どうか神様。

文字数 406文字

戸惑うのも、悲しいのも、全部忘れたい。
というか、喜怒哀楽を全部なくしたい。
私が木乃香のことが大好きで、あの子が私を見てくれないから、忘れたい。
だってそうすれば、あの子は私のやることなすことを気にしなくて済む。
それでいいじゃない。
そうでもしないと、気が持たない。
これが「惚れた弱み」だとは思う。
だけど、叶わない恋を知る身としては、弱みもクソもない。
ただの呪いだ。

「香住、好きよ」

あの子はさっきもそう言って私に抱き着いてきた。
それが本気かどうかなんて、考えられない。
だって、本気だって思いたくなるから。
もっと苦しくなる。
もっと愛しくなる。
だから、私の感情を無くしてほしい。
そんなことを毎日思う。
でも、毎日あの子の顔を見ると笑ってしまう。
あの子がかわいいから、どうしようもない。
いっそ好きと言えればいい。
だけど、私は臆病だから、このままハリボテの「普通」を歩く。
だからこの願いを叶えてほしい。
お願いだから、どうか神様。

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