うーごーくーな!の理由

文字数 540文字

「うーごーくーな!」
早織が私に叫ぶたびに、ポーズをし直す。
「そう言われて、智菜っちこのポーズはしんどいですよ」
「口も動かすな!」
「無理だって!」
「なんなら息もダメ!」
「死んじゃう!」
コントのようなやり取りをしつつ早織の言われるままにポーズをとらされる。
「ねえ……なんで私ばっかりモデルなの?」
「別にいいでしょ」
「他の人に頼んでもよくない?」
「よくないから頼んでるんですけどね」
「なんで皆、嫌がるんだろうね」
「嫌がってないよ」
「は?」
「早織以外にモデル頼んだことないし」
「え、そうなの!?」
「動くな!」
「いや……ビックリした」
「言ってなかったからね」
「言ってほしいよ。っていうか、他の人誘ってみなよ。もっといい絵が描けるかもしれないじゃん」
「あー……なるほどね」
「ね、だから」
「でも私は早織を描きたいんだよね」
「え?」
「モデルを描きたいんじゃないの。好きな早織に色々ポーズとらせて、それを思いきりかわいく描きたいんだ」
智菜はニコリと笑い、私は顔が真っ赤になっていく。
思わず手で顔をかくしたら、彼女は優しい口調でこう言った。
「うーごーくーな」
そっと近寄ってきて、真っ赤な私にキスをしてまた絵を描き始める。
ポーズは崩さなかった。
だけど、こんな真っ赤な顔でいいのかな……って、思っていた。

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