膝にキスして

文字数 569文字

 知名がバレー部での練習後、片付けを終えて更衣室に戻ると、眞美が体操着のままで、お茶を飲んでゆっくりとしていた。
「お疲れ、知名」
「眞美、待っててくれたの?」
 その返事の変わりに、眞美は知名の唇に自分の唇を重ねた。
 運動後の火照りが冷め始めていた体に、また新しい火が入った。
 眞美が舌を絡ませ始めた瞬間に、知名はスッ……と唇を離した。
「ここはまだ学校です」
 頬を真っ赤にして、呼吸を荒くしながら、知名がそう言って眞美を制した。
「じゃ、唇のキスはやめにしよっか」
「いや、別に嫌ってわけじゃなくて……」
 眞美が笑顔でキスを止めると言ったせいで、知名は不安になった。
 ただ場所を選んでほしいだけで、見つからない場所ならどこにでもキスしてもいいのに。
 眞美は立っている彼女の前に正座をすると、膝にキスをした。
「ひゃぁっ……うっ」
 今まで感じたことのない刺激が、自分の膝から這い上がって来る。くすぐったさの中にほんの少しだけ混ざっている気持ち良さが、脳内で甘く響いた。
 笑う膝を押さえながら、知名は眞美の頭にチョップを降り下ろす。
「ばっ、バカッ!変な声出たでしょ!」
 そう抗議すると、眞美は顔に悪い笑みを浮かべた。
「変じゃない……かわいいよ」
 ますます固まっていく知名を眞美は下から見上げながら、自分のパートナーのコロコロした感情変化を楽しんでいた。

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