滲む。

文字数 343文字

 心の中の何かが滲む時に、痛みが走る。
 それは多分、恋心と呼ばれる部分だろうと思う。
 自分の好きな人―――同性だけれど。
 その娘が特定の男の子だけに見せる顔を見るたびに、滲んでいく。

「この恋が叶うわけないわ……だって私は彼女と同じ女の子なのよ」

 心の中の自分がそうやって呼びかけてくる。
 そうなんだ。
 そうなんだ。
 何度も心の中でそう言って自分をごまかしていくけれど、滲んだ心は明らかな痕跡を私の心につける。

 1人自分の家の部屋で、目の前の世界を滲ませながら、友達であるあの娘の幸福を願う。
 滲むたび、私の心に染みを広げる感情を無視しながら。
 願わくば……なんて負の感情を繋げそうになるこの先の言葉を洗い流してほしい、この涙で。
 染みを黒くする感情を抑えるために、私は声をあげて泣いた。
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