寒さの行方

文字数 408文字

 雪が降り積もる中で、チエミと私は学校から駅に向かって歩いていた。
 寒さのせいか、口数は少ない。
 息を吸うだけで体の芯から冷えそうになるから、私たちはおしゃべりよりも沈黙を選んだのだ。

 駅に着いて、待合室でやっと温まることができた。
 ポケットにあるカイロを両手で握って暖をとる。

「お中に入れた方がいいらしいよ」

 チエミの言葉に頭を横に振る。

「もうとっくに入れてる」
「入れてても寒いよね、これじゃあ」
「チエミはどうしてるの?」
「私?着こんでるし、お腹と背中にカイロ入れてる」
「ふーん」

 私が彼女を抱きしめると、ひゃっと声を上げた。

「うーん、ぬくいぬくい」
「やーめーなーさーい!」
「チエミカイロ最高」
「……ったく」

 私の愚行をそれ以上止めず、彼女は私に抱かれ続けていた。
 外の雪は一層激しくなる。

「「もう出たくないなあ」」

 2人してそう言ったのがおかしくて、私たちはくすくすと笑い続けた。
 寒さはもう、ここにはなかった。

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