身が入っていなさそうな打ち合わせ
文字数 1,958文字
「東条、遅くなって悪かったゴメン! 教室を出る時に響子先生につかまって上履きのまま外に出たことで小言をもらってさ」
放課後の談話スペースにしばらくしてから隼人が息を切ってやってきた。だが、志織は今朝の出来事とその前にあった昨晩の出来事を代わる代わる、そしてその場にいるかのように思い返していた。
「それがどんどん長引いて今までかかって参ったよ。やっとこれから今日の打上げの話の相談ができるな」
隼人が呼びかけても、志織は心ここにあらずといった様子で返事をしなかった。
「おい、東条!? 朝からなんか変だぞ? 聞こえてるか?」
隼人のことがぜんぜん眼中にない感じの志織の肩を少し声をはり上げて隼人は軽くたたいた。
「ハ、ハイ!」
急に回想の世界から引き戻された志織は、場違いな大声を出してバネが跳ねるようにイスから立ち上がり、直立不動の姿勢をとった。
「ハイって、おまえ… 本当に大丈夫か?」
強いインパクトのある志織の反応に隼人は目が点になった。
「ええ、気にしないで。どうしたのかしら?」
隼人の受けた衝撃に関係なく志織は何ごともなかったかのようにイスに座り直した。
“思いっきり変だろ… ちょっと肩をたたいたくらいで授業中にボンヤリしていて先生に指されたような反応するなんて…”
「打上げの話の相談をしよう、って言ってるんだ」
隼人のケゲンそうな視線を志織は全く意に介していないようだった。
「そうそう、その話ね。私も待ちくたびれちゃっていたところなの。赤城、いつまでもそんなところに立っていないで早く座りなさいよ」
隼人の方を見て志織は自分の横の空いているイスに手招きした。
「そ、そこよりも向かい合って座った方が作業しやすくないか?」
急ハンドルを切ったような志織の様子の変化に隼人は呆気にとられてしまった。一方で、同時にお誘いの言葉に照れてしまったが、志織の誘いには反して、けつまずきながら真向かいの席に腰かけた。
「そんなことないよ、私はこの方が一緒に作業しやすいな」
志織は自分の荷物を抱えて隼人の隣に席をかえた。並んで座った志織の制服が自分の肩からモモにかけて接触して、隼人はうれしくも恥ずかしくもなり耳まで赤くなった。
「ところで聞いてよ、赤城! 私さ、打上げの場所について考えていたんだけど!」
触れ合う腕やモモの外側に間を空けようとモゾモゾしている隼人に、隼人から返されたノートを机に広げた志織が元気よく話しかけた。
「遊んだ後に食事に行くなら両方ともある繁華街のある駅周辺の方がいいわよね。その方がみんなも集まりやすいだろうし」
“こんなに近いと話しかける吐息が耳にかかるだろ… チョット勘弁してくれよ…”
肩を寄せて話しかけてくる志織の接近遭遇に隼人はうろたえていた。
「そ、それは絶対にその方がいいよ。あ、遊んでから食事をするのに別の駅まで移動するのは大変だし時間もかかる。た、楽しい気分が途中で中断すると思うんだ」
とにかく思いつくことをなんとか口に出すことで精いっぱいの隼人に対して、志織は真剣な顔をして隼人の方を見つめてうなずきながら打ち合わせの内容をノートに書き留めていく。
「まず、遊びの方から考えようよ! 気軽に男子と女子の6人組でワイワイするなら、ボーリングやカラオケが楽しいと思うんだよね!」
まともに目を合わすこともできない隼人に提案と説明するために、ノートをとりながら志織はスマホを触り始めた。
“ボーリングやカラオケとかは故郷にはないからどんな所かは知らないけど、今回の打上げに必要なことはネットでいろいろ調べたんだ…”
「確かに遊園地となると気軽に出かけるって感じじゃなくなるだろ。かと言ってゲーセンとかって訳には行かないし… もしボーリングとかカラオケに行くんなら… 紙屋町あたりがいいよな?」
「うん、紙屋町ならバッチリだよ! その後に食事ができるファミレスや食べ放題のお店もいっぱいあるもんね!」
「じゃあ、時間はどのくらいにしようか? あのさ、夕食はみんなで一緒に食べるってことでいいんだよな?」
「それでいいと思うけど、帰りの時間が遅くならないように気を付けないと… 女子のことも考えてよね…」
隼人はチラリと志織の顔の方を見て話をしてみたが、志織はスマホを見がちでノートをとる手はお休みしていることが多かった。
“私でも手っ取り早くお金を手に入れられる方法はないかしら… スマホって何でも調べられるから便利ね…”
志織は打上げの費用を準備しようとスマホでバイトを検索することに熱を入れていた。
放課後の談話スペースにしばらくしてから隼人が息を切ってやってきた。だが、志織は今朝の出来事とその前にあった昨晩の出来事を代わる代わる、そしてその場にいるかのように思い返していた。
「それがどんどん長引いて今までかかって参ったよ。やっとこれから今日の打上げの話の相談ができるな」
隼人が呼びかけても、志織は心ここにあらずといった様子で返事をしなかった。
「おい、東条!? 朝からなんか変だぞ? 聞こえてるか?」
隼人のことがぜんぜん眼中にない感じの志織の肩を少し声をはり上げて隼人は軽くたたいた。
「ハ、ハイ!」
急に回想の世界から引き戻された志織は、場違いな大声を出してバネが跳ねるようにイスから立ち上がり、直立不動の姿勢をとった。
「ハイって、おまえ… 本当に大丈夫か?」
強いインパクトのある志織の反応に隼人は目が点になった。
「ええ、気にしないで。どうしたのかしら?」
隼人の受けた衝撃に関係なく志織は何ごともなかったかのようにイスに座り直した。
“思いっきり変だろ… ちょっと肩をたたいたくらいで授業中にボンヤリしていて先生に指されたような反応するなんて…”
「打上げの話の相談をしよう、って言ってるんだ」
隼人のケゲンそうな視線を志織は全く意に介していないようだった。
「そうそう、その話ね。私も待ちくたびれちゃっていたところなの。赤城、いつまでもそんなところに立っていないで早く座りなさいよ」
隼人の方を見て志織は自分の横の空いているイスに手招きした。
「そ、そこよりも向かい合って座った方が作業しやすくないか?」
急ハンドルを切ったような志織の様子の変化に隼人は呆気にとられてしまった。一方で、同時にお誘いの言葉に照れてしまったが、志織の誘いには反して、けつまずきながら真向かいの席に腰かけた。
「そんなことないよ、私はこの方が一緒に作業しやすいな」
志織は自分の荷物を抱えて隼人の隣に席をかえた。並んで座った志織の制服が自分の肩からモモにかけて接触して、隼人はうれしくも恥ずかしくもなり耳まで赤くなった。
「ところで聞いてよ、赤城! 私さ、打上げの場所について考えていたんだけど!」
触れ合う腕やモモの外側に間を空けようとモゾモゾしている隼人に、隼人から返されたノートを机に広げた志織が元気よく話しかけた。
「遊んだ後に食事に行くなら両方ともある繁華街のある駅周辺の方がいいわよね。その方がみんなも集まりやすいだろうし」
“こんなに近いと話しかける吐息が耳にかかるだろ… チョット勘弁してくれよ…”
肩を寄せて話しかけてくる志織の接近遭遇に隼人はうろたえていた。
「そ、それは絶対にその方がいいよ。あ、遊んでから食事をするのに別の駅まで移動するのは大変だし時間もかかる。た、楽しい気分が途中で中断すると思うんだ」
とにかく思いつくことをなんとか口に出すことで精いっぱいの隼人に対して、志織は真剣な顔をして隼人の方を見つめてうなずきながら打ち合わせの内容をノートに書き留めていく。
「まず、遊びの方から考えようよ! 気軽に男子と女子の6人組でワイワイするなら、ボーリングやカラオケが楽しいと思うんだよね!」
まともに目を合わすこともできない隼人に提案と説明するために、ノートをとりながら志織はスマホを触り始めた。
“ボーリングやカラオケとかは故郷にはないからどんな所かは知らないけど、今回の打上げに必要なことはネットでいろいろ調べたんだ…”
「確かに遊園地となると気軽に出かけるって感じじゃなくなるだろ。かと言ってゲーセンとかって訳には行かないし… もしボーリングとかカラオケに行くんなら… 紙屋町あたりがいいよな?」
「うん、紙屋町ならバッチリだよ! その後に食事ができるファミレスや食べ放題のお店もいっぱいあるもんね!」
「じゃあ、時間はどのくらいにしようか? あのさ、夕食はみんなで一緒に食べるってことでいいんだよな?」
「それでいいと思うけど、帰りの時間が遅くならないように気を付けないと… 女子のことも考えてよね…」
隼人はチラリと志織の顔の方を見て話をしてみたが、志織はスマホを見がちでノートをとる手はお休みしていることが多かった。
“私でも手っ取り早くお金を手に入れられる方法はないかしら… スマホって何でも調べられるから便利ね…”
志織は打上げの費用を準備しようとスマホでバイトを検索することに熱を入れていた。