グッドなタイミング?
文字数 2,388文字
”打ち合わせの時の東条の様子は、どう考えても変だったよな…”
風呂から上がって自分の部屋で隼人はベッドに寝ころんでゆっくりしていた。そして志織の打ち合わせの時の落ち着きがない様子を思い起こしていた。何事もソツなくこなす志織が打ち合わせの間ずっとスマホの画面に気を取られ、それ以外のことがほとんど疎かになっていた点が気になっていた。
”用事がある、って言いだして急に逃げるように居なくなったし…”
「そう言えば、あの時に後で打ち上げの日の集合時間と場所の予定をスマホで送るって言っていたな…」
机の上に置いておいたスマホにあった電話とチャットの着信の知らせに気付かないまま、打ち合わせの時の出来事を順々に思い出していた隼人の口からは独り言が漏れ出していた。
~♩♪♪ ♩♪♪ ♩♪♪~
”おっ、グッドタイミング!”
なにも気にかけることなく電話の呼び出し音を鳴らしたスマホを持ち上げ、そのまま隼人は受信ボタンを押した。
『遅い時間に電話してごめんなさい』
”エッ! マジかよ…”
隼人のスマホを握る手は熱くなってきて緊張で少し震えた。
「もしもし、オレだけど…」
できるだけ平静を装ったが、それがうまくいかなかったことは隼人自身が一番よく分かっていた。
「カトリ… 何かあったのか?」
『ハヤトとお話しできるのは久しぶりね、ホントに… このところ授業が終わってから出かける用事があって一緒にお話しする時間が取れなくてゴメン』
「カトリが謝ることなんてないよ。オレの方もカトリと話す機会がなくて、ちょうど話をしたいと思っていたところなんだ」
自分の方からカトリを避けていた罪悪感もあって耳あたりの良い言葉を使う自分に隼人は自己嫌悪をもよおしていた。
「そう言えばカトリが今話していた、その放課後のことが気になるな」
さらに罪の意識から愛想よくカトリのことに興味を示すフリをする自分がもっと嫌になる。
『最近習い事を始めてね! まだ何を始めたは言えないけれど、早く上手になりたいんだ』
「そうか… それがうまくなったら、オレにもみせてくれるかな?」
『そう言ってもらえると嬉しい! ぜひそうしたいわ!』
本心からカトリは喜んでいるようだった。
『ビッテ! 久しぶりのおしゃべりが楽しくなって、つい忘れるところだった! ところでハヤト、グループのチャットを見た?』
「いや、夕食を食べてから今まで風呂に入っていたからスマホは見ていないんだ」
『そうだったんだ… じゃあ、まだシオリのメッセージを見ていないんだ…』
”ん? 何かあったのか?”
スマホを握った隼人の手が汗ばんだ。
『シオリがね、メッセージを送ってきたんだけど…』
今までの明るかったカトリの様子が一変した。
『打ち上げへの参加を辞退するって言っているんだよ…』
「エッ!? 本当か!?」
驚いた隼人はあわててスマホの履歴画面を見た。
”うおっ、ヤベッ! 電話の着信も結構入っている! オレが風呂に入っていた間に何が起きたんだ!?”
このときになって隼人は入浴中に電話の着信もあったことを知ったが、今はチャットの画面を見るので精いっぱいだった。
「本当だ… 東条にいったい何があったんだ!?」
『ゴースケとフクモトクンから打ち上げのアンケートの答えの返信がチャットの方にあったんだけど、二人とも日曜日がダメってことらしいの… それからしばらくしてシオリが参加辞退のメッセージを入れてきたんだ…』
「日曜がダメなら打ち上げをする日を土曜に変えればいいだけのことじゃないのか? 何も難しいことは無さそうだよな、カトリ?」
カトリから志織の参加辞退のいきさつを聞いて、隼人は簡単に対処できそうに思って気持ちが少しだけ軽くなった。
『でもね… それができるなら、とっくにシオリは土曜日にしているハズだと思うんだよ…』
考え込むようなカトリの口ぶりは隼人には賛成しかねるようだった。
『お店の予約はするけど自分は参加できない、って言うのはシオリにとって何か大事な理由があるんじゃないのかな… ワタシの勘だけどね…』
「あっ…」
カトリの言葉が隼人に志織のある事柄を思い起こさせた。
『どうしたの、ハヤト!?』
「いや、何でもないんだ…」
このことは軽々しく口にすることではない、と思った隼人は言葉を飲み込んだ。
「わかった、オレが東条へ直接電話してみるよ。念のため聞いておくけど、カトリは土曜でも日曜でもどっちでもいいんだよな」
『ええ、どっちでもいいけど、早めに決めて教えてね。私も週末には遠くへ出かける予定があるんだ』
“やっぱりハヤトは頼りになるわ! それに今までと変わりないじゃない!”
久しぶりに隼人と話ができて、安心したように、そして喜んでカトリは答えた。
『ワタシもゴースケに電話してみる。日曜日に変えられないかも相談してみるからね』
「どうもありがとうカトリ! 電話してくれて嬉しいよ。とても助かった」
隼人はカトリに心から感謝していた。それに剛介ならカトリの言うことを聞いてくれるだろうと楽観視していた。
『今は用事があって忙しいから、こんなことでしか手伝えなくてゴメン。ワタシもできる限りの協力をするからね。また明日、お休みなさい』
隼人は自分の方から距離をとっていたカトリからの連絡を意外と思うと同時にうれしく思った。志織のことの相談と協力の約束をしてくれたカトリのことをあらためてスゴイ人だと思った。やっぱり自分なんかカトリにはゼッタイかなわないと隼人は感じていた。
風呂から上がって自分の部屋で隼人はベッドに寝ころんでゆっくりしていた。そして志織の打ち合わせの時の落ち着きがない様子を思い起こしていた。何事もソツなくこなす志織が打ち合わせの間ずっとスマホの画面に気を取られ、それ以外のことがほとんど疎かになっていた点が気になっていた。
”用事がある、って言いだして急に逃げるように居なくなったし…”
「そう言えば、あの時に後で打ち上げの日の集合時間と場所の予定をスマホで送るって言っていたな…」
机の上に置いておいたスマホにあった電話とチャットの着信の知らせに気付かないまま、打ち合わせの時の出来事を順々に思い出していた隼人の口からは独り言が漏れ出していた。
~♩♪♪ ♩♪♪ ♩♪♪~
”おっ、グッドタイミング!”
なにも気にかけることなく電話の呼び出し音を鳴らしたスマホを持ち上げ、そのまま隼人は受信ボタンを押した。
『遅い時間に電話してごめんなさい』
”エッ! マジかよ…”
隼人のスマホを握る手は熱くなってきて緊張で少し震えた。
「もしもし、オレだけど…」
できるだけ平静を装ったが、それがうまくいかなかったことは隼人自身が一番よく分かっていた。
「カトリ… 何かあったのか?」
『ハヤトとお話しできるのは久しぶりね、ホントに… このところ授業が終わってから出かける用事があって一緒にお話しする時間が取れなくてゴメン』
「カトリが謝ることなんてないよ。オレの方もカトリと話す機会がなくて、ちょうど話をしたいと思っていたところなんだ」
自分の方からカトリを避けていた罪悪感もあって耳あたりの良い言葉を使う自分に隼人は自己嫌悪をもよおしていた。
「そう言えばカトリが今話していた、その放課後のことが気になるな」
さらに罪の意識から愛想よくカトリのことに興味を示すフリをする自分がもっと嫌になる。
『最近習い事を始めてね! まだ何を始めたは言えないけれど、早く上手になりたいんだ』
「そうか… それがうまくなったら、オレにもみせてくれるかな?」
『そう言ってもらえると嬉しい! ぜひそうしたいわ!』
本心からカトリは喜んでいるようだった。
『ビッテ! 久しぶりのおしゃべりが楽しくなって、つい忘れるところだった! ところでハヤト、グループのチャットを見た?』
「いや、夕食を食べてから今まで風呂に入っていたからスマホは見ていないんだ」
『そうだったんだ… じゃあ、まだシオリのメッセージを見ていないんだ…』
”ん? 何かあったのか?”
スマホを握った隼人の手が汗ばんだ。
『シオリがね、メッセージを送ってきたんだけど…』
今までの明るかったカトリの様子が一変した。
『打ち上げへの参加を辞退するって言っているんだよ…』
「エッ!? 本当か!?」
驚いた隼人はあわててスマホの履歴画面を見た。
”うおっ、ヤベッ! 電話の着信も結構入っている! オレが風呂に入っていた間に何が起きたんだ!?”
このときになって隼人は入浴中に電話の着信もあったことを知ったが、今はチャットの画面を見るので精いっぱいだった。
「本当だ… 東条にいったい何があったんだ!?」
『ゴースケとフクモトクンから打ち上げのアンケートの答えの返信がチャットの方にあったんだけど、二人とも日曜日がダメってことらしいの… それからしばらくしてシオリが参加辞退のメッセージを入れてきたんだ…』
「日曜がダメなら打ち上げをする日を土曜に変えればいいだけのことじゃないのか? 何も難しいことは無さそうだよな、カトリ?」
カトリから志織の参加辞退のいきさつを聞いて、隼人は簡単に対処できそうに思って気持ちが少しだけ軽くなった。
『でもね… それができるなら、とっくにシオリは土曜日にしているハズだと思うんだよ…』
考え込むようなカトリの口ぶりは隼人には賛成しかねるようだった。
『お店の予約はするけど自分は参加できない、って言うのはシオリにとって何か大事な理由があるんじゃないのかな… ワタシの勘だけどね…』
「あっ…」
カトリの言葉が隼人に志織のある事柄を思い起こさせた。
『どうしたの、ハヤト!?』
「いや、何でもないんだ…」
このことは軽々しく口にすることではない、と思った隼人は言葉を飲み込んだ。
「わかった、オレが東条へ直接電話してみるよ。念のため聞いておくけど、カトリは土曜でも日曜でもどっちでもいいんだよな」
『ええ、どっちでもいいけど、早めに決めて教えてね。私も週末には遠くへ出かける予定があるんだ』
“やっぱりハヤトは頼りになるわ! それに今までと変わりないじゃない!”
久しぶりに隼人と話ができて、安心したように、そして喜んでカトリは答えた。
『ワタシもゴースケに電話してみる。日曜日に変えられないかも相談してみるからね』
「どうもありがとうカトリ! 電話してくれて嬉しいよ。とても助かった」
隼人はカトリに心から感謝していた。それに剛介ならカトリの言うことを聞いてくれるだろうと楽観視していた。
『今は用事があって忙しいから、こんなことでしか手伝えなくてゴメン。ワタシもできる限りの協力をするからね。また明日、お休みなさい』
隼人は自分の方から距離をとっていたカトリからの連絡を意外と思うと同時にうれしく思った。志織のことの相談と協力の約束をしてくれたカトリのことをあらためてスゴイ人だと思った。やっぱり自分なんかカトリにはゼッタイかなわないと隼人は感じていた。