……違うよ
文字数 597文字
「そういえば、私の彼氏がね―――」
事あるごとに自分の彼氏の話をしてくる伊代菜の顔を見ながら、腹からふつふつと沸いてくる怒りが押さえられなくなる。
「ごめん、トイレ」
言葉を遮る様にそう言って教室を出て、トイレへと入り、鏡を見つめる。
目の端がつり上がり、酷く怒っている様に見えた。
我ながら酷い顔だ。
蛇口から水を出して、両手で掬い、顔にかける。冷水が内包している怒りすらも冷ましていくように思えた。目を閉じてハンカチで顔を拭いた後、後ろから声を掛けられた。
そこには、伊代菜の隣りにいた美月がいた。
「どうしたの、急にトイレに来てさ」
「別に、今から帰るよ」
「伊代菜の彼氏自慢がウザい?」
そう言ってきた彼女の瞳には『お前も仲間だろ?伊代菜がウザいと思っているんだろう?』と下世話なぐらい堂々と書いてあるのが見えた。
「……違うよ」
本当かな、という彼女の顔を見えて、私は目を逸らした。
「ふーん……まあ、いいけどね」
少し不満気になりながらトイレから出ていく彼女を見送りながら、私は自分の抱く恋心を呪った。
なんで、私はあの娘を好きになったのだろう。
あの娘が彼の話をする度に、やめてほしいと思ってしまう。
幸せそうな顔で、彼を語らないで。
伊代菜、アンタの隣で無理矢理話を合わせて笑ってる、美月に、もうこれ以上話をしないで。
美月が、どんどん嫌な奴になっていくのが、私には耐えられないから―――。
事あるごとに自分の彼氏の話をしてくる伊代菜の顔を見ながら、腹からふつふつと沸いてくる怒りが押さえられなくなる。
「ごめん、トイレ」
言葉を遮る様にそう言って教室を出て、トイレへと入り、鏡を見つめる。
目の端がつり上がり、酷く怒っている様に見えた。
我ながら酷い顔だ。
蛇口から水を出して、両手で掬い、顔にかける。冷水が内包している怒りすらも冷ましていくように思えた。目を閉じてハンカチで顔を拭いた後、後ろから声を掛けられた。
そこには、伊代菜の隣りにいた美月がいた。
「どうしたの、急にトイレに来てさ」
「別に、今から帰るよ」
「伊代菜の彼氏自慢がウザい?」
そう言ってきた彼女の瞳には『お前も仲間だろ?伊代菜がウザいと思っているんだろう?』と下世話なぐらい堂々と書いてあるのが見えた。
「……違うよ」
本当かな、という彼女の顔を見えて、私は目を逸らした。
「ふーん……まあ、いいけどね」
少し不満気になりながらトイレから出ていく彼女を見送りながら、私は自分の抱く恋心を呪った。
なんで、私はあの娘を好きになったのだろう。
あの娘が彼の話をする度に、やめてほしいと思ってしまう。
幸せそうな顔で、彼を語らないで。
伊代菜、アンタの隣で無理矢理話を合わせて笑ってる、美月に、もうこれ以上話をしないで。
美月が、どんどん嫌な奴になっていくのが、私には耐えられないから―――。