ、俺が代ろうか?」
隼人が後ろからカトリの肩を叩くと、カトリの身体が飛び上がった。
「ビッテ! ハヤトか… ビックリした!」
「驚かせて悪かった、カトリ。オレが代ろうか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「ずっと集中してたから疲れただろ」
「平気だよ、ワタシは。フクモトクンも辛いだろうし、少しでも早く見つけてあげないと。それに」
疲れた顔をしたカトリが恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「ワタシの汗でビショビショのヘッドホンをハヤトには使わせられないよ…」
「オレなら全然
「女の子の方はそうはいかないのよ!」
「じゃあ、水分だけでも補給しよう」
二人はスポーツ飲料の入ったペットボトルを取り出して飲んだ。
「ワタシまた元気が出てきた!」
緊張がほぐれたカトリはハヤトに微笑んでヘッドホンを着け直す。
「んっ… 何か聞こえる…」
「何か聞こえたって?」
「静かにして、ハヤト… 向こうの方から聞こえる… うめき… 声?」
つむった目をあけるとカトリは目標の部屋めがけて速足で向かって行った。
“待ってくれよ! オレのバックアップが間に合わないだろ!”
自分の装備を再点検してハヤトもそれを追った。
ハヤトが追いつくと、一足先に着いていたカトリは目標の部屋の前でマイクを室内の方に向け耳を澄ませていた。
「この部屋の中で誰かがうめき声を出している…」
「中に入って確認しないといけないな… トラップがあるかも知れないからオレがショットガンで扉をブリーチする」
「ワタシはライフルを持って来ていない… ハヤトのことをバックアップできないから、ワタシが扉を撃ち破る」
「カトリ、オレのMPを貸してやる。危ないからバックアップに回ってくれ」
カトリはハヤトからMP7A1を受け取って試した。
「ワタシにはグリップが太くて握れないや。やっぱりワタシが扉を撃ち壊す」
ハヤトは苦虫をつぶしたような顔をしながらバックからレミントンを取り出してカトリに渡した。
「さっきドアノブの受け口に爆薬が仕掛けてあった。同じ場所に爆薬が仕掛けてあるかも知れない」
「じゃあ、今回は扉の蝶つがいの方を吹き飛ばせばいいのね」
「そうだな! よくわかったな、カトリ」
「学校が終わってから毎日ヨーコのトモダチにいろんなことを教わっているのよ」
「それでカトリは放課後ずっといなかったのか… でも、わざわざ何のためにだ?」
「… それは後でゆっくり教えてあげるわ… とにかく部屋に入らないと」
ガ シャ
カトリは銃身の下のスライドを慎重に前後させて次のシェルを装てんした。
ヴァン ヴァン
くぐもった発砲音が2回響いた瞬間、2か所の蝶つがいが吹き飛んだ。カトリが扉の真正面から壁の方へ体を翻すと、ハヤトが扉を蹴り破る。カトリが部屋の中をうかがうと、ぐったりとした男がイスに縛り付けられていた。右手には赤い染みの付いた布がぞんざいに巻き付けられている。
「フクモトクン!」
カトリはショットガンをその場に置くと陽二の方へ駆け寄って行った。
「カトリ、あわてるな!」
隼人は金属探知機を手にしてから部屋に入った。すでにカトリは陽二のすぐ近くにいて体の具合を見て首を横に振っている。
「自爆ベスト… ハヤト、こっちへ来ないで!」
近づこうとする隼人をカトリが大声で制止してからその場を飛びのいた。その瞬間
ドカンッ
爆音とともにカトリと陽二の姿が見えなくなった。
”地道に作業を進めるしかないが1か所ずつ調べるから効率が悪い。それに敵の待ち伏せやトラップを警戒しなければならないからどうしても歩みが遅くなる”
隼人の背中にはいやな汗が流れ、額にはあぶら汗が浮き出ていた。
“パソコンの設計データも実際の完成と違ったり改修されて現状と違ったりしている。そんな悪条件でもカトリは懸命に福本のことを捜してくれている。先に俺が折れる訳にはいかない”
「カトリ、俺が代ろうか?」
隼人が後ろからカトリの肩を叩くと、カトリの身体が飛び上がった。
「ビッテ! ハヤトか… ビックリした!」
「驚かせて悪かった、カトリ。オレが代ろうか?」
「ううん、大丈夫だよ」
「ずっと集中してたから疲れただろ」
「平気だよ、ワタシは。フクモトクンも辛いだろうし、少しでも早く見つけてあげないと。それに」
疲れた顔をしたカトリが恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「ワタシの汗でビショビショのヘッドホンをハヤトには使わせられないよ…」
「オレなら全然
「女の子の方はそうはいかないのよ!」
「じゃあ、水分だけでも補給しよう」
二人はスポーツ飲料の入ったペットボトルを取り出して飲んだ。
「ワタシまた元気が出てきた!」
緊張がほぐれたカトリはハヤトに微笑んでヘッドホンを着け直す。
「んっ… 何か聞こえる…」
「何か聞こえたって?」
「静かにして、ハヤト… 向こうの方から聞こえる… うめき… 声?」
つむった目をあけるとカトリは目標の部屋めがけて速足で向かって行った。
“待ってくれよ! オレのバックアップが間に合わないだろ!”
自分の装備を再点検してハヤトもそれを追った。
ハヤトが追いつくと、一足先に着いていたカトリは目標の部屋の前でマイクを室内の方に向け耳を澄ませていた。
「この部屋の中で誰かがうめき声を出している…」
「中に入って確認しないといけないな… トラップがあるかも知れないからオレがショットガンで扉をブリーチする」
「ワタシはライフルを持って来ていない… ハヤトのことをバックアップできないから、ワタシが扉を撃ち破る」
「カトリ、オレのMPを貸してやる。危ないからバックアップに回ってくれ」
カトリはハヤトからMP7A1を受け取って試した。
「ワタシにはグリップが太くて握れないや。やっぱりワタシが扉を撃ち壊す」
ハヤトは苦虫をつぶしたような顔をしながらバックからレミントンを取り出してカトリに渡した。
「さっきドアノブの受け口に爆薬が仕掛けてあった。同じ場所に爆薬が仕掛けてあるかも知れない」
「じゃあ、今回は扉の蝶つがいの方を吹き飛ばせばいいのね」
「そうだな! よくわかったな、カトリ」
「学校が終わってから毎日ヨーコのトモダチにいろんなことを教わっているのよ」
「それでカトリは放課後ずっといなかったのか… でも、わざわざ何のためにだ?」
「… それは後でゆっくり教えてあげるわ… とにかく部屋に入らないと」
ガ シャ
カトリは銃身の下のスライドを慎重に前後させて次のシェルを装てんした。
ヴァン ヴァン
くぐもった発砲音が2回響いた瞬間、2か所の蝶つがいが吹き飛んだ。カトリが扉の真正面から壁の方へ体を翻すと、ハヤトが扉を蹴り破る。カトリが部屋の中をうかがうと、ぐったりとした男がイスに縛り付けられていた。右手には赤い染みの付いた布がぞんざいに巻き付けられている。
「フクモトクン!」
カトリはショットガンをその場に置くと陽二の方へ駆け寄って行った。
「カトリ、あわてるな!」
隼人は金属探知機を手にしてから部屋に入った。すでにカトリは陽二のすぐ近くにいて体の具合を見て首を横に振っている。
「自爆ベスト… ハヤト、こっちへ来ないで!」
近づこうとする隼人をカトリが大声で制止してからその場を飛びのいた。その瞬間
ドカンッ
爆音とともにカトリと陽二の姿が見えなくなった。