キャンプファイヤーに向かうまで
文字数 2,205文字
“ちゃんと隼人もいるわね…”
部屋から出た志織は隼人の姿を目で確認してから剛介の方へ行った。そしていきなり剛介の背中を押しながら女子部屋に力づくで押し込もうとした。
「おい、いきなり何するんだ、志織~っ!」
「剛介、あなたカトリをケガさせたんだからちゃんと責任とってきなさいよ!」
“確かに責任はとらんとイカンよな、責任は”
剛介は志織に対する抵抗を止め、渋々そしてホクホク部屋に入って行く。
「ねえ福本君、ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど…」
志織はすまなさそうな顔をして次に陽二に向って語りかけた。
「あのね… 私せっかくだからこの機会にいろんな人と仲良くなりたいんだ… できればこれからキャンプファイヤーの場所までは赤城君と一緒に行きたいんだけど… どうかな?」
「え~っ…」
漏れ出た声の感じ以上に陽二の不服な表情はあからさまだった。
「福本は肝試しの時に志織を満喫したでしょ! 今は私が一緒に行ってあげるから志織の好きなようにさせて上げなさいよ」
“志織が何を考えているかわかんないけど面白そうなニオイがする”
不満ぎみの陽二にエマが意見してから志織にウインクした。
“カトリは足にケガをして自由には動けない。念のため剛介までくっつけたから、やっと隼人を思いのままに操るための接近工作を始められる”
志織は『トクギ』で身に付けた男を手玉に取るハニートラップの技術を隼人に施そうとしていた。
“あわてすぎないで、自然に、かつ効果的に、っと… 隼人には初心者向けでいいわね…”
「ねえ赤城君、キャンプファイヤーの会場まで一緒に行こうよ」
「ん? 東条は竜崎と一緒でなくていいのか?」
《オマエこそカトリと一緒でなくていいのか? まあ、カトリは後でミーティングするからその時にでもいいか》
隼人の胸の内ではもう一人のハヤトが勝手に疑問を投げかけ勝手に自己完結している。
「私だって剛介なんかとずっと一緒だったらあきちゃうよ」
勘弁してっ、という態度の志織は顔の前でブンブン手を振った。
「それに私キミと一度と話がしたかったんだ」
志織はそう口に出した途端になぜか自身の顔が熱を持って紅くなってきた。
“どうしよう… 顔がほてってる…”
隼人と二人で歩くことができることの嬉しさを自分にはだますことはできない…
「おい、どうしたんだ、東条?」
志織は髪を顔の前にたらし隼人に見つからないように表情を隠す。
「ちょっと体調が…」
「具合が悪いんじゃ部屋で休んでいるか? ついて行ってやるぞ」
“““““キャンプファイヤーの間、ずっと二人きりで部屋に残るって意味?!”””””
“志織の様子が僕のときとは全然違うじゃないか!”
“嫌いだったり苦手だったりする男には自分から進んで近づいたりしないよね、オンナなら…”
“面白そう! 何とかして私もこの場に残れないかな?”
“カトリと一緒なら俺は別にどうでもいいがな”
「ワタシは動けないからワタシもここに残る! ゴースケに迷惑をかけられない!」
突然のカトリの居残り宣言により一瞬にして剛介の眉間に深い深いしわが刻まれる。
“こんなところで全員仲が悪くなったら、今後の任務に悪影響が及ぶわね…”
あたりに立ち込める不穏な“気”を鎮めるための行動に志織は出た。
“隼人と二人きりになれないのは残念だけど…”
「あれ、急に調子が良くなったみたい! 全然平気だよ! みんな心配させちゃってゴメン!」
突如として蘇生した志織は周囲に笑顔を振りまいてから隼人に近寄って一緒に話しながら歩き出した。残りのメンバーもとにかくキャンプファイヤーの会場に向かって進み始めた。
仲良さそうに話しながら前を歩く二人を見て陽二は思い余ってエマに志願した。
「風紀が乱れているって僕から注意してくるよ!」
急に背中を後から叩かれたので陽二が振り向くと、いきなり声をかけられた。
「福本君、私です。桂 杏奈です。お話ししたいことが」
声のする方を志織と隼人が見ると、陽二が慌てた様子で見たことのないカワイイ女の子と話をしていた。
「みんな、ちょっと僕、用事ができたから先に行っててよ」
陽二は女の子をみんなの目、特に志織から隠すようにしながら連れて離れて行った。
“知らないところでE組の子とイロイロあるのね福本は… ヤルじゃん!”
“アイツいつの間にあんなにカワイイ女と… 許さん!”
この様子を見て、エマは意気地のなさそうな陽二をことを見直し、剛介は陽二の自分への断りもない抜け駆けを一方的に憤っていた。
“男のカラダに触れるなら、効果のない部位は避け、その気があると思わせる顔・腕・手を選ぶこと。太ももや下半身は初心者の場合は逆効果になってしまうので注意する”
志織は『トクギ』で学んだことを踏まえて隼人の手を優しく握った。
「!」
隼人が優しく手を握り返してきたので、志織の体には手から電流が流れてきた。
「東条、具合が悪いんだろ? 夜風で冷えるもんな」
隼人は自分の着ていたジャージの上着を脱いで志織の肩にかけた。
「赤城クン、ゴメンね。ありがとう」
“私って悪い人間だよね…”
志織が隼人に謝った理由は隼人が自分を気遣って優しくしてくれただけではなかった。
“あの二人このまま放っておけない!”
後から前を見つめることしかできないカトリは内心かなりアセっていた。
部屋から出た志織は隼人の姿を目で確認してから剛介の方へ行った。そしていきなり剛介の背中を押しながら女子部屋に力づくで押し込もうとした。
「おい、いきなり何するんだ、志織~っ!」
「剛介、あなたカトリをケガさせたんだからちゃんと責任とってきなさいよ!」
“確かに責任はとらんとイカンよな、責任は”
剛介は志織に対する抵抗を止め、渋々そしてホクホク部屋に入って行く。
「ねえ福本君、ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど…」
志織はすまなさそうな顔をして次に陽二に向って語りかけた。
「あのね… 私せっかくだからこの機会にいろんな人と仲良くなりたいんだ… できればこれからキャンプファイヤーの場所までは赤城君と一緒に行きたいんだけど… どうかな?」
「え~っ…」
漏れ出た声の感じ以上に陽二の不服な表情はあからさまだった。
「福本は肝試しの時に志織を満喫したでしょ! 今は私が一緒に行ってあげるから志織の好きなようにさせて上げなさいよ」
“志織が何を考えているかわかんないけど面白そうなニオイがする”
不満ぎみの陽二にエマが意見してから志織にウインクした。
“カトリは足にケガをして自由には動けない。念のため剛介までくっつけたから、やっと隼人を思いのままに操るための接近工作を始められる”
志織は『トクギ』で身に付けた男を手玉に取るハニートラップの技術を隼人に施そうとしていた。
“あわてすぎないで、自然に、かつ効果的に、っと… 隼人には初心者向けでいいわね…”
「ねえ赤城君、キャンプファイヤーの会場まで一緒に行こうよ」
「ん? 東条は竜崎と一緒でなくていいのか?」
《オマエこそカトリと一緒でなくていいのか? まあ、カトリは後でミーティングするからその時にでもいいか》
隼人の胸の内ではもう一人のハヤトが勝手に疑問を投げかけ勝手に自己完結している。
「私だって剛介なんかとずっと一緒だったらあきちゃうよ」
勘弁してっ、という態度の志織は顔の前でブンブン手を振った。
「それに私キミと一度と話がしたかったんだ」
志織はそう口に出した途端になぜか自身の顔が熱を持って紅くなってきた。
“どうしよう… 顔がほてってる…”
隼人と二人で歩くことができることの嬉しさを自分にはだますことはできない…
「おい、どうしたんだ、東条?」
志織は髪を顔の前にたらし隼人に見つからないように表情を隠す。
「ちょっと体調が…」
「具合が悪いんじゃ部屋で休んでいるか? ついて行ってやるぞ」
“““““キャンプファイヤーの間、ずっと二人きりで部屋に残るって意味?!”””””
“志織の様子が僕のときとは全然違うじゃないか!”
“嫌いだったり苦手だったりする男には自分から進んで近づいたりしないよね、オンナなら…”
“面白そう! 何とかして私もこの場に残れないかな?”
“カトリと一緒なら俺は別にどうでもいいがな”
「ワタシは動けないからワタシもここに残る! ゴースケに迷惑をかけられない!」
突然のカトリの居残り宣言により一瞬にして剛介の眉間に深い深いしわが刻まれる。
“こんなところで全員仲が悪くなったら、今後の任務に悪影響が及ぶわね…”
あたりに立ち込める不穏な“気”を鎮めるための行動に志織は出た。
“隼人と二人きりになれないのは残念だけど…”
「あれ、急に調子が良くなったみたい! 全然平気だよ! みんな心配させちゃってゴメン!」
突如として蘇生した志織は周囲に笑顔を振りまいてから隼人に近寄って一緒に話しながら歩き出した。残りのメンバーもとにかくキャンプファイヤーの会場に向かって進み始めた。
仲良さそうに話しながら前を歩く二人を見て陽二は思い余ってエマに志願した。
「風紀が乱れているって僕から注意してくるよ!」
急に背中を後から叩かれたので陽二が振り向くと、いきなり声をかけられた。
「福本君、私です。桂 杏奈です。お話ししたいことが」
声のする方を志織と隼人が見ると、陽二が慌てた様子で見たことのないカワイイ女の子と話をしていた。
「みんな、ちょっと僕、用事ができたから先に行っててよ」
陽二は女の子をみんなの目、特に志織から隠すようにしながら連れて離れて行った。
“知らないところでE組の子とイロイロあるのね福本は… ヤルじゃん!”
“アイツいつの間にあんなにカワイイ女と… 許さん!”
この様子を見て、エマは意気地のなさそうな陽二をことを見直し、剛介は陽二の自分への断りもない抜け駆けを一方的に憤っていた。
“男のカラダに触れるなら、効果のない部位は避け、その気があると思わせる顔・腕・手を選ぶこと。太ももや下半身は初心者の場合は逆効果になってしまうので注意する”
志織は『トクギ』で学んだことを踏まえて隼人の手を優しく握った。
「!」
隼人が優しく手を握り返してきたので、志織の体には手から電流が流れてきた。
「東条、具合が悪いんだろ? 夜風で冷えるもんな」
隼人は自分の着ていたジャージの上着を脱いで志織の肩にかけた。
「赤城クン、ゴメンね。ありがとう」
“私って悪い人間だよね…”
志織が隼人に謝った理由は隼人が自分を気遣って優しくしてくれただけではなかった。
“あの二人このまま放っておけない!”
後から前を見つめることしかできないカトリは内心かなりアセっていた。