香雪蘭 ~あの人へ~
文字数 882文字
図書委員の仕事をする為に、図書室へと行き、貸出カウンターへと入った。
外から聞こえる運動部の声が、ガラスを隔てているせいか違う世界のBGMに聞こえる。
秋と冬が重なり合い、2つの季節を行き来するこの時期になると、放課後のこの時間には陽の光はオレンジ色になってしまう。
図書室に来る人なんて、ほとんどいない。
私みたいな本好きで、なおかつ帰宅部でないとほとんど来ることはない。
だから、図書委員の仕事はこの貸出カウンターに座って自分の好きなことをするだけ。
いつもなら私はここで宿題を済ませるか、自分の読みたい本を開いて読んでいる。
でも、今日は違った。
鞄の奥にしまった1通の手紙を取り出す。
今日の朝、私の下駄箱に入っていた手紙。
女子校でこんなものを貰えるなんて思ってなかったし、下駄箱に入れるなんて古風だな、と思って少し笑った。
封筒を開けると、微かに桜の匂いがした。
季節にそぐわない匂いなのに、何故かじんわりと心に沁みてくる。
先輩は私のことは知らないと思います、これからもきっと知らないと思います。
それでいいと思います。
私のこの気持ちを伝えたいけど、きっとそれは先輩に迷惑をかけてしまう。
だから、この気持ちを伝えて、私の恋は終わります。
先輩、好きです。
先輩と図書室でお会いするのが好きです。
先輩と廊下ですれ違うだけで、胸がドキドキして呼吸を忘れてしまいます。
本当に、大好きです。
ありがとうございます、先輩を好きになって本当に良かったです。
名前は最後まで書かれていなかった。
その代わりに微かに付けられた桜の匂いが、彼女の葛藤を表していた。
私は手紙をまた封筒に入れて、鞄の奥底に沈めた。
彼女の好意に、胸が締め付けられる。
こんな風に思ってくれているのに、私たちは会うこともできない。
それでも彼女は、好意を伝えてくれた。
それがうれしくもあり、悲しくもある。
その思いが、私の目からあふれ出る涙となって床へと落ちていく。
私は涙を拭くこともせず、出るに任せておいた。
外から聞こえる声は、先程よりも遠い世界へと行ってしまっていた。
外から聞こえる運動部の声が、ガラスを隔てているせいか違う世界のBGMに聞こえる。
秋と冬が重なり合い、2つの季節を行き来するこの時期になると、放課後のこの時間には陽の光はオレンジ色になってしまう。
図書室に来る人なんて、ほとんどいない。
私みたいな本好きで、なおかつ帰宅部でないとほとんど来ることはない。
だから、図書委員の仕事はこの貸出カウンターに座って自分の好きなことをするだけ。
いつもなら私はここで宿題を済ませるか、自分の読みたい本を開いて読んでいる。
でも、今日は違った。
鞄の奥にしまった1通の手紙を取り出す。
今日の朝、私の下駄箱に入っていた手紙。
女子校でこんなものを貰えるなんて思ってなかったし、下駄箱に入れるなんて古風だな、と思って少し笑った。
封筒を開けると、微かに桜の匂いがした。
季節にそぐわない匂いなのに、何故かじんわりと心に沁みてくる。
先輩は私のことは知らないと思います、これからもきっと知らないと思います。
それでいいと思います。
私のこの気持ちを伝えたいけど、きっとそれは先輩に迷惑をかけてしまう。
だから、この気持ちを伝えて、私の恋は終わります。
先輩、好きです。
先輩と図書室でお会いするのが好きです。
先輩と廊下ですれ違うだけで、胸がドキドキして呼吸を忘れてしまいます。
本当に、大好きです。
ありがとうございます、先輩を好きになって本当に良かったです。
名前は最後まで書かれていなかった。
その代わりに微かに付けられた桜の匂いが、彼女の葛藤を表していた。
私は手紙をまた封筒に入れて、鞄の奥底に沈めた。
彼女の好意に、胸が締め付けられる。
こんな風に思ってくれているのに、私たちは会うこともできない。
それでも彼女は、好意を伝えてくれた。
それがうれしくもあり、悲しくもある。
その思いが、私の目からあふれ出る涙となって床へと落ちていく。
私は涙を拭くこともせず、出るに任せておいた。
外から聞こえる声は、先程よりも遠い世界へと行ってしまっていた。