おそろい

文字数 451文字

「卒業するの、なんだか嫌になっちゃった」
 沙織は自分の夏用のセーラー服の襟元を愛おしそうになぞると、悲しげな表情になった。
「なんでいきなりそんなこと言うのよ。今まだ秋だよ、卒業までまだ半年あるのに、早くない?」
「うん、でもね。今週で夏服の期間は終わりだから」
「それが、なに?」
「こうやってさ、一つ一つ美夏ちゃんとの『おそろい』が無くなっていくとなると、なんだか寂しいな、って」
 おそろい、か。
 確かにそうかもしれない。だって、皆に秘密で付き合っている私達にとって、皆の前で同じ物を持つのは、秘密をバラしてしまう可能性があった。だから、公然と同じ物を身に付けられるのは、制服ぐらいしかない。
「そっか……そうだよね」
 そう言いながら、ふと悲しい気持ちと不安な気持ちがこみ上げてくる。外では、まだ夏の名残のような殺人的な太陽の光が建物を照らしているのに、心は妙に寒々しかった。
 沙織の手をぎゅっと握る。
 これからの未来の不安に押しつぶされないように。
 彼女もそれに応えてくれるかのように、私の手を強く握った。
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