いつの日か、通り雨

文字数 512文字

秋に降る雨の冷たさは、葵の手の温かさに気付かせてくれた。
下校中、急に降り出した冷たい秋雨は、私達のセーラー服をあっという間に濡らした。
「佳奈、このままだと風邪ひくよ?止むまでウチに来なよ」
葵の家から自分の家まで、あと15分は歩かないといけない私を気遣って、彼女は私を家に入れてくれた。

「佳奈、服脱いでお風呂はいってきなよ」
「いや、着替えないし」
「貸すよ、必要ならパンツも」
「パンツ以外貸してください」
「佳奈なら、フリフリのついたパンツが似合うと思います」
「帰ります」
「ごめんなさい、調子乗りました」
お言葉に甘えて葵の家のお風呂を借り、出たことを伝えると、次に葵が入った。

葵の部屋で、濡れてしまった自分の鞄の中身を確認する。
どうやら、中への被害はないようだ。
私は、底の方にしまってある折り畳み傘に触れた。
「君の出番は……当分ないかな」
ワザと出さなかったその傘を、また底の方にしまう。
葵が出してくれた温かい緑茶を飲みながら、次の通り雨はいつかな、と考える。
緑茶のおかげで、お腹がほっこりと温かくなる。
貸してくれた服に付いた、微かな彼女の匂いが愛しい。
そっと目を閉じ、眠りにつく。
このままずっと寝ていたい。
そんなことを考えながら。

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