2/15の残滓

文字数 486文字

 2月15日。
 男子も女子もソワソワしていたバレンタインデーが終わったその日、私と絵美は近くのスーパーにいた。

『セール品』

 そう書かれているポップの下には、昨日まで『バレンタインチョコ』として並んでいた商品がざっくばらんに置かれていた。

「……バレンタインが終われば彼女たちは用済み。今年も供養のために買いましょう」
「買いましょう」

 毎年恒例となっている、バレンタインチョコの供養。
 普段買えない『お高い』チョコが半額以下のお値段で買えるのだ。
 丁寧にラッピングされているのがバレンタインの残滓だと思うと悲しくなるけれど、味に変わりはないので遠慮なく買う。

「今年も買ったね」
「そうね」
「……あ、被ってる」
「え、また?毎年夏美って同じやつ2個買うよね」
「……恒例ということで。はい、あげる」
「こうやって貰うのも毎年のことね……」

 そう、私は毎年1個だけ彼女にチョコを送る。
 こうやって、同じチョコを2つ間違えて買ったと嘘をついて。

 毎年彼女にチョコをあげたのだという、少し悲しい嘘を積み上げる。
 多分、来年も再来年も。
 繋がれているこの手が離れるまでは、ずっと積み上げていく。

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