綺麗な名前
文字数 538文字
「おはよ……う」
入学式が終わって一週間。
初めて着るセーラー服がぶかぶかで、まだ『着られている』としか思えない、慣れのない日々。
クラスメイトの紗枝に挨拶をすると、そのまま私は固まった。
彼女とはこの一週間でかなり仲良くなった。
私の前に座っているからなのか、日に何度も話しかけられて、仲良くなった。
長い黒髪、窓から降り注ぐ光がそれを照らすだけで私の目の前にため息が出るほどの綺麗な絹糸ができる。
文庫でも読んで静かな場所を好みそうな大人しそうな小顔の彼女、けれどもそんなことはなく、明るく、冗談も通じる。
そんな彼女をそろそろ名前で呼びたいと思っているのに、いまだにそれができないでいた。
「紗枝」
たったの二文字を呼ぶだけでいいのに、それがひどく難しいと思えてしまう。
拒否をされたらどうしよう、馴れ馴れしいと思われたらどうしよう。
不安と自分の望みに揺れていた。
だけど、私は思い切って彼女の名前を呼んだ。
「さ……紗枝」
私の挨拶を聞いて、彼女は微笑んだ。
「おはよう、美紀」
彼女も私の名前を呼んでくれた。
もうそれだけで、今日はいい日だった。
紗枝が私の頭を撫でる。
「美紀」
もう一度、優しく呼んでくれる。
自分の名前がこんなに綺麗だったのだと、その時初めて思った。
入学式が終わって一週間。
初めて着るセーラー服がぶかぶかで、まだ『着られている』としか思えない、慣れのない日々。
クラスメイトの紗枝に挨拶をすると、そのまま私は固まった。
彼女とはこの一週間でかなり仲良くなった。
私の前に座っているからなのか、日に何度も話しかけられて、仲良くなった。
長い黒髪、窓から降り注ぐ光がそれを照らすだけで私の目の前にため息が出るほどの綺麗な絹糸ができる。
文庫でも読んで静かな場所を好みそうな大人しそうな小顔の彼女、けれどもそんなことはなく、明るく、冗談も通じる。
そんな彼女をそろそろ名前で呼びたいと思っているのに、いまだにそれができないでいた。
「紗枝」
たったの二文字を呼ぶだけでいいのに、それがひどく難しいと思えてしまう。
拒否をされたらどうしよう、馴れ馴れしいと思われたらどうしよう。
不安と自分の望みに揺れていた。
だけど、私は思い切って彼女の名前を呼んだ。
「さ……紗枝」
私の挨拶を聞いて、彼女は微笑んだ。
「おはよう、美紀」
彼女も私の名前を呼んでくれた。
もうそれだけで、今日はいい日だった。
紗枝が私の頭を撫でる。
「美紀」
もう一度、優しく呼んでくれる。
自分の名前がこんなに綺麗だったのだと、その時初めて思った。