14:00 知らない鳥

文字数 548文字

 外を一緒に歩くと『姉妹みたいだね』と言われる。
 ほぼ毎日一緒にいるせいか、顔も行動も似たようだった。

 でも、どれだけ体を重ねても一緒にはなれない。
 私達は、二つの体に分かれた別々の『何か』でしかない。
 その事実が、歯がゆい。

 遠くで知らない鳥が囁くように鳴く、午後2時。
 私は、彼女を求めた。
 5月だというのに、外は夏のように暑く、部屋の中に入ってくる風も温い。
 そんな中で、求めた。
 けれども、彼女はそれを拒否した。

「ごめんね……今日は旦那と」
「そっか、痕が残るとまずいもんね」

 妙な間が流れた後、彼女の左手をとり、人差し指を噛んだ。

「んっ……あっ……」

 彼女の甘い吐息が漏れ出るのと同時に、口の中に鉄の味が広がった。
 いつもなら、私を満たしてくれるこの指に、呪いをかけた。
 これは、私の物であるという……ワガママで傲慢な呪い。

「今日は帰るね……」
「うん……ごめん……ね?」
「いいよ、大丈夫。それに、傷をつけたのは私だから『ごめんね』は、私の方」
「本当は、そんなこと思ってないくせに」

 不敵に笑う彼女の言葉に、微笑み返して玄関を出る。

 私も、今日は夫に抱いてもらおうか……?
 そんな考えが、頭をよぎった。
 目を閉じて、想像して、抱いてもらう。
 彼女に抱いてもらってるのだと、意図的に錯覚して。

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