永遠の答

文字数 753文字

「なんで……?」
 私がそう呟くと、目の前に置いた花束から、1枚の花弁が空へと放たれた。
 花束の周囲には、お菓子やジュース、そして同級生からの寄せ書きが置いてあった。

 ここで、同級生の瀬野薫と逸見利華は死んだ。

 私の大好きだった2人。
 お互いがお互いを慈しみあいながら、特別になった2人。
 傍でそれを見ていた私は、至って普通に彼女たちが愛し合っていることを許容した。
 その寛容さが2人には心地よかったのか、3人でよく一緒にいた。
 女の子が女の子を愛すことを何もおかしいことだとは、思わなかった。
 そして、そのうちに私も恋をした。
 自分が誰かを好きになるとは思っていたけれど、こんなにすぐに恋をするとは思わなかったし、同時に2人の人を好きになるとも思わなかった。

 けれど、好きになったその2人は逝ってしまった。
 繋いだ手をセーラー服のスカーフでぐるぐる巻きにして、薫の住んでいたマンションの上から飛び降りた。

 死ぬ前日まで笑ってた2人の顔を、今でもはっきりと思い出せる。
 2人で笑いあった後で、私の方を向いてまた笑う。
「由紀もいい人見つけなよ」
 薫はいつもそう言って、のろけていた。
 その言葉を呆れるようにため息をついて聞いている利華、だけど顔は笑ってた。
 笑う2人がたまらなく愛おしくて、私も笑った。

 そんな日常があったのに。

 なんで私を連れて行ってくれなかったのだろう。


 なんで、なんで、なんで。


 この胸に秘めた2人への感情が、今は『永遠』になってしまった。
 もう書き換えることのできない『永遠』に。

 風で揺れる花を見ながら、
「2人はひょっとして、私の感情を知っていて3人が永遠になる方法を選んだのかもしれない」
なんて、考えた。
 風がやんだと同時に、その答えにたどり着いた私の目から、大粒の涙が零れ落ちた。

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