りんごとパジャマ
文字数 723文字
「はい、あ~ん」
大きな口を開けて、さっき作ったリンゴのすり身を食べようとする亜子の顔を見ながら、私は胸がキュンキュンするのを止められなかった。
風邪の時の女の子は、三倍可愛い(当社比)というのを、少し前に漫画で読んだ気がする。
確かにその通りだった。
亜子の大きな瞳には潤みが加わり、ほとんど涙目に見える。そして、ぽんやりと赤くなった頬に、少し荒い息。極めつけは、パジャマ。
ジャージではなくて、パジャマである所が私の心をつかんで離さなかった。
機能美ではなくて、あくまでかわいさを求めるためのパジャマ……それはもう羽衣に等しかった。
「ねえ、真衣ちゃん。今、私の顔見てニヤニヤしてたでしょ。っていうか、今もしてる」
「してないしてない!亜子が早く治るようにって思ってニヤニヤしてるだけ!」
「してるんじゃん……」
「うん……ごめん……超してる……だって……かわいいもん……」
「バカ、真衣ちゃんのバカ。こっちは熱で頭ぼんやりしてるのに」
「ごめんね……だけど、堪能させてもらうね」
「ちょっとは反省してよ!」
「無理です。私のキュンキュンが止めることはできません。止めたかったら、早く治せば?お嬢さん」
「ぬぅ……もうっ!」
すりおろしのリンゴをもう一口食べると、亜子が少しふら付いた。
その華奢な体を支えようと近付くと、彼女が隙をついて唇を重ねてきた。
「……私ばっかりこーゆー姿見られるの嫌、真衣ちゃんのも……見たい」
悪い事をしたけれど、その原因はそっちにもあるんだよ、なんてことを言いたげな目でこっちを見る亜子を見ながら、はいはい、と言って私達はもう一度唇を合わせた。
ほのかに香るリンゴの匂いを嗅ぎながら、私はちゃんと感染しますように、と誰かに願った。
大きな口を開けて、さっき作ったリンゴのすり身を食べようとする亜子の顔を見ながら、私は胸がキュンキュンするのを止められなかった。
風邪の時の女の子は、三倍可愛い(当社比)というのを、少し前に漫画で読んだ気がする。
確かにその通りだった。
亜子の大きな瞳には潤みが加わり、ほとんど涙目に見える。そして、ぽんやりと赤くなった頬に、少し荒い息。極めつけは、パジャマ。
ジャージではなくて、パジャマである所が私の心をつかんで離さなかった。
機能美ではなくて、あくまでかわいさを求めるためのパジャマ……それはもう羽衣に等しかった。
「ねえ、真衣ちゃん。今、私の顔見てニヤニヤしてたでしょ。っていうか、今もしてる」
「してないしてない!亜子が早く治るようにって思ってニヤニヤしてるだけ!」
「してるんじゃん……」
「うん……ごめん……超してる……だって……かわいいもん……」
「バカ、真衣ちゃんのバカ。こっちは熱で頭ぼんやりしてるのに」
「ごめんね……だけど、堪能させてもらうね」
「ちょっとは反省してよ!」
「無理です。私のキュンキュンが止めることはできません。止めたかったら、早く治せば?お嬢さん」
「ぬぅ……もうっ!」
すりおろしのリンゴをもう一口食べると、亜子が少しふら付いた。
その華奢な体を支えようと近付くと、彼女が隙をついて唇を重ねてきた。
「……私ばっかりこーゆー姿見られるの嫌、真衣ちゃんのも……見たい」
悪い事をしたけれど、その原因はそっちにもあるんだよ、なんてことを言いたげな目でこっちを見る亜子を見ながら、はいはい、と言って私達はもう一度唇を合わせた。
ほのかに香るリンゴの匂いを嗅ぎながら、私はちゃんと感染しますように、と誰かに願った。