恋、始まってます 3

文字数 710文字

 その後は結局髪を直す隙が見つからないまま時間が過ぎて。
 あっという間に放課後。
 休み時間毎に先生に頼み事されたり誰かに話しかけられたりで、どうしようもなかったの。仕方ないでしょ! だって編み込みなんだよ、ゴム解くだけで簡単に直るもんじゃないでしょ。
 変なところ本当父さんは器用で困る。
 でも父さんのそういうとこは全部、母さんの出来ないことを助ける為に身につけたんだと知ってるから怒れない。しかも最初に父さんに編み込みを覚えさせたのは小学生の頃の私の要求なんだもの……。学年で編み込みが流行ってて、それでわがまま言って出来るようになってもらったの覚えてるし。
 適当でいいって言ったのに、久々だったから腕をふるっちゃったみたい。
 悪気はないんだよね、知ってるけど。
 結局放課後も委員会の仕事で残ってた私は、教室に戻って扉を開けた瞬間に、元来た廊下に戻ろうとした。
 でもそれはあっさり阻止される。
「そこまで露骨に避けることないんじゃないか?」
「さ、避けてないし。忘れ物? あったかなー、って」
 なぜか一人で教室にいた常葉君が、あっという間に後ろにいる。自分の席じゃない廊下側の机に座ってたのって、まさかこのため?って思うくらいに早い動きだった。
 声をかけられたらさすがにそのまま逃げるわけにもいかない。
 振り返って、そーっと見上げると……ちょっと不機嫌そうな顔が見えた。
 なんで? 怒ってるの?
「き、気のせいだったか、も?」
「ふぅん?」
「えっと、常葉君は……何かご用ですか……?」
「用がないと声かけちゃダメなのか?」
「そ、そんなことはないけど」
 これじゃ怖くてドキドキしてるのか、二人きりでドキドキしてるのか、わからないよ!
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