恋と呼び出し 3

文字数 1,154文字

「よくわからないけど、返事できなかったから謝ってんの?」
「うん……」
 それだけじゃないけど。
 頷くと、常葉君がもう一度ため息をついた。そして何か手元でスマホを操作する。
 私の方のスマホが震えて、思わず見ると常葉君から画像が送られてきていた。
 どこだかわからないけど綺麗な夕焼けの写真。
 それだけ。
 何て返せばいいのかわからなくて常葉君を見たら、「やっとこっち見た」とうっすら笑った。
「元から返事し合うなんて約束してなかっただろ。お前だって返事すると限らないって自分で言ってたし。既読スルーっていうけど、既読ついたらあー確認したかーってわかるんだし、それに返事が何もなくても別に困らないっての」
「でも、今日だって」
「そりゃ仮にここに来てなかったら、来れないなら来れないって返事しろよって話にはなるけど、来てるんだし問題ないだろ。それに弥生から凝った返事なんて期待してないって」
 最初っからあんなんだったのに、と常葉君は笑って言う。
「で、何? 純粋な心配できなかったって? 下心満載の心配でもしたの?」
「満載じゃあないよっ! それはちょっとはあるけど、その、心配より、優越感的なものが結構あって……」
「何の?」
「……だって、他の子は、常葉君に連絡できないらしいから……私だけなんだって、思ったら」
「あぁ。なるほど」
 カタン、と音を鳴らしながら部屋の中にある机に常葉君が寄りかかる。
「それは仕方ないだろ。だって実際そうなんだし。この学校で僕の連絡先知ってるのは弥生だけだよ。嬉しい?」
「…………う、嬉しいです」
「別に心配しなかったわけじゃないんだし、何を凹んでんだか」
 本当、変な奴。
 そう言いながら笑ってる常葉君に、私は気になっていることを聞いてみる。
「あの、この写真はどういう意味?」
 さっき送られてきた写真。夕焼け以外写ってないそれを見せつつ問うと、常葉君は笑うのをやめて自分のスマホを指でトントンと叩いた。
「昨日撮ったやつ。そういうのに返事寄越せって言われても困るだろ? あー綺麗だなー程度しか言えないだろ」
「うん」
「いちいち返事なんて悩まなくていい。必要なら一言返せばいいし、そういうやつはただ見れば良いだけなんだよ。見せたくて送っただけなんだから。お前は深く考えすぎ。それに、もし多少失敗したって、別に嫌いになったりしないよ」

 その言葉にハッとした。


 あぁそうか。私は、常葉君が好きだから、嫌われたくなくて、色々考えすぎたんだ。
 好きな人に嫌われたくないなんてすごく当たり前のことなのに、その感覚があまりに慣れなくて、それですごく戸惑ってたんだ。

 だって、今までの好きは、いつも好きになってすぐに告白と共に終わっていたから。
 こんな風に、好きになってからの時間って、今まであまり体験してこなかったんだ。
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