さよならは幸せ

文字数 404文字

「ねえ、私の最期に言うことってある?」
 彼女はいつも唐突に死に関する質問をする。
「魅入られているからだ」と、昔言っていた。
 私にはそれはわからない。
 なんとなく明日はあると思うし、それでいいと思う。
 でも彼女は、高校生のうちからそんなことばかりを考えている。
 だから、だろうか。
 なんとなく私は彼女に惹かれる。
 これは多分、友達に対して持つ感情ではないし、恋愛感情とも少し違って……少し合っている。

 だから私は、彼女の喜びそうな言葉を選ぶ。

「さよなら、かな」
「それはなんで?」
「だって、さよならって言わずに別れる方が多いと思うから。最期に『さよなら』って言えるのはとても幸せだと思うんだ」
「なるほど……いいね」

 彼女は微笑む。
 そして、私の手を握ってくれる。
 甘い感情が、スッと胸に入り込んでくる気がした。

「じゃあ、その時はよろしくね」

 彼女の願いを聞きながら、私はその日を想像して少しだけ胸が切なくなった。

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