眼鏡の君へ

文字数 614文字

 メガネ美少女、なんて言葉は私の隣で泣いている恭子のためにあると思っていた。
 小さな体に、ぶかぶかの制服、そして、メガネ。しかも今の季節はマフラーまでしてくれている。
 考える限り最高の組み合わせを揃えている私の友達は、今は泣いている。
「どうしよう、さーちゃん……」
 登校中に恭子が転倒して、自分のメガネを壊してしまったのだ。
 ツルの折れたメガネはかけることも出来ず、取敢えずメガネ無しで登校することになった。
 ベソをかきながら腕にすがり付いてくる恭子の頭を撫でながら『大丈夫、大丈夫』と声をかける。
「……授業とかどうしよぉ」
「私がノートとってあげるよ」
「ごめんね……」
「いいからいいから、良かったら食事の世話に、トイレまでお付き合いしましょうか?」
「……それはやめてよぉ」
 か細い声でそれを拒否する恭子の頭をポンポンと叩く。
 空を見上げて、冬の風を頬に当てる。
『メガネ取った恭子って、こんなにかわいいんだ……』
 声にしてはいけない言葉を心の中で叫んで空に放って、また、前を向いた。
「もう……こんなの嫌だからコンタクトにしようかな……」
「ダメだよ、恭子はメガネが似合うからメガネにしときなって」
「そうかな……ちーちゃんがそう言うなら、その方がいいかもね」
 無言で頷いて、その言葉に同意を示した。
 そうだよ、その方がいいよ。
 だってさ、メガネ無しの顔、私以外に知ってほしくないじゃない?
 そんな言葉が浮かんで、私はまた空を見上げた。
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